ホームへ戻る

悪い奴ほどよくしゃべる?(11/28)
毎日毎日、ニュースを騒がせているマンション構造計算偽造事件。
一体、どこが一番悪いのか……連日テレビに出演して、猫の目コメントを出す 小島社長なのか、建設会社なのか、建築士なのか……。
何と自殺者まで出て、昭和35年製作、黒澤明監督の『悪い奴ほどよく眠る』を 彷彿とさせる展開に、半世紀近くなってもこの業界は何も変わっていないんだなぁ、と ヘンな意味で感心してしまった。

私の少ない脳味噌で考えるに、今話題になっているマンション群は、 「まず売り値(儲け)ありき、施工費ありき」という建築主の商売根性によって、 ただでさえ弱い立場の下請け会社、孫受け会社が、少しずつ損のないように自分の 取り分を抜き取った結果なのだと思う。
大手の建設会社や建築士なら、もっと上玉(いいお客さん)を抱えているので、 受けるわけもなく、儲けのない仕事なんぞ、自らの手ですべて受け負う中堅会社なぞいない。 だから自分のところは、中間ブローカーの手数料だけ抜き取って、孫受け、ひ孫受けに 降ろして行くというわけだ。

最初のうちは、「この作りでこの値段じゃアシがでてしまいますよ。 もうちょっと何とかなりませんか」などというやりとりがあったのかもしれないが、 いかんせん、あの社長ではどういう展開になったかは容易に想像がつく。
結局は、「どんなモンが建ったにしろ、あの社長が責任を負うんだから、 まっ、いいか。必要なお金を出さない建築主が悪いんだし」と 鉄骨を少なくし、コンクリートは水で薄めて作っちゃったんだろうね。 コーヒー一杯分の豆しかよこさないのに、これで3杯作れって言われたら、 薄めて作ってアメリカンにして、これブレンドですって出すしかないものねぇ。

でもこれはコーヒーじゃなく、人の人生を左右するマンションだから、この上なく罪が深い。
何も知らなかったという小島社長も、実は「建築基準法なんて、"少し位"下回ったっていいだろう。 大きな地震がくれば、潰れてわからないなってしまうんだから」と甘く考えていたのだろうが、 自分の予想をはるかに超えた業者の仕事ぶりまで想像できなかったんだろうね。

私は年間利益20億の会社の社長です!
106%で買い取ります!
と吠えているそこの社長、お前が欲をかかず利益を1億にしておけば、 こんな事にならなかったんだよ!
払える訳ないじゃん、誰が考えたって。 時期を見て、自己破産か民事再生を申請して、あとは税金で解決してねってミエミエじゃないの。
悪い奴ほどよくしゃべる……しかし!黙っているそこの業界の人、「良〜かった、 うちじゃなくて」なんて、ホッとしている場合じゃないですよ。今回のケースは、たまたま 表に出てしまっただけで、"ONE OF THEM"だと私は思っているが、どうでしょうか。
トップに戻る 掲示板を訪ねる メールでつぶやく
二人のヨンさま(11/25)
「Time is running〜〜♪」もう12月がそこまで…。^^;

話題の韓国映画『四月の雪』と『親切なクムジャさん』を観ました。
どちらの作品も相当に混雑するだろうと、『四月の雪』は公開からしばらくして、 『クムジャさん』は、公開時間より早めに出かけたのですが…。
『四月の雪』は、ヨン様主演を謳い、盛大なイベントを行って宣伝していましたね。一方『親切なクムジャさん』は、 イ・ヨンエを"韓国映画スター、最後の大物登場"と謳い、『宮廷女官チャングム』人気の相乗効果を狙って、 話題づくりをしていたにもかかわらず、『四月〜』は、公開がどんどん縮小し、『クムジャさん』は、 公開二週目なのに、午後7時の回にもかかわらず、お客さんが20人はいなかったなぁ。
まぁ、いくら韓流ブームとはいえ、ヨン様の映画は"寡黙な映画"を作るホ・ジノ監督だし、イ・ヨンエの方は、 あのパク・チャヌク監督だからねぇ。「酸素のような映画」を作る監督じゃないですから。^^;

ホ・ジノ監督の映画は、寡黙な分、観る側が行間をよむ作業が必要になります。 胸にじんわりと来て、二度三度観ると、味わい深くなってくる的なホ・ジノ監督は、 お気に入りの監督の一人でもあります。
その点、テレビのドラマはきっちりと説明してくれるので、ヨン様ファンの職場のおばちゃん達には 「ヨン様が汚い」「何を言いたいのかわからん」、と不評でした。
でも、役者としてのヨン様がとっても良かったんですよね。「死ねば良かったのに」とつぶやく一方、 「許し」をも与えようとする優しさから来る複雑な人間像を、立派に演じてました。
私にとっては、ベスト10には入って来る映画だと思います。
作品は優れているのに、『冬のソナタ』ファンを当て込んだために、監督や俳優、そして映画そのものの 評価になってしまうのは、ちょっと残念ですね。

一方『クムジャさん』は、イ・ヨンエの個性には合わないのでは?と予想して観に行きました。 あと…監督が監督だけに、残酷のシーンもある程度覚悟して…。
この映画そのものを語るには、単に私の生理的な好みの問題になりますので、イ・ヨンエについて お話します。
彼女は何とか自分のイメージや女優としての幅を広げようと、頑張っていたけれど、 同じようなテーマだったら、フランソワ・トリュフォー監督風な作品(『黒衣の花嫁』とか)だったら良かったのかなぁと 思いました。また観念的でありながら、演出があまりにもリアルでしたので。 イ・ヨンエの清純な美しさも邪魔してしまったような気がします。

彼女は美しく、スターとしてのスケールもオーラもあります。あまり無理しないで吉永小百合のような女優になったら… と思ったのですが、どうでしょうか。
ハリウッドに目を向けると、悪女と天使を演じ分けた女優として、オリビア・デ・ハビランドを思い出します。 『風と共に去りぬ』では、メラニーを演じた彼女ですが、オスカーを受賞した『女相続人』では、 前半は無垢で物静かな女性を、後半では残忍な鬼となっていきます。
イ・ヨンエは、まだまだオリビアの妹のジョーン・フォンティーンのイメージですが、 急いでイメージを変えることをせず、息の長い女優さんになって欲しいと思います。

二人のヨン様…テレビも映画も韓流の洪水の中、玉石混交です。映画ファンとして、 二人とも、単なるブームで評価が上下する事のないよう願っています。
トップに戻る 掲示板を訪ねる メールでつぶやく
キングダム・オブ・ヘブン(5/30)
前から楽しみにしていた、『スターウォーズ』の前売りのおマケを交換するついでに、 リドリー・スコット監督の『キングダム・オブ・ヘブン』を観に行く。

一昨年あたりから、史劇映画が公開されるようになったものの、どれも今ひとつ。 だけど、これは久々の良質の史劇と言ってよい作品だと思う。
スコット監督は完璧主義者(潔癖症)で有名だけれど、 それが良い方へ活かされていたと思うし、細部への心遣いも充分に 伝わってくる作品で、特に、できるだけCGを排し、 実物大に作ったセットと俯瞰撮影の迫力は、『エル・シド』を彷彿とさせ、久々に興奮した。

多少、グロい部分もあったが、この時代の戦争モノにはどうしても必要だし、 その点は演出やカットに節度があったので、"その手のシーン"が苦手な私も目をそらすことなく、 全編を通して観ることができたのは、やはり映画のデキ故か……。
また、サラセン人と十字軍に対する監督自身のスタンスも、偏りがなく非常に好感が持て、 それだけに映画がより説得力を持ったんじゃないかと思う。
アメリカ人では、というか100%アメリカ資本なら、こうは作れなかったんじゃないのかなぁ。

ただ難を言えば、つじつまが合わないところがあったところかな?でもまぁ、それが致命傷に なるわけでもないし、映画の根幹の部分ではないので、適当に流してしまった。 それと、主役のオーランド・ブルームが作品の大きさに比べて小粒な感じは否めないけれど、 チャールトン・ヘストンクラスの俳優なんて、今や望むべくもないからね。

今回の映画も、テンプル騎士団なんかが出てきて、『コンスタンティノーブル陥落』 『ロードス島戦記』などなど、塩野七生を読んでいたお陰で、余計に楽しめたような気がする。

おススメですよ、この映画。
期待しちゃって下さい、特にM・モーゼ氏、(笑)



ライトセーバー貰って、いい映画観て、帰りに成瀬巳喜男監督のDVD『稲妻』と 『あに、いもうと』を購入。その夜はもちろん成瀬映画二本立てを観て大満足。
がしかし!!
翌日、光る!ライトセーバーストラップ、早速職場で自慢したら、誰も判ってくれない!! 「あらぁ、停電の時にいいですよねぇ」だって。(-_-)
トップに戻る 掲示板を訪ねる メールでつぶやく
戸田奈津子さんの誤訳騒動(5/29)
たまたま古本屋で暇つぶしをしていたら、ふと一冊の本に目が行った。
『字幕の中に人生』…映画『指輪物語』から始まって、『オペラ座の怪人』の誤訳字幕騒動の 渦中にあった戸田さんの著書だった。
戸田さんのお話は、トークショーなんかで、何度も直接聞いたことがあるけれども、 この本もなかなかおもしろかった。

私は字幕派である。なぜかというと、やはり俳優そのものの声を聞きながら映画を観たいから。 そして、イギリスのような階級社会だと、セリフの感じ(方言?)ひとつが意味を持つからだ。
私は英語はほとんどできないけれど、ジョーディ(イングランド北東部の方言)を東北弁で、 コックニーを茨城弁で吹きかえられても戸惑ってしまう。^^;
だから字幕というのは、非常にありがたいものなのだ。

さて、戸田さんの本の中で、特に興味深かったことをひとつ、ふたつ。
スタンリー・キューブリック監督の作品は、ずっと高瀬鎮雄さんという方が翻訳していた そうだが、キューブリックは、自分の映画についた字幕を逆翻訳させチェックするので、 ずいぶん字幕翻訳者を困らせたそうだ。
(素人の私でも、逆翻訳が監督を満足させられるのは奇跡だと思うな)
高瀬氏が亡くなって、『フルメタル・ジャケット』(1987年)の翻訳が彼女に 回ってきた時もやはりそうだったようで、結局、戸田さんは交代し、原田真人監督が 手がけ、ほぼ直訳でできあがったということだった。
(そういえば、『フルメタル〜』はずいぶんと機関銃のようで、しかも長い字幕だったなぁ、 とおぼろげながら思い出した)

彼女はこんなことも書いている。
シナリオは練りに練られたもので、本来ならば一字一句正確に約し伝えるのが望ましい。 だけれども、字幕翻訳にはさまざまな限界があるところにジレンマを感じる、と。 また、映画館へ行って映画を観にきたのであって、「字幕を読み」にきたのではない。 字幕にはチラッと目を走らせただけで、なんなく内容をつかめる文章でなければいけない。 "本来の目的である映画を楽しむ時間を観客に与えなければいけない"。
うんうん、そうそう。肝腎なのは、映画そのものを楽しむことなのよね、と思わず納得 してしまった。

戸田さんの翻訳批判をもう一人した人がいる。立花隆氏だ。
『地獄の黙示録』の字幕について書いたものなのだが、彼が展開しているのは専ら 「シナリオ分析論」であって、映画の字幕という観点からではない。 だから戸田さんの字幕=×というのは早計なことだと思う。
しかもあの映画は、戸田さんのメジャーデビュー作として知られているが、 彼女には、まだまだ荷が重く、師匠の清水俊二氏が手を入れて完成させているのだから。

字幕批判は今までもあったかと思うが、それは注目されている人気映画だからこそ なのかも知れない。
でも、どうしてああいう個人攻撃のような、重箱の隅をつつくようなことをするのだろう。 ああいう人々が、表通りを大手を振って歩ける時代になったってことかしら? 便利だけど怖いインターネット、と実感する。
そこには、映画への愛情も、長年実績を積んできた戸田さんへの尊敬の気持ちのかけらもない。 もし、誤訳だとしたら、(最近は絶縁状態だけど)うちのJackとBettyのように、 「こんな風に観るともっと楽しめますよ」「こういう意味なんじゃないかな?」と、 教えてあげないのだろう。

そうだ、最後に字幕批判する人たちにお願いがひとつ。
みなさんの英語力と分析力を買って、マルクスブラザースの映画の字幕を、 私のような英語力がない人間にも笑えて、正確に理解できるように訳してくれないでしょうか。
トップに戻る 掲示板を訪ねる メールでつぶやく