[INDEX] 映画の感想 3月分  

ブレアウィッチ2

サトラレ

アンブレイカブル

ドラえもん のび太と翼の勇者たち

スナッチ


印・・・秀逸

ブレアウィッチ2 3/26
 これはすごい。事実上のカヴァーだ。といって、前作を知らない人が観ても価値半減という、究極の続編である。調子こいて禁断の森へ踏み込んでいった若者たちが、次々と起こる怪奇現象で疑心暗鬼になる。ストーリーと恐怖心理の二大要素が前作と共通なのだから、いくら設定を前作と関連させた続編だと主張しても、そうは問屋が卸さない。

 前作と決定的に異なるのは、ブレアウィッチそのものの謎解明度と、撮り方である。前作は、おしまいが尻切れトンボで消化不良だったが、2ではちゃんとオチっぽいものが用意されていて、親切だといえる。また、一部にハンディ撮影らしい映像も挿入されているが、基本的には普通の撮り方をしている。したがって、前作のように画像の粗さでごまかせなくなった登場人物の挙動を通し、ブレアウィッチの謎をより鮮明に著述する必要に迫られているのが、2の特徴であるといっていい。

 映像によるごまかしがないのは、前作で不完全燃焼だった人は、ある程度、溜飲を下げるだろうが、逆に、前作が持っていた独特の不気味な雰囲気は失われた。魔女の核心に近づけてよかったと思う人と、ただのB級ホラーに成り下がったと思う人と、賛否は分かれるだろう。

 僕は、前作の最も評価すべき点は、費用対効果という投資効率だと思っている。そういう意味では、2は失敗かな。もっとも、観ていて退屈な作品ではない。

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サトラレ 3/21 
 泣かせる映画だ。監督本人も、「泣かせどころをたくさん用意しました」と公言してはばからない。はじめのうちは、この監督独特の小ネタで何度も笑わせてくれるが、中盤から徐々にシリアスな場面も現れはじめ、おしまいにかけては、泣かせどころの連発。これだけ感情を弄ばれておいて、観終えた後にネタを思い出し笑いし、一方でいいシーンを思い出してほろりと来る。作品としてのバランスが、余程いいのである。

 思ったことが思念として周囲の人に伝わってしまう天才、サトラレ。国家権力がその保護のために大掛かりな対策を講じているという設定からして面白い。変に、浮世離れした話じゃなく、そこそこに現実味を帯びた、一見するとちゃらんぽらんな世界観がいい。それだけでも面白いのに、作品は小松(鈴木京香)と健一(安藤政信)の関係を通し、サトラレそのものの深層にまで踏み込んでゆく。その過程には、感動を呼び起こす平易な仕掛けが、至るところに仕組まれている。

 興味深い話で、笑えて泣ける。それだけの映画と言ってしまえばそれまでだ。だが、この映画は僕の作品評価のツボを見事に貫いている。そういえば、同じ監督の『スペース・トラベラーズ』もよかった。下手に策を練りすぎず、世間受けするようにテレビドラマ的で自然な描き方を守っているのがいい。邦画というと、とにかく取っつきにくい難解な先入観ばかりが先走る。現に、難解で売れない映画のほうが、世間の目が甘い。そうした風潮の中、専門家や映画マニアに偏向する芸術作品としてではなく、動員の見込める娯楽としての映画作りという姿勢が徹底していることに、好感する。邦画復権のために必要なことは、アミューズメントへの原点回帰。高く評価するべき。秀逸。

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アンブレイカブル 3/18
 ヒット作、『シックス・センス』に続き、ネタばらしはご遠慮くださいという映画なので、この感想でもネタをばらすのは控える。僕は去年の暮れに、関係者向けの試写会を観にいった人に、酒席でぜんぶネタをばらされた。

 評判どおり、たいしたことのない作品。だが、序盤と中盤の盛り上がりは、かなり興味を惹かれる。僕はネタを知っているけど、結末まで聞いたわけではない。自分の能力に気づき始めたブルース・ウィリスが、「俺って、ひょっとしてヒーローかも」と戸惑っている様子は、まるでアメコミヒーローモノの第1巻のようである。

 もし、この作品が連続ドラマで、その第1週だとすれば、結構よくできたストーリーだと思う。ヒーロー誕生秘話とするのである。しかし、そんな妄想とは関係なく、あっけなく例のネタでオチをつけられる。なーんだ、ネタなんてどうでもいいじゃないか、という失望感のもと、映画は終了した。僕がネタを知っていたから失望を感じたのかどうか、不明である。

 何度も言うが、ぜんぶで50巻くらいのヒーローコミックの第1巻としては、とても面白い。来年の正月あたりに、日本語吹替つきの子供映画として続編が出れば、秀逸印は間違いない。その際に、サミュエル・L・ジャクソンの役どころをどうするかは、想像してみると楽しい。ヒーローを誕生させた功労者でありながら、実はその裏には・・・。おっと、しゃべりすぎたようだ。

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ドラえもん のび太と翼の勇者たち 3/17
 最近の劇場版ドラえもんは、ちょっと教育界に迎合しすぎているようで食傷気味だ。今回も、環境問題が微妙にからんでいる。学校教育や家庭生活を通し、すっかり国民知識として定着した環境問題を、「ドラえもん」があえて啓蒙する必要性は、もはや失われたのではないか。映画を観に来た子供たちには、友情とか愛とか、そういう心に響く映画を楽しんでもらいたい。つまり、劇場版ドラえもんには、藤子・F・不二雄存命中の大長編ドラえもんに回帰して欲しいのだ。

 注目したいのは、同時上映されている『がんばれ!ジャイアン!!』だ。日頃、厚いヴェールに包まれた剛田家の内情が、如実に描かれている。ジャイ子ファンは必見である。ジャイアンの妹思いの優しさには、本当に感心させられる。しかし、その思いがあだになって、余計なおせっかいがジャイ子を傷つけてしまう。本当の見せ場はそこからで、ジャイアンの行動には、男気を感じる。ジャイ子の原稿を紛失した後みんなで探し、「ありがとう、全部揃ったよ」と安心させておいて、「3枚、足りない」と心の中でつぶやくシーンは、まるでNHKのプロジェクトX。

 ということで、前作・前々作に引き続き、短編の好感度が高い。もっとも、メインがまるでダメってわけじゃない。大人になれば、いろんなドラえもんの楽しみ方があるのだ。さて今回、最も気になったのは、入場者プレゼント(はねドラくん)である。上映中に無意識にこれで遊ぶ子供が大勢いて、終始、劇場のどこかでジージーガタガタ音がする。来年は、音の出ないオマケを希望します。

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スナッチ 3/16
 ロンドンの裏社会を舞台に、個性的な悪党たちが特大ダイヤモンドを奪い合うドタバタ喜劇、珍騒動。展開は至って軽妙。テンポも速く、登場人物も多いので、しっかり見ていないと、複雑に仕組まれた数々の伏線を逃す。

 ブラピは出演を熱望したそうだが、彼の役どころは微妙だ。頭の悪そうな流浪民ボクサー。当然、主役じゃない。しかし、ただの田舎者と侮っていると、作品同様、最後にブラピは自分の分け前だけは持っていく。ダイヤモンドは誰の手に渡るのでしょう。

 画調はたいへんスタイリッシュで小気味よいが、基本的にはコメディだ。それにしては、笑えるところがない。プロモーションビデオのような感じ。ちょっと作風に凝りすぎたか。観終わって得るものは何もない。

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