Jack&Bettyの目次へ  ホームへもどる

第96回「13デイズ」

監督…ロジャー・ドナルドソン(『追いつめられて』)
脚本…デビッド・セルフ(『ホーンティング』)
撮影…アンジェイ・バートコウィアク(『スピード』)
音楽…トレバー・ジョーンズ(『ミシシッピー・バーニング』)
キャスト…ケビン・コスナー、ブルース・グリーンウッド
スティーブン・カルプ、ディラン・ベイカー


2000年/ビーコン・ピクチャーズ(日本ヘラルド映画)上映時間2時間25分

<CASTジャック&ベティ>
ジャックの評価 /ベティの評価

…金かえせ!! / …いまひとつ
…まあまあ/ …オススメ
…大満足!!観なきゃソンソン


J/ この作品は有名なキューバ危機を描いた作品。実はこのキューバ危機は、第三次世界大戦につながったかもしれない大変な事件であり、 遠いアメリカ一国の話ではないっていうふうに考えると、とても興味深いね。

B/ この事件の、すぐあと、まだ生々しい記憶のある時に『博士の異常な愛情』『未知への飛行』が製作されたことを考えると、いかにこれが 切羽詰った社会問題であったかっていうのがわかるわね。

J/ この映画と、それらの映画を合わせて観ると、今まで遠い時代の話だったのが、身近になってくるような気がするね。

B/ 映画『アトミック・カフェ』ではガス・マスクをつけて非難訓練をする小学生の姿や、核シェルターを作る市民の様子が映し出されて、と ても異様な感じがしたけれど、この映画はそういった、市民の姿というのは省かれているわね。

J/ その代わりにケビン・コスナー扮するケネス・オドネルにその部分を反映させているんだろうね。彼はケネディ兄弟の友人であると同時に 一市民でもある。歴史をもっとも身近に傍観した人物であると同時に、父親であり夫でもあるからね。

B/ 彼は、ケネディの側近ではあるけれども、政策には口を出す立場ではないから、おのずから第三者的な立場から事件を見ざるを得ないよう なところがあるわね。けれども一般市民からしたら、政府の極秘情報まで知りえる立場にもあるから、家族を前にした時にいいようのない 苦しみがあるのね。

J/ 奥さんは何も聞かずしてそれを理解している。明日の朝には戦争になっているかもしれない。核爆弾がここに落とされるかもしれない。仕事 の途中、息子のフットボールの試合を見に行くシーンで、彼は何も言えずに、ただただ息子の姿を胸に刻みこんでいるかのように、みつめ るだけ。

B/ ケネディ兄弟を直接描くんでなしに、彼を通してこの事件を描いたことが、結果的に事件の焦点を絞らせ、映画をシンプルかつ大変理解し やすくさせてるのね。私たちが共感できる普通の父親、夫の姿が描かれることによって、事件を私たちに近づけている。これがこの映画 の見事なところだと思うわ。

J/ 冒頭は核爆弾の爆発シーンではじまる。『博士の異常な愛情』のラスト・シーンのような。第三次世界大戦の悪夢を見せるかのようでもあ る。そして次に来るのは、一家族の平和な朝食風景なんだよな。

B/ いつもと変わらぬ、オドネル家の食卓風景、さすがアイリッシュだけあって子だくさんでね(笑)息子の成績が悪く、怒っている父親。本当 にどこにでもある風景なのね。

J/ それから車で出勤し、いつも通りに自分のオフィスに入り、コーヒーを入れてもらい、新聞に目を通す。ジャクリーン・ケネディが夜のパ ーティーの招待客のことでいちゃもんをつけてくるのを適当にあしらう。「ああ、またか」…なんて風景もはさまって(笑)ところがいきな り異例の召集がかかり、行ってみればキューバのミサイル基地の写真が撮られたという情報が入り、一気に緊迫したムードになるね。日常 から一気に事件の核心に入るところが、大変にスピーディで良いし、緊迫感が一気に高まる効果を生んでいるな。

B/ キューバがなぜ、共産圏の一員になり、ソビエトがキューバに核ミサイルを配備しようとしたかは一切省略されているわね。そうした政治 的背景は省略されていきなり本題に入るのね。そこらへんにアメリカ映画らしい思いきりの良さがあるのね。社会派映画ではあるけれども まずは、誰にでもわかりやすく、入りやすく、まずエンターテインメントとして楽しめちゃうことを第一にしている。

J/ 結局、こんな映画もエンターテインメントにできてしまうところが、アメリカ映画ならではの醍醐味なんだよね。

B/ この映画には、事件の経過ごとに見せ場のようなものをきっちり作っているわね。まず最初はケネディのテレビ演説が行われるまでで、こ こでは、戦争を回避したいケネディ兄弟と、強行な姿勢をとる軍の幹部の対立が見せ場になってくる。

J/ 10月24日、キューバへの臨検が行われる、最初の開戦の危機。ソビエトの船、それを見守るアメリカの軍艦、軍の司令部、ホワイトハ ウスそれぞれが、映し出される。あくまでも戦闘は避けたいケネディと早く戦いたいかのような軍部の対立。戦闘態勢が刻々と整う軍艦。 勝手に近くで軍事演習をしていた部隊があったり、独断で動きかねない艦長のリアクションがあったり、ここではアクション映画さながら のスリリングささえあるよね。

B/ 10月25日の国連安全保証理事会、形成が一方的に悪くなっていた議事にアメリカの国連大使が乗りこみ、それを裏返す醍醐味。それと ソ連のスパイと接触した際の腹の探り合いのスリリングさ。国と国がお互い腹の探り合いで、疑心暗鬼になり、もはや戦争がさけられない 事態になった時にきたフルシチョフ最初の書簡。わずかな希望を残すまでがひとくぎりかな。

J/ そして第2の書簡が来て、再び戦争がさけられない事態になり、ここで出したいちかばちかのケネディ兄弟の賭け。それぞれにまったく 異なったサスペンスがあって、まったく飽きさせられないんだよね。

B/ さらにこのサスペンスの合間に細やかな味付けもされていて、それがこの映画に説得力を与えているわね。例えばさっき挙げたケネス・オ ドネルが息子に会いに行くシーン。それからブラック・サタデーの夜、彼がカソリック教会で祈りをする人々の行列に思わず立ち止まって しまうところ。彼が、緊迫した場面で吹く口笛『ダニー・ボーイ』のメロディ。

J/ ケネディ兄弟と彼だけが、アイリッシュであることのさりげない描写。これがとてもさりげないけれどいいね。

B/ 事件の行方が決まる日曜日の朝、核爆弾が爆発する映像が、大きな太陽の映像に変わっていって、オドネルが自分のベッドで目を覚ます。 生きていることの実感。ホワイト・ハウスでなくって、彼のベッドで事件の顛末がわかるっていうのがとっても良かったわね。

J/ そして最初に戻って家族の朝食の風景。いつもと変わりない風景がそこにある。その喜び。窓から黄金の日差しが洩れている。それを彼は 噛み締める。子供が「今日のお父さんはなんだかヘンだ」って言う。いいね。

B/ 映画は最後にケネディ兄弟の影で終わるわよね。あそこでまたこの事件が真実だったことを実感させられるの。その後の兄弟の運命は私た ちにはすでにわかっていることだし、なんともいえない感慨のようなものがうまれてくるのね。

J/ 「憎悪と無理解を超えて共に行き続けよう」というケネディのメッセージがそれにかぶってね。それが現代の我々へのメッセージになって いるね。今でも世界のどこかで必ず戦争は起こっているからね。

B/ ある意味ではケネディ・ファンには応えられないシーンでもあるかもしれないけれどもね。まあそれはそれとして、そうでない人にも感じ るところは充分あるわね。

J/ この映画は、飛行機で戦死する青年のエピソードとか描き方がいかにも感動しろみたいで、若干の不満がある場面もあるにはあるけれど、 まずは楽しみながら歴史の醍醐味に触れられることがとにかく大きい。

B/ 下手なアクション映画なんかより、よっぼどスリリングで話が面白いしね。見応えあるわよね。

J/ 最近のアメリカ映画では、一番面白かったな。これきっとオスカーにノミネートされると思うよ。

B/ ケビン・コスナーも、こういう控えめな役だと、俄然生きてくるのね。久々のヒットよね。彼としては。他の配役はあんまり知らない俳優 ばかりで、色に染まっていないことも、かえって良かったような気もするし、その点でも成功してるわね。とにかくお薦めの一本と言える かな。

この映画についての感想やご意見がありましたら下記までメールを下さい。

メイル このページのトップへ ホームヘ