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物思ふと月日のゆくも知らぬまに今年は今日に果てぬとか聞く
藤原敦忠





 庭先にも霜が降り、池に氷のはる季節になった。


 あかねが京にやってきた初めての年が終わる。


 日が落ちる前の時刻に訪ねてきた友雅に、あかねは声をかけた。


「今日で今年もおしまいなんですね。今夜は鬼やらいをするって聞きました」


「ああ、そうだったかな」


「友雅さん! 年末からお正月は友雅さんは内裏のお仕事で、すごーく忙しい

はずだって聞きましたよ?」


「おや、誰に?」


「誰でもいいじゃないですか。とにかく、さぼってちゃ駄目です。私のことなら

心配いりませんから、ちゃんとお役目を果たしてきてくださいね」


「……本当に君は真面目だね」


「だって困るもの……私のところに来るせいで友雅さんが悪く言われたら……」


「そんなことで愛しい人を悩ませるのは私の本意ではないから安心していい。

朝も夜も君のことを思っているうちに、月日が経ってゆくのも忘れていたのだよ。

今年が今日で終わってしまうなんて驚きだね」


「驚いたのは私です。…………本当に?」


「ああ、もちろん。君と過ごす毎日が夢のようで退屈している暇もないよ」


 そう告げて、あざやかに微笑む友雅は、それ以上有無を言わせずあかねを抱き

寄せると、暖かな奥の寝間へ入るのだった。






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