映画の感想 9月分

 

長崎ぶらぶら節

シャンハイ・ヌーン

最終絶叫計画

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長崎ぶらぶら節 9/18
 つらい恋でした。日本の恋は、かくも細やかで、しかも何と情熱的であるか、まざまざと見せつけられました。といっても、肌を合わせるどころか、唇を重ねる場面すらないのです。

 舞台は長崎の花街。映画は、華やかな芸者遊びと、その裏に潜む悲話は観客には周知のこととして簡単な描写にとどめ、吉永小百合演じる愛八姉さんの恋路を描きます。彼女にまつわるさまざまな逸話は、彼女の人となりを如実に明らかにしてゆきます。誠実で慎み深く、誰からも愛された愛八が、最も愛し、そして最も愛された人との充実した2年間が、美しい日本の伝統芸能や風景とともに、ある種絵巻のように展開されてゆくさまは、キスシーンがなくったって観ていて惚れ惚れします。

 もはや失われてしまった恋愛美学への、懐古主義とも受け取れましょう。しかし、物語が終盤に移るにつれ、自然、愛八への同調や憐憫が募ってくるのは、私が彼女のような恋路に共感するところがあるからに違いありません。道ならぬ恋、いや、それだけではなく、いったん男女の関係になってしまえば必ず失われる何かを、この二人は知り尽くしています。その苦しみと喜びの凝縮を、愛八は晩年で味わい尽くしました。

 いまどき、こういうラブ・ストーリーに憧れを感じるのは、考えてみれば浮世離れしているともいえます。時代や舞台ではなく、心として不可能なことだから、逆に共感する恋愛映画です。ラブ・ストーリーはハリウッドだけではありません。映画を真摯に鑑賞できる人になら、若い世代の人にも観て欲しい作品だと思います。ちょっと、判官びいきもありますが。秀逸。

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シャンハイ・ヌーン 9/-5
 ジャッキー・チェンが映画に主演するのは久々の気がしますね。今回は、清朝の近衛兵に扮してアメリカ西部を駆け回ります。 大学のゼミで清朝末などもかじりましたので、どうしても時代考証なんかに目が行ってしまいますが、これは野暮というものでしょう。

 さて、今回のジャッキー・チェンの暴れぶりは、往年に比べて少々冴えがありません。数々のアクションはCGを駆使した最近の格闘シーンとは違う面白さもあり、彼独特のちょっとした小ネタ的動作もあり、これまで通りなんですが、ちょっと何かが違うのです。

 彼が年齢的に衰えてきたのでしょうか、いや、アクションを見る限り、そんなところはないようです。やはり、全体を通して西洋対東洋といった構図が貫かれていて、その大前提が彼の行動をいびつにしているような気がします。正確に言えば、彼の行動を、私はいびつに感じたのでした。アメリカ人がこの作品を見ても感じない、いびつさでしょう。西部を描かねば、という気概が先行して、香港時代のように純粋な勧善懲悪に終始しきれない、歯切れの悪さが残ります。

 構図が嫌いと書いておきながら、中国のお姫様が誘拐されるというのは、展開というレベルで考える限り、面白い発想です。その身代金を、中国人フィクサーが狙っているのも、面白いですね。時代考証的には、ありえないことなんですけれども。なんだかんだ言って、野暮な結論になってしまいました。

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最終絶叫計画 9/-2
 あああー!なんて下品な映画なんでしょう!

 パロディ映画のはずなのに、あきらかに下ネタコメディ映画に転化している。なんという下ネタ加減、ナイフで突き刺すはずの頭をあんなモノで貫いているー(結構立派)。脅迫写真にあんなモノを使っているー(結構粗末)。モザイクはいらないのでしょうか・・・。

 ところで、どのくらいの作品をパロっているのでしょう。予告編で観たところによると、スクリームシリーズの殺人鬼が出てきますし、ストーリーはラストサマーっぽい。マトリックスやブレアウィッチの小細工が使われる模様も。それらを含め、パロディの数は30を超えるそうです。

 その中でも、作風をあらわしている場面をひとつだけ暴露しましょう。町で起こる連続殺人事件を、テレビの女性レポーターが追い、殺人を犯している殺人鬼にインタビューを果たします。しかし、殺人鬼はしつこいレポーターの質問に業を煮やし、インタビューに応じず、暗い森の中、レポーターをカメラマンともども追いまわします。そのぶれる映像たるや、ブレアウィッチ・プロジェクトそのもので、しまいにはレポーターが鼻水をすすりつつ、収録者に謝罪する映像にまで発展します。もちろん、彼女らのその後の運命は明かされません・・・。回りくどい暴露で恐縮ですが、作品中ではこれが短時間、かつ自然に展開されてゆきます。

 パロディ映画としては、これまでレスリー・ニールセンのものを楽しんできましたが、この作品も、それに劣らずパロり尽くし、しかも独自の境地を開いている秀作です。ここ2,3年の有名映画を押さえておけば、存分に楽しめます。お子さま連れさえなければ。

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