家政婦むぎには、御堂家で暮らす男達の行動が理解できない。
「なんで仲がいいわけでもないのに、みんなよく他人の部屋にいるんだろ?」
むぎが頼まれた掃除をしようと部屋に入ると、頻繁にその部屋の主でない
男がいたりする。彼らが人の部屋で何をしているのか謎だ。
普通、同居していて、個室の主がいない時、その人の部屋で待っていたり
するだろうか? いつだって会おうと思えば会える相手なのに。
まったく、上流階級のお坊ちゃんというのは、妙な人種だ。
「そんなの、君と一緒の理由だよ」
瀬伊がにっこり笑って答える。
「なに、それ?」
「胸に手を当てて考えてみたら?」
まさか、ヤサガシ? この人たちも? あたしには説教するくせに!
「ふふっ。そんな顔しても、だめだよ」
──君といたいから、なんて教えてあげない。
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