「ねえ、こちらを向いて。ごまかしはなしだ」
「……ごまかしてなんかいません」
「困ったことに神子殿は我慢が上手だからねえ」
「我慢なんてしてないもの!」
「そうむきにならなくていいよ。……でも不思議だろう?
今宵の時雨にも露にもあてぬように、こうして私がしかと夜通し
くるんで寝たはずなのに、どうして衣の袖がぬれているの……」
「……そ、それは、たぶん汗かいちゃったから」
「凍えそうな夜だったのに」
「だって友雅さん離してくれなかったじゃやないですか!」
「だから袖がぬれるのはおかしくない? ふうん。なるほどねぇ」
「友雅さんの意地悪……」
「泣きたいなら私の胸でという約束は守ったとしておこうか」
「優しいくせに、時々すごく意地悪です」
「神子殿の手枕になるためなら、意地悪にもなるというものさ。
いいからずっとこうしておいで」
「もう夜が明けるのに……」
「君を守ると約束したのだから、これは私の役目だよ」
「…………友雅さん……好き……大好きなの」
「それだけで十分だけれど……ならば朝まで……ね」
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