今日も雇い主であり彼氏でもある一哉の散らかり放題の部屋を掃除している
家政婦むぎ。
「大きなぷちぷち見っけ! うーん、真ん中がつぶれてるから取っておいても
使えないかなー。うーん、この形は……」
「……おい、何をしている? 掃除はどうした」
「わっ、一哉くん……いやちょっと、ぷちぷちつぶしてたの。ほら見て、
ハートマーク!」
「…………………」
「そんな呆然としないでほしいんだけど」
「何を夢中になってるかと思えば、他愛ないことを……」
「えー、こんな大きなぷちぷちは、めったにないんだから。子供の頃さ、
クッキー缶に入ってるのを、後でもらってつぶして遊んだりしたの。
楽しい暇つぶしだよ」
「あいにく俺には経験ないな。そんなものが欲しいなら何平方メートル
だって買ってやるが」
「……いらないよ。必要なくなったもので遊ぶのが面白いんだってば」
「なるほどな。そんな風につぶせる暇があるなら付き合え。俺がもっと
有意義で楽しい大人の遊びを教えてやる」
「へ? ちょっと一哉くん!?」
意外と教えたがりのご主人様につかまったむぎは、朝まで彼の部屋から
出られない羽目になるのである。
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