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第56回「ライフ・イズ・ビューティフル」

ポスター 監督…ロベルト・ベニーニ 、 脚本…ロベルト・ベニーニ
撮影…トニーノ・デリ・コリ 、 音楽…ニコラ・ピオヴァーニ
キャスト…ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ 、
ジョルジオ・カンタリーニ、ホルスト・ブッフホルツ

1998年イタリア映画/上映時間1時間57分
CASTジャック&ベティ
ジャックの評価 /ベティの評価

…金かえせ!! / …いまひとつ
…まあまあ/ …オススメ
…大満足!!観なきゃソンソン


J/ いやー、感動しました。映画は理屈じゃないんだね。ストーリーはシンプルでも、いい映画ってのはできる んだね。

B/ ジワーッってくるのよね。「泣けー」っていってないのに、ジワーッと感動がやってくる。

J/ だけどこれは勇気ある映画だと思うね。誰がナチスの収容所を舞台にコメディを作ろうと思う。怖くてこんなこと はできないね。いくらいいテーマだからって、傷ついている人たちが実際いるわけだから。

B/ 政治的に偏っている人たちからの、非難もあるだろうし、映画の意図が理解できない人もいるかもしれない。 もちろん実際の体験者には、どんな描き方をしても受け容れられないものがあることは、間違いないと思う し。

J/ それでも成功したのは、『素晴らしき哉人生』に通じるテーマの良さとシンプルさだろうね。

B/ 何も小難しいことを言わなくったって、リアリズムにしなくったって、伝わってくるものはあるものなのね。

J/ ドキュメンタリーもいいけれど、映画にはそれではできないことができる。まさにこの映画はそれなんだね。

B/ 私たちはすでに、アウシュビッツがどんなものだったかを本や映画で色々と知っているから、この映画の収 容所が、実際のものとは違うことはわかっている。アウシュビッツの記録フィルムの凄まじさは、とても口 では言い表せないもので、それを見た時のショックときたら、作り物の映画の比ではないとは思うの。ただ 記録フィルムでは言い表せないことをこの映画はテーマにしているのよね。

J/ この映画では、その事実を描くのではなくて、人間の持っている可能性。こんなことをしたのも人だけれど、 それでも人にはこんな精神もやどっているんだよと。そんな可能性に重点が置かれた寓話なんだね。

B/ 昔、アウシュビッツの記録フィルムをストーリーの中に取りこんだ『愛する者の名において』って映画があった けれど、それが必ずしも心にせまる映画とはならなかった。それなのにこの映画には心に訴えてくるものが あるのは、焦点をそこに絞っているからかもしれないわね。

J/ 物事が単純化されてるんだろうね。だけどその単純化されたものの中にある種の真実がひそんでいる。物語 に不必要な部分を取り除いて行って、デフォルメをした時に、そこから見えてくるものがある。それがこの 映画なんだと思うな。

B/ コメディだからこそできることでもあるのよね。それにこの映画は冒頭で「これはおとぎ話です」って断っ てもいるし。青年が子供の自分に母親から聞いた、父親にまつわる昔話。子供時代にかすかに残る記憶と、 母親の暖かいオブラートに包まれた、昔話ってことになっている。

J/ 人間愛にあふれるこのタッチ。これはまさにイタリア映画の伝統なんだろうね。

B/ 窮地に陥ったとき、英国人なら、そんな自分を笑ってなぐさめる。日本人なら、忍耐、辛抱、精神論で 乗り切ろうとする。イタリア人は、その持ち前の楽天家の精神でといったところかしらね。

B/ 人間誰しも、思うようにいかない時、何かにすり替えてストレスから自分を守ろうとするものだけれど、そ の極致がこの映画。子供に事実を隠すための数々の言葉はまるでマジックのよう。

J/ 僕も病院に入院していた時に、そういうことしてたんだよ。ちょうど世間は夏休み。そんな中病院で過ごす のが悔しくてしょうがない。それでこう思うことにしたんだ。目を閉じてみよう。ここはヨーロッパの避暑 地。僕は今1ヶ月のバカンスに来ているんだ。空には暑い日差し。そこをそよ風が通りぬけて…。毎日日光 浴する病院の屋上のベンチが海辺に変わってたんだ。でもこれで、随分と救われた感じがしたものだよ。も っとも映画のあの状況下では、そんなことできるとは思えないけれど。

B/ 時に空想に逃げ込むことも大切なのかもしれないわね。映画というメデイア自体もそうした性質のもののひ とつだけれどもね。

J/ 残虐な行為をするのも人間。だけれど、人間にはさまざまな可能性があることをこの映画は教えてくれるん だな。

B/ 勇気の湧いてくる映画ね。

J/ この映画の冒頭、豪華な車を借りて、田舎から都会へと新たな人生を求めてやってくる若者二人。 どうしたことか、車のブレーキが壊れ、坂道をころげ落ちる。やっと道路に出て見れば、そこはなにやら 外国の大使を迎える歓迎の人の群れ。そこを車は突っ込んで行く。「あっ、危ない離れて、離れて」 腕まで振りまわし、必死に人を脇にそらせようとする。その様子がちょうど、歓迎にこたえて挨拶をする 風に見えたから、群集は勘違い。「ばんざーい、ばんざーい」国旗の小旗はにぎやかに震える。これいいね。

B/ 皮肉に溢れていて、どこかチャップリンの映画を思わせるわね。

J/ 『モダンタイムス』で偶然トラックから、工事用の赤旗が落ちたのを目撃したチャップリンが、それを拾っ てトラックを追っかけて行くと、後ろにデモの群集がくっついて行進していくってやつ(笑)

B/ もちろん、チャップリンだけじゃなくて、全編いろいろなかつてのハリウッドの数々のコメディの遺産がこ の映画にはあるのよ。コメディの王道をいってるとも言えるわね。

J/ おしゃべりで調子のいい主人公が窮地に陥ったとき、俄然勇気が湧いてくる。自分のためじゃなくて愛する 家族のために。身の危険も顧みず、彼らをなんとか助けよう、安心させようって。その辺もいつも愛する者 のために、一生懸命働いていた、放浪紳士チャーリーと通じるところがあるかもね。

B/ ストーリーの語り口がとってもいい。気が利いていて、なおかつ優しい、優しい映画。私はこういう映画を 観たいのよね。

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