「麻生くん、チャペルの裏なんて呼び出して、どうしたの?」
「悪い……さっさと帰りてぇのに、しつこいのにからまれててさ」
「麻生くんが? 誰から逃げてるの? ファンの女の子?」
「そうじゃねぇって。……一種の勧誘か、あれ」
「勧誘……運動部か、パソコンか……、あ、わかった!
超常現象研究会!」
「それなら無駄に逃げねぇよ。年度が変わる卒業前から引継ぎすれば
万全だとか、ごちゃごちゃうるせぇの、なんのって……」
「うるさいって誰が」
「あの堅物メガネ……樋山と、あと遊洛院……だっけ、お前ともわりと
仲いいじゃん」
「樋山くんと遊洛院さん???」
「……要するに生徒会役員ってヤツ」
「せいとかい……って、えーっ、麻生くん生徒会に入るの?
役員になるの?!」
「なるわけねぇだろ。御堂じゃあるまいし、俺につとまるもんか」
「祥慶学園って、もしかしてラ・プリンスが会長じゃなきゃいけないとか、
決まりがあったりして」
「そんなの聞いたことねぇぞ」
「でも案外、麻生くんは、なっちゃえば生徒会長もハマる気がするな〜」
「何言ってんだよ。まっぴらだぜ」
「だって、なんだかんだ言って、すごく面倒見いいもん。あたしが家政婦
休んでた時、実質フォローしてくれてたのって麻生くんだけだったよ。
あの家の気難しやさん達を相手にやりあうのに比べたら、生徒会なんて
楽なもんでしょ」
「ヤな比較対照だな、それ……」
「ずいぶん変わったよねー。でもあたし、そういうトコ好き」
「…………お前に勧誘されてたらヤバかったぜ……」
「そうなの? だったら協力しちゃおうかな」
「マジに取るなって! 早いとこ帰って、どっか行こうぜ!」
麻生が勧誘から逃げ切れるかは、彼女次第なのだった。
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