祥慶学園の王子様、ラ・プリンスには、いくつかの謎がある。
「依織くん、ラ・プリンスって、毎年、秋の祥慶祭で決まるんだよね?」
「そうだね」
「今は四人いるけど、一人の年もあるんだよね?」
「四人もいる年の方が珍しいんじゃないかな」
「じゃあ三年生が一人だけラ・プリンスに選ばれた時って、どうなるの?
卒業したら、次の祥慶祭まで半年もラ・プリンスがいなくなっちゃう!」
「その時は僕のように留年することになるんだよ」
「えーーーーーーーーっ!! うそっ! 依織くんがダブってたのって、
ラ・プリンスに選ばれちゃったせいだったの?!」
驚愕するむぎに、依織が微笑む。
「──君のそういう素直なところがたまらないね。お姫様」
やさしく頬を撫でてから、むぎの手を取る。
「何でもあまり簡単に信じ過ぎてはいけないよ。でないと心配のあまり
僕の気が狂ってしまうかもしれない」
指にキスされて、謎は結局、謎のまま。
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