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第58回「カラー・オブ・ハート」

プレザントビル 監督…ゲーリー・ロス 、 脚本…ゲーリー・ロス
視覚効果…クリス・ワッツ 、 音楽…ランディ・ニューマン
キャスト…トビー・マクガイア 、リース・ウィザースプーン
ウィリアム・H・メイシー、ジェフ・ダニエルズ、J・T・ウォルッシユ

1998年ニューライン・シネマ/上映時間2時間04分
CASTジャック&ベティ
ジャックの評価 /ベティの評価

…金かえせ!! / …いまひとつ
…まあまあ/ …オススメ
…大満足!!観なきゃソンソン


J/ この映画の邦題『カラー・オブ・ハート』は、横文字とは言いながら、映画の内容を適確につかんでいて、 むしろ原題よりいいね。『プレザントビル』これじゃなんのことかわからないものね。

B/ 実は映画の中に出てくるテレビドラマのタイトルなのよね。これは、町の名前。「心地よい楽しい町」のもじり なのじゃないかしら。

J/ 典型的な50年代のホーム・ドラマなんだね。もちろんモノクロ。もう絵に描いたような家族でね。まじめ なお父さんと、料理が上手なお母さんに、高校生の双子の兄妹。お兄さんのほうが学校でなにか表彰されて 帰ってきて、幸せそうに笑う一家みたいな。

B/ 一方主人公の現実の家庭は、壊れてるのね。両親は離婚しています。母親の生活も荒れているようです。夜 はお化粧して男通いをしている。彼はそんな現実から逃れるために、テレビの中へと逃避してるの。そこに はパーフェクトな家庭があるから。

J/ 彼は、もう完全なおタクなんだよね。友達とはおタク談義、「ドラマで出てくるスーパーの名前は」なんて 話をしている時の活き活きしていること。回りの人から見ると冴えない連中で、だけどこういう人たちって いるよね。おタクには日本もアメリカもない。万国共通なんだな。

B/ あら、あなたもそのくちなんじゃないの。

J/ 僕は違う!余計なお世話だい。

B/ あらら、図星だったかしらん(笑)

J/ テレビの中の家族と、主人公の家族が対比されているんだね。他にもまだ環境問題や、エイズの問題、そん なことが表面化していない夢のある平和な時代という点でも対比がされている。相似形の対極の世界という ように。

B/ 「それなら、大好きなドラマの世界へ送りこんであげよう」ってその世界へ主人公が送りこまれたとき、 彼がどのようにそれを受け容れ、変わっていくかが鮮やかになるようにね。

J/ クラスメートのステキな女の子をデートに誘っているかと思えば、遠くから彼女をみつめ、そのシュミレー ションをしてるだけ。そんな勇気のありようもない彼がどのように変わっていくか。それがこのドラマのポ イントなんだね。

B/ 彼が双子の妹とともに送りこまれた、このモノクロのドラマの世界、このアイデアが面白いわね。

J/ その昔バスター・キートンは『探偵学入門』で、スクリーンの中に入りこんで、暴れまわった。『カイロの 紫のバラ』では映画の中の主人公がスクリーンからこちら側の世界へ飛び出てきた。シュワルツェネッガー の『ラスト・アクション・ヒーロー』なんてのもあったよね。映画は時々こんなお遊びをするね。

B/ だからドラマの中に入りこむだけなら、別に目新しくもないの。だけど、この映画では徐々に色が着いてく る。カラーの世界とモノクロの世界が入り混じる。コンピュータの技術なくしてはできない、そのアイデア が何といっても楽しいわね。色の溢れる世界は美しく、楽しい。色はその人の個性にも例えられる。色々な個性。意地悪なやつ、性格の 曲がったやつ、変人、飲兵衛。けれども世界はドラマのように均質じゃないから面白い。ひとりひとり色が ついているから、面白いのね。

J/ ドラマの中で毎度決まった役を演じつづける人々が、自分に目覚め、人間として生きはじめるときに色がつ いてくる。町が次第に色づいてくるんだ。人の個性とか人間味を色に例えたところがこの映画の秀逸なところだ な。

B/ 彼の妹がこの町の秩序をほんのちょっと乱したところで、茂みの片隅に咲く一輪のバラの花が赤く染まると ころから、徐々に色づきが始まっていくのね。この一輪のバラが鮮やかでドキッとさせられるわね。

J/ 車に乗ってすっかり色づいた公園にいくと、桜のピンク色の花びらが風で散っている。その中をモノクロの 主人公を乗せた車が通りぬけて行く。そのシーンの美しいこと。モノクロの世界に色が入りこむ。それで 色の美しさが際立ってくるんだね。有名な絵画を集めた美術本。ルノアールにピカソ、その絵の色のなんと 豊かなことか。

B/ モノクロの世界に色が混じると、色がこんなにも美しいものかっていう驚きがあるわね。かつて初めてカラー 映画が登場したときの人々の驚きはいかほどのものだったのか。『石の花』で、蕾が美しい花に変わってい くさまを、ハイ・スピードでみせたその色の鮮やかさに当時の人たちがどれだけ酔ったのか。そんなことを 思っちゃったわ。

J/ 自分に色の着いた人の反応もさまざまで、単純に喜ぶ人がいるかと思えばとまどう人もいる。色がついて慌 てまくり、逆にモノクロの化粧をしてごまかす人も出てくるね。(笑)

B/ ただ単に色を隠すというよりも、その人の人間性を押し隠すという意味合いも持たせていたことが、いいわ ね。

J/ その素顔の美しさに気付き、男が女に化粧を落とさせるところなんかは、現実の色の美しさと同時にその人 の内面の美しさを発見したみたいな感覚になっていたね。

B/ 美しい色に魅せられる人々がいれば当然それを面白く思わない人々が出てくるわね。「風紀を乱している」 って主張する人が現れて差別が始まる。「カラードは入店禁止」カラード、色のついた人。これは同時に有 色人種というダブル・ミーニングにもなっている。

J/ 社会的な問題にも目を向けているんだね。一応。

B/ でもやっぱり、この映画の魅力は単純に目で見て楽しいってことかしらね。お話はちょっと単純という気も しないでもないわ。

J/ だけどこの映画には、誰だって勇気が持てる。自分を変えていけるっていう単純だけれども、そこには昔か らハリウッド映画で描かれつづけてきた、アメリカの精神があると思うね。

B/ いずれにせよ観終わって、気持ちよく映画館を出れる、楽しい映画とは思うわ。

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