日本きな粉愛好会

久寿餅をたずねて 「川崎大師」3

H14.5.22 神奈川県川崎市

 久寿餅を買わねばならない。どこの店のものにしよ
うか迷った挙句、いろんなところで見かけた住吉屋
総本店のものにした。各店こだわりはあることは容
易に想像できるが、今回は、オーソドックスなものを
買いたい。住吉屋総本店は、明治20年創業の老舗
である。このお店では、久寿餅のほかにも、生麩の
お菓子や麩の佃煮など、小麦粉を使った商品を製
造しているとのこと。(実は、肝心の久寿餅はここで
はなく、京浜川崎の出店で買った。)

 テキトーにパチンコを打ち、そば屋でざるそばを食
べ、再び、大師線で川崎大師を後にした。


表参道にある住吉屋総本店のビル

 


久寿餅4〜5人前950円(税込)

 ここまで読んで、おやっ?と思った人があるかもしれない。葛餅
なのに小麦粉?
 そう、川崎大師の久寿餅は、小麦粉のでんぷんが材料なのであ
る。小麦粉に水を加えて練ると粘りが出る。この粘りがグルテンと
呼ばれるたんぱく質である。これを水中でこねていると、グルテン
だけが手元に残り、でんぷんは水に溶け出して沈殿する。こので
んぷんを長い間寝かせて、蒸し上げると、久寿餅になるらしい。細
かい過程は良く知らないが、住吉屋さんで生麩のお菓子が作られ
ているのも、なんとなく納得できる話ではある。なお、久寿餅という
命名は、本葛を使っていないから逃げを打っているというわけで
はなく、考案者の「久兵衛」氏の名にちなみ、縁起を担いだという
伝統的な名称である。

 

 日本きな粉愛好会本部で、盛り付けて、ついでに薄茶を
点てたところ。餅はただの板状で、調理器具のそろってい
ない本部での切り分けは難渋を極めた。へらで引きちぎっ
て皿に盛ると、ランダムに崩れた切り口から、ぷるぷると
した質感がより一層、視覚的に伝わってくるような、涼しげ
な色つやである。
 味は、ちょっと酸味があり、そのほかは癖のない、非常
に淡白な味である。この素材だからこそ、きな粉の風味が
効いてくるというものである。酸味があるのは、でんぷんを
寝かせる段階で、発酵が進むからだそうである。

 

   添付の黒蜜と、きな粉。きな粉に砂糖は加えられ
ておらず、甘さは黒蜜によって加味される。

 

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