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ふるさとはまだ遠ければ 紅葉ばの色に心のとまりぬるかな
藤原兼房





 あかねが京に残って初めての秋。


 久しぶりに二人連れ立っての外出に、紅に染まる小倉山までやってきた

 友雅とあかねは、山路にあって紅葉の散る様を眺めていた。


「何もしていないのに、葉っぱがこんなに綺麗な色に染まるのって、

神様に祝福されてるのかなぁって思えますね」


「そのように思われるのは、神子殿ならではだね」


 友雅は静かに微笑む。


「本当に綺麗……いつまでも見ていたいくらいです」


「かまわないよ。ゆっくりしていこう。今でなければ見られないものだもの」


「ありがとう友雅さん」


「こんなことで礼を言われるのは何やら面映ゆいね」


「えっ……なぜですか?」


「私がいいと思うものを君に見せたいだけだから。たくさんの心残りを君に

植え付けて月へ帰り難くさせているのだよ」


 そう言って友雅は背中からあかねを抱き込むと、照り葉の映える天を仰ぐ。


「一緒にいます」


 彼の腕の中できっぱりと言った少女の赤い唇に、散り落ちてきた紅葉が触れた。


「では約束だ」


 そっと払われた紅葉の後に熱い唇が重なった。






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