この季節は、異性にもてる彼氏を持つむぎの心境は複雑だけど、硬派でならした
羽倉麻生は一味違う。
「麻生くんは誰からもバレンタインチョコを受け取ったりしないんだよね?」
「ああ。って……でもお前のは別だぜ! わかってるよな?」
赤い顔してこんなコトを言われて嬉しくない女の子がいるだろうか。
だけど、そんな彼に、肝心の2月になって彼女を置いて出かける用事ができるとは!
「俺も決勝に残れるなんて思わなかったんだ……でもチャンスだから。ごめんな」
ハスラーを夢見る彼氏は遠いアメリカでのビリヤードの大会に行ってしまった。
真剣勝負の試合旅行中では、チョコを送るなんて、とっても無理だ。
「おまもりは渡したけど……ちゃんと見てくれるかなあ」
応援について行けたらよかったけれど、学校もあるし、海外ではさすがに許されない。
時差を計算しながら、試合前に麻生の勝利を祈るむぎ。
その時、携帯電話の着信音が鳴り響いた。
『勝利の味だったぜ。サンキュ! vvvvv』
彼らしくないメールの最後に並んだVの字代用のハートマーク。
勝ったら開けてねと言って、お守りにそっとしこんだハートのチョコの御利益は、
彼氏の心もつかんだらしい。
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