「夏はカレーだろ。常識的に考えて」
「……………」
「何だよ。異議ありか?」
「秋も冬も春も年中カレー作って食べてるじゃない。麻生くんが、カレーを
大好きなのは、よーくわかったよ。でも、一昨日もタイ・カレー食べたの、
もう忘れちゃった?」
「忘れてねぇよ。あの店、うまかっただろ? あの、豆のカレー、よそじゃ
食えねぇんだよなぁ」
「そりゃ、おいしかったけどさ……」
「だろ? 一度、お前に食わせてやりたかったんだ! で、今日は味わいを
変えて、暑さを吹き飛ばすガーッと辛いインド風チキンカレーか何かをだな」
「麻生くん」
「おう」
「そうめん、ゆでるよ。冷水に氷浮かべて、きゅうりとトマトと缶みかんに
さくらんぼものせよう。つけ汁の薬味は、ごまと、みょうがと、青紫蘇と…
…ボリューム足りないなら天ぷらも揚げちゃおうか。なすや大葉や小海老と
ねぎのかきあげとか、あなごの旬もそろそろだっけ」
「……………」
「何か問題でも?」
「…………うまそうだな」
「でしょ?」
有能家政婦な恋人は彼氏の味覚操作もお手の物。
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