祥慶学園の王子様、ラ・プリンスには、いくつかの謎がある。
「ねー、麻生くん。ラ・プリンスに選ばれると与えられる栄誉と特権って
具体的にはどんなものなの?」
「そんなもん知ってどうすんだよ?」
「え? だって気になるじゃない。別に学食がタダになるとか、遅刻OK
とか、図書館で本を借り放題とかあるわけじゃなさそうだし。生徒会役員
とも違うし。ラ・プリンスになって何か得したことあった?」
「祥慶祭の発表で強引にステージ上げられて、挨拶させられて……」
「あーそうだったね」
「制服作ったな。デザイナーと打ち合わせしてイメージ決めろとか。面倒
だったけど、絶対作れってうるせーし」
「ふーん、なるほど。で、その特別制服の他には?」
「────別にねぇな」
「………………」
「むしろラ・プリンスだからつって、やたらコメント取られたり、追っか
けられたり、ろくなことがねーぞ。勝手に選ばれて辞退もできねぇし」
「た、大変なんだね……」
「あーっ、もう、やんなってきた! よく考えたら御堂と松川さんが卒業
したら一宮と俺だけかよっ!! うわ、サイテーだな」
「麻生くん、ちょっと落ち着こうよ……」
「これが落ち着いていられるかってんだ! 俺はあいつらと違って見世物
になったり、女につきまとわれたりしたかねーんだよ!」
「でもさっ、あたしは麻生くんがラ・プリンスなの嬉しいな。麻生くんの
カッコイイとこ、みんなが認めてるってことだし! それって麻生くんが
麻生くんだからだと思うんだ。学校でも態度変えたりしないで、素のまま
だもんね。制服だって似合ってて、すっごくイイよ!」
「……ホントか?」
「うん」
「そっか……んじゃ、お前がそう思ってくれたのがラ・プリンスになって
一番得したことだな」
「えっ?!」
「特権は──こっち来いよ」
不意打ちのキスに邪魔が入らなかったのは特権じゃなくて幸運。
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