「依織くん、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう。君が祝ってくれるのが何より嬉しいよ」
「あのね、何をプレゼントしようか、すごく悩んだの」
「君が僕のことで悩んでくれるのが嬉しいと言ったら怒るかい?」
「……怒らないけど、ちょっと不思議」
「僕のことで頭がいっぱいになってくれたりしたのかと思うとね」
「だったら悩んでなくたって、いっぱいだよ!」
「尚、嬉しいよ」
「悩んでた時、麻生くんに話したら、麻生くんは、あたしが選んだものなら
依織くんは何でも喜ぶだろうって言ったの」
「間違いじゃないな」
「瀬伊くんは、二人で過ごせば、それでいいんじゃないって。刺激が欲しければ
邪魔してあげる、とも言われたけど」
「……一度、瀬伊とはきちんと話をしないとね」
「それで一哉くんはね、俺が間接的に確実に喜ばれるものを与えてやるから、
有効に使えって……」
むぎは、少しためらってから、依織の耳元でささやいた。
「今日は一日家政婦お休みで、依織くん専属だよ。あたし何でもしちゃうから」
「何でも? そんな嬉しいことを言ってしまっていいのかい、お姫さま」
「依織くんが喜んでくれるならイイの! あたしがしたいんだもん。本気だよ!」
「……なら、まず最初に君のキスが欲しいな。その後は……じっくり考えるから。
覚悟して」
楽しい誕生日の一日が始まった。
|