[INDEX] 映画の感想 3月分  

 

印・・・秀逸

エネミー・ライン 3/22

 戦争映画である。これはもう、いい者と悪者がくっきりしていて、わかりやすい。上層部対現場、多国籍軍対セルビア人武装勢力。誰が見ても、だいたい、予想通りの結末になると思う。それでも映画の最中に手に汗を握ってしまうのは、舞台がわずか数年前まで連日報道されていた旧ユーゴだからか。テレビでも放送されていたし、大学の政治学の講義でもテーマになった。それでも、民族問題というのは、どうしようもなく本質的に捉え難い問題であって、作品中でも多言はしていない。空爆の模様や、誤爆の実態、捕まった米兵を返せ!返さない!だの、そういう僕たちの記憶を呼び覚ますように、この作品は敵陣に取り残された一人の米兵を追いつづける。逆に、あと10年もすれば、凡庸な戦争アクションになりかねないとも言える。見所は、ミサイルから逃げまわる戦闘機。本当にあんなふうに追われたら悪夢だ。

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モンスターズ・インク 3/22

 子供という言葉の「供」という字は、あからさまな上下関係を含んでいるので、使ってはいけないと主張する暇人がいるそうだが、それはそうと、最近、子供がかわいいと思う。歳なんだろう。

 この映画は、すべてがコンピュータ・グラフィックスで描かれているようだ。絵のよさを活かしつつ電子化を進めた宮崎アニメとも、実存の人間をCGで作り上げようとして失敗したスクウェア(9620)とも一線を画する出来栄えである。この映画に登場するモンスターたちは、すべて架空の存在であるし、出てくる人間は「ブー」という女の子に限定されている。サリーの毛並みの描写はすごい。一方で、あの工場の施設は実写の再現を目指したわけではあるまい。CG映画として、非常に巧いバランス感覚だと思う。

 でも、最も感銘を受けたのは、サリーやマイクの情が子供に移ってゆくところかな。大柄で強面のサリーが、最初はブーに恐れおののいていたのに、だんだん心を許してしまうところなんか、かわいい。いや、彼らには、もともと他人思いのいいところがあるのである。大勢の子供が観る映画として、そういう大事なことを、理屈っぽくなく、作品の面白みとして平易に説いている点がすばらしい。大人だって、油断していると、思わず涙を誘われること請け合い。このほかにストーリーの中では、会社組織の悪態をそれとなく描いていていたりして、子供は涙抜きであっても、この映画で子供なりに楽しんでいるに違いない。子供にも大人にも勧められる作品。秀逸。

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