[INDEX] 映画の感想 2月分  

クールボーダー

落穂拾い

プリティ・プリンセス

ロード・オブ・ザ・リング

オーシャンズ11


印・・・秀逸

クールボーダー 2/21

 スキー場で繰り広げられる、若者たちの大騒ぎ。いや、ただの大騒ぎだけじゃなくて、彼らなりに思慮した結果、大騒ぎになるのであるが、その思慮が大騒ぎに直結してしまうところが、いかにも血気盛んな若者らしい。僕にもこういう時代があったのかなぁと、しみじみ学生時代を思い出すあたりに、加齢を感じて寂しくなった。スノーボードは見ものだと思う。

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落穂拾い 2/21(岩波ホール)

 フランスのドキュメンタリー。規格外のジャガイモ、古くなったテレビ、市場にうち捨てられたパセリ、粗大ゴミに出された家具。そういったゴミを拾って、それで暮らす人々の姿を、ひたすら追い求める。全体を通して、まだ使える・食べられるものを捨てるという、飽食社会に対する警鐘という視点はあるものの、道徳的な押しつげがましさがない。

 拾う人々は、きわめて雄弁である。彼ら全員が捨てられたものを拾って生きる境遇に満ち足りているわけではないが、彼らは、拾うこと自体に、後ろめたさや負い目を感じていない。少なくとも、我々日本人なら感じてしまうであろう羞恥心は、まったく感じていないらしい。落ちているから拾う。それだけである。割り切っているから、カメラの前で淡々と語る口調に説得力がある。全員が、哲学者や芸術家に思えてくる。映画には法律家や農園主も登場して、真顔で落穂拾いの構図を説明する。拾わせるために落とすわけでもなく、かといって、意固地になって拾わせまいとするわけでもない。落ちているから、拾うのだ。そこには、捨てる強者と、拾う弱者と言う立場が、まったく見えない。カトリックのなせるわざか。

 ただ最近は、拾う側の行動がエスカレートしたり、拾わせる側にもいろいろな事情ができたりして、現代版「ミレーの落穂拾い」さながらの光景を手放しで楽観できるわけではないようだ。で、何が言いたかったのか。少なくとも、物を大切に!という啓蒙ではない。監督が、老いた自身をさりげなく登場させているあたりが、キーだと思うのだが。僕も、まだまだ映画を見る目がない。

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プリティ・プリンセス 2/19

 意外と青春映画だったな。冴えない女の子が、実は王家の血筋にあることが判明し、きれいになってゆく話。ただ、女の子は年端も行かない高校生なんで、クラスメイトはいるわ、自分の心はちっとも定まらないわ、若い悩みで、てんやわんや。容姿だけではなく、気持ちまで大人になってゆくところを表現したのは偉いけど、変身前の女の子を、不細工で無節操に描きすぎ。いくらなんでもかわいそう。

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ロード・オブ・ザ・リング 2/-9

 有名な、指輪物語の映画化。指輪物語は、ドラゴンクエストをはじめとするRPGゲームの礎となった、世界的なベストセラー冒険小説。ということで、この映画はドラクエに似ている。正しくは逆なのであるが、剣と魔法の化け物の世界で、巨悪からこの世を救うためにパーティを組んで冒険に出かけるというと、僕はドラクエやファイナル・ファンタジーを想起してしまう。

 この作品も、ハリー・ポッターがそうであったように、ファンタジー小説の映画化なのに写実的だ。両者が絶対的に違う点は、ロード・オブ・ザ・リングの世界観が現代社会と切り離された設定であることと、全体的に真面目なところだ。特に後者は顕著で、笑わせてくれる場面など、ほとんどない。ハリー・ポッターが現実社会と絡め合わせた舞台設定で魔法学校の信憑性を高めたのに対し、ロード・オブ・ザ・リングは、独自の世界をきわめて壮大かつ緻密に描出することによって、観客を「中つ国」に誘い込む。正攻法というか、古典的でさえある。

 物語の大筋は、わかりやすく言えばRPG(と思ってしまう)。しかし、近年のRPGが失ってしまった、仲間とともに冒険する苦楽を、この映画は忠実に映像化してくれている。ドラクエやFFが世に出た頃、僕たちはその拙いテレビ画面を頼りに、こういう情景を想像してゲームをしていたのではないか。この映画は、僕たちの個々の空想に過ぎなかった美しい山河や、個性的な登場人物や、恐ろしいモンスターや洞窟を、期待通りに再現してくれているのである。

 さて、いい加減RPGから離れよう。主人公はホビッツの青年と言うか、少年である。小さいし、頼りない。図らずも世界を支配できる指輪を託されてしまって、迷惑千万といった風情である。彼が仲間を得て旅に出るのだが、宣伝用のポスターの表情の通り、彼は終始、迷惑面と言うか、困惑顔である。こんなんで、本当に世界は救われるのか知らん、という心配が、ますます観る者をその世界にいざなう。その彼が村から出て旅を始め、ようやく自覚を認められるようになるまでが、この第一作である。物語のプロローグとも言えなくもない第一作に、本作は3時間近い時間を割いている。が、彼が心を決めるまでの苦しみや悲しみの描き方は、驚くべきスケールである。そういった映画ではじめて表現し得た視聴覚的価値と、小説で達成されている物語的価値とが、非常に効果的に融和している点はハリー・ポッターを凌いでいると思われ、特筆に価する完成度である。とは言うものの、大ヒットするかどうかは微妙。明らかに、男の子向けの映画で、好き嫌いがあると思う。僕は男の子なので、カッコいいのはプラス評価。仲間のため、世界のために犠牲を払って戦うところに惹かれるし、戦争映画のように政治が絡んだ俗世の雰囲気も遮断されている。秀逸。

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オーシャンズ11 2/-7

 大型泥棒映画なんだが、この前に観たソードフィッシュと違って、とても軽妙に計画が進められてゆく。それに、同じくらいの大金を強奪するのに、ちっとも暴力的じゃない。カジノの金を奪うという筋書きが、罪の意識を薄めるのか、という考えは野暮で、要はそういう作品であるだけのことなのだが、ワクワクする泥棒映画はいいね。

 しかし、ラスベガスの豪華さと来たらどうだ。華やかな電飾。馬鹿でかい噴水。金があるってことが勝者の証である街。彼らは、知恵と度胸と実行力で、そういう街に切り込んでゆく。専門技術を結集し、仕事をこなしてゆく彼らの姿は頼もしい。卓越した技術に裏打ちされているという確信があるから、観ていてワクワクはするけど、余計な心配をしてドキドキしなくて済むところが、僕は好きだ。ドキドキより、テンポや展開の妙を優先した作品。秀逸。

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