祥慶学園の王子様、ラ・プリンスには、いくつかの謎がある。
「この学園に入ってフランス語とか始めてから気になってさ。語学が得意
な一哉くんなら答えられると思うんだけど」
「何だよ。言ってみろ」
「“ラ・プリンス”って……何語?」
「英語は」
「ザ・プリンス?」
「フランス語は」
「えっと……ル・プランス?」
「ドイツ語は」
「…………わかんない」
「der Prinz(デア・プランツ)だ」
「ふむふむ。で、ラ・プリンスは?」
「──お前、祥慶に通うようになって結構たつのに、まだわからないのか」
「え〜っ。教えてくれないならいいよ。英二郎先生にでも……」
「馬鹿、教えないとは言ってないだろ」
腕をつかまれ、引き止められたと思ったら、互いの顔が目の前で。
「語学の補習をしてやるよ。“Le Prince”。LとRの発音は分けろよ。
ちゃんと舌使え」
「舌ぁ?」
言われて反射的にちらっと出した舌を奪われる。一瞬触れる互いの唇。
「なななななな何っ!」
「ラ・プリンスは、言わば祥慶語。……授業料よこせよ」
ラ・プリンスのディアデームはそう言って今度は深く口づけた。
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