映画の感想 12月分

 

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13デイズ

オーロラの彼方へ

13デイズ  12/20くらい
 これは、難しいドキュメンタリーな映画です。しっかりと事実を認識して観ていないと、スーツを着たオヤジどもが「あーでもない、こーでもない」と悩む姿が延々と続くだけです。キューバ危機をリアルタイムで経験したアメリカ人以外は、若干の時事常識が必要ですが、発端と結末は、あえて説明するまでもないでしょう。

 ソ連は不気味でした。姿が見えません。お互い限られた情報の中から両国の腹を探り合い、暗中を模索する様子が悩ましげに描き出されています。終盤でソ連の態度が変化したとき、「ひょっとするとフルシチョフは失脚しているんじゃないか」と疑うあたり、情報に事欠かない現代に比して時代を感じてしまいます。

 さて、この映画の主役はケネディ大統領ではありません。ケビン・コスナーが演じるのは、ケニーと呼ばれている大統領補佐官です。そのほかにも、キューバ危機に直面した政治家や軍人や記者やスパイなんかが大勢出てきては、「あーでもない、こーでもない」と首をひねっています。米ソの対立という鮮烈な構図に加えて、国内の意見もなかなかまとまらず、焦燥感が募ると同時に、「政治」の難しさをあらためて実感します。しかし、そこは若いアメリカの政権のこと、ケネディ兄弟にケニーを加えた3人衆は、なんとか世界核戦争を回避しようと、次々と決断を下してゆきます。アメリカの政治体制が、最高に機能した好例でしょうね。当時の日本は、池田内閣の下、高度成長に向けてまっしぐら、といったところでしょうか。

 とにかく、政治力学が主役のような映画です。

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オーロラの彼方へ  12/13
 タイムマシーン映画というジャンルを設けるなら、この作品は間違いなくそれに属します。もっとも、人が時間を移動するわけではありません。無線機を通して、過去の人と話ができたらどうなるかというものです。でも、歴史を変えてしまうことに変わりはありません。この作品では、狂った歴史の歯車を修正するのに四苦八苦する様子が克明に描かれています。

 遺伝子工学が進歩して、クローン動物を作っては、やれ神の領域に踏み込んだと騒がれていますが、歴史操作は「神の領域」の際たるものでしょう。男はニューヨークにオーロラが出たある日、事故で死んだ消防士の父親と話をし、起こるべき事故から父親を救います。ところが、それが発端となって、歴史が変わってゆきます。悪いことは始まりだすと止まらないもので、次々と家族が不幸に陥ります。天罰が下ったかと思う瞬間です。結局、何とかハッピーエンドで終わらせて明るい作品感を取り繕うことができました。

 この作品で面白いところは、男や親父が歴史を転換させると、映画の観客の時制で転換効果が現れてくることです。机に焼け焦げができたり、友人の記憶が変わっていたり、写真から人物が消えたり・・・。これだけ歴史変化を生じさせておきながら、ニューヨークにオーロラが出る晩、彼がオンボロの無線機をいじるという映画上の既成事実が変化しないところがみそです。 

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