"HALCA"衛星

2003-10-18

MUSES-B衛星

サーチエンジンなんかで "HALCA" をキーワードにして検索すると、まぁそれなりの件数が該当する。 HALCAさんのページやこのサイトも出るには出るが、殆どは宇宙研1の MUSES-B衛星 "はるか" ではないだろうか。

この MUSES-B衛星、日本名を "はるか",英名を "HALCA" と表記する。 Highly Advanced Laboratory for Communications and Astronomy (通信・天文超高等実験室)だそうだ。 さすがにカッチョイイ略語を使いますな。 電波望遠鏡(←少し違うか?)が「はるか」ってのも、感覚的に納得できるし。

打上げの頃は、宇宙関係のニュースなんかも盛んに扱っていたようだ。 1997年2月12日 13時50分、宇宙研の M-V (エム-ファイブ) ロケット1号機によって鹿児島宇宙空間観測所から打上げ。 M-V に搭載された MUSES-B 衛星は長楕円軌道に乗り、"はるか"と命名された。 その後 近地点を上げるための軌道変更を行い、現在は近地点高度 560km,遠地点高度 21,400km を軌道周期約6.3時間で回っているとのこと。

軌道上では、太陽電池パドルの展開,Kuバンドアンテナの展開が順調に行われた。 打ち上げから2週間後、"はるか" の特徴である8mアンテナの展開も無事に終了。 軌道上でここまで形が変わる衛星は初めてとのこと、関係者はずいぶん気をもんだようだ。

宇宙研の天文衛星には ASTRO(アストロ)シリーズが有るが、"はるか" は 工学実験衛星 MUSES(ミューゼス)シリーズに位置づけられた。 これは件の8m大型アンテナなど、様々な科学技術・工学的な課題があったからだそうだ。

ちなみに MUSES-A 衛星は 1990年打上げの "ひてん"(飛天)。
2003-05-09 には、サンプル・リターンを目指す MUSES-C探査機 "はやぶさ" の打ち上げに成功

スペースVLBI

"はるか" は、VSOP計画の衛星として、VLBI観測用アンテナを宇宙空間に置くために開発された。 …と言われても、分からないよなぁ。 天文や電波方面は全くの素人なんで、解説ページを幾つか読んでみてもさっぱり要領を得ないんだな。 そこを無理やり要約すると、こう言う事らしい:

"はるか" が観測する電波ってのは、非常に波長の長い電磁波なのだそうだ。 なので、電波望遠鏡ってのは、概してデカい。 例えば野辺山のパラボラは口径 45m。 プエルトリコのアレシボ望遠鏡なんか、盆地をくりぬいて作った口径 300m と来たもんだ。

けれど、大きな望遠鏡を作るのには限度がある。 そこで、「電波干渉計」と言って、小さなアンテナをいっぱい並べて同時に天体を観測して、後から高解像度の画像を得る手法が用いられるようになった。 先の野辺山でも、45mを中心にちっこいアンテナを並べて合成開口 600m を実現できるそうだ。 これを大掛かりにしたものを VLBI (Very Long Baseline Interferometry:超長基線干渉計) と言い、アメリカ東海岸〜ハワイを使った観測網(口径 8000km)もあるそうだ。

それでも、アンテナを地球上に設置する限り、最大でも地球の直径どまり。 そこでアンテナを宇宙に置こうと言うのが スペースVLBI。 "はるか" は、この「宇宙に置かれたアンテナ」なのだ。 "はるか" は遠地点2万kmの軌道を回っていて、地上の観測局は 34局。 これらのネットワークで、口径3万kmのアンテナを形成するんだそうだ。

いや〜、何とも壮大な話ですなぁ。
で、そのプロジェクトが VSOP (VLBI Space Observatory Programme) という事らしい。 お酒の話じゃないのよ。2

ペルソナ"HALCA"

ついでだからウチの HALCA の名前の由来に触れておこうかな。

ペルソナウェアの謳い文句に、「仮想人格」というものがある。 何のことはない、行動や語り口をスクリプトで自由に定義できるというもので、A.I.3 とは全然関係ない。 けど、この「仮想人格」という言葉を聞いて真っ先に思い出したのが 「2001年宇宙の旅」に登場した HAL90004だった。 当該ペルソナのデビューも 2001年。 とりあえずコレにあやかり、「HAL〜」「はる〜」とする事に。

食わず嫌いを回避する目的で女の子ペルソナの形態となる事は確定していたので、「はる○」という女の子っぽい名前を探す。 ただし美少女ゲームのキャラみたいな雰囲気は漂わせたくない。 えー、発音ありきで美しい字を後から当てたような。 「夢眠」と書いて「ムーミン」と読ませるとか(←どこが女の子だ)。 ハッキリ言えば読みづらいのは却下。 そして、人間というよりは、コンピュータプログラムっぽい名前の方が好ましい。

あいうえお順に一文字づつ当てていくと、はるえ/はるか/はるこ/はるね/はるの/はるみ/はるよ 辺り、それっぽいかな。 とりあえず「はるな」は無条件に除外5ね。 綴りの面から考えると、「○○こ」が「co」,「○○か」が「ca」という具合に、日本語のローマ字表記では使わない「C」を含める事ができ、人間っぽくないという点でなかなか。 「はる」の部分が「hal」とこれまた「L」を含んでいるので、"HALCO" か "HALCA" かの択一に…。

最後は「遙かなる高みをめざす」といった意味合いを込めて "HALCA" を採用。 コンセプトの話は長くなるので省略するが、何か1点だけでも最高を目指したいじゃないか? 0.93系に最も遅れて参入するわけだから、あまたの絢夏クローン6のひとつと見なされ埋もれてしまっては悲しい。 この名前は、作者自身に発破を掛ける意味も含むのだ、実は。 やってみたら、空振り気味だったが…。

決して、「はるな」に「あや」って1文字づついただいた…なんて、安直な決め方じゃないんですよ?

  1. 宇宙研
    日本には宇宙ロケットを扱う機関が2つある。 ひとつは宇宙開発事業団(NASDA:National Space Development Agency of Japan)。 科学技術庁の管轄で気象衛星や通信衛星といった実用衛星を手掛ける。 液体燃料ロケット(H-II)は、重くて大きな衛星の打ち上げが可能。 いまひとつが宇宙科学研究所(ISAS:Institute of Space and Astronautical Science)。 文部省の管轄で科学・工学衛星を手掛ける。 地味だが、日本の宇宙科学を切り開いたのはこちらの組織。 固体燃料ロケット(M-V)を開発・運用している。
    NASDA がシステマチックにロケットを打上げるのに対し、宇宙研は職人芸で上げてしまうという感じ。

    2003-10-01、航空宇宙技術研究所(NAL),宇宙科学研究所(ISAS),宇宙開発事業団(NASDA) が 宇宙航空研究開発機構(JAXA:Japan Aerospace Exploration Agency)に統合、宇宙研は JAXA宇宙科学研究本部となった。 管轄省庁の統合(文部科学省ですな)によるものだと思うけど、ロケットや衛星の種類で住み分けされているし、どっちか一方でOKてな物でもないので、名前が変わっただけ…かも。 むしろ、そうあって欲しい。

  2. お酒の話じゃない
    ISAS の Webでは、こんな裏話が紹介されているので紹介。
    VSOP(VLBI Space Observatory Program)という名前の方は、宇宙科学研究所と国立天文台にそれぞれ西村敏充、森本雅樹というお酒の好きな教授がおり、“Very Superior Old Pale”を連想させるこの名前を「強引に」語呂合わせをしてつけたものです。

  3. A.I.
    Artificial Intelligence(人工知能)。
    人工知能とは (1)人間の知能そのものを持つ機械を作ること,(2)人間が知能を使って行うことを機械にやらせること の両方を含んだ言葉。 現在の工学的な研究は、ほとんど後者を指すと考えられる。 PersonaWare の言う「仮想人格」は前者に近いと思うが、現状では、遥か彼方に置かれた目標…かな。

  4. HAL
    Heuristically programmed Algorithmic computer の略。
    IBM (International Business Machines) の綴り字を1文字づつ後ろへシフトして作られたって話は有名。

    HAL が備えていたのは"知性"であって、人格とは違うものな気もする。 それ以前に"知性"やら"人格"やらの言葉の定義が難しい気がするので、深入りしないが。 あの位になると、実装がコンピュータってだけで人格を持つと言っても構わないかも。

  5. "はるな"は除外
    PersonaWare に詳しくない人向けに補足。 当時の PersonaWare は、正確には「PersonaWare with "春菜"」と言う名称であった。 PersonaWare はプラットフォームであって、その上で動くペルソナが1つ以上必要であった。 それで、最初のペルソナとして "春菜" が同梱されていた。 現在は 春菜 の他にも幾つか、最初のペルソナを選べるようになっていて、with"春菜" の部分は除かれている。

  6. 絢夏クローン
    PersonaWare に詳しくない人向けに補足。 上記のとおり、ユーザ向けのパッケージには"春菜"が同梱されていた。 ペルソナは誰もが自由に開発できるのも売りで、開発用サンプルとして提供されていたのが 絢夏(あやか)。 当然のように、絢夏に少し手を入れただけのペルソナが氾濫した。 絵が違うのでOKと見る向きもあるが、動かしてみるとほとんど同じであって、個人的には全然面白くない。 現在は、開発用サンプルは「タイヤネコ」になっている。

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