J/
『ハムナプトラ2』は、すごかったねー。息つく暇もないっていうのはこのことだね。連続大活劇!
B/
いやー、私はくたびれ果てちゃったわよ。ホッとする場面がひとつもないんだもの。
J/
この映画決して話は面白くないんだよね。ただ、2時間ちょっと常に目と耳を刺激しまくるって感じなんだよね。映画というより、アトラク
ションに近い。
B/
大体、大英博物館の館長が、なぜイムホテップ(エジプトのミイラ)を復活させようとしているのか、まったく説明がない。復活したイムホ
テップがなぜ世界を自分のものにしようとするのか、これもよくわからない。ストーリーに目的がない。プンプン!
J/
まあ深く考えてはダメなんだよこの映画は。それを考える暇を与えないためにこそ、次から次へと危険が身にせまってくるのだから。
B/
でもねえ、コンピュータ・グラフィックス至上主義みたいな映画じたいが私としは気に入らない。立回りのシーンにしたって、テンポが
早いだけで、肉体と肉体がぶつかりあっているような興奮がないじゃない。私は同じ観るならジェット・リーのアクションのほうが爽快
な気分になってくる。例えワイヤー・ワークを使っていたとしても、そこには生身の身体の実感があるから。
J/
まあ、比較の対象が最高のものとだからとツライものがあるけれどね。
B/
映画というより、まるでゲームを見ているみたいな気分なのね。
J/
『マトリックス』からそういう感覚の映画が確かに増えてきているような気がするね。『マトリックス』自体は仮想空間みたいなところを
舞台にしているから、それが効果的なのだけれど、そうじゃない映画まで同じ線をいっているような傾向がある。
B/
私はね、この映画ってA級映画ではないと思うの。昔で言えば完全にBだと。ただ特撮の進歩によって、本来B級のはずの映画が、A級に
見えるところまできてしまっているような気がするの。昔だったら、この程度の話の映画だったら、一部のマニアに受けてお仕舞いのレベ
ルなのじゃないかしら。
J/
ただ昔のBって大体がかったるくて、退屈さを覚えたものなんだけれどね。その退屈さを乗り越えてこそ、笑いが発見でき、また特撮の楽
しさも見えてくるみたいな密かな喜びあって。ところが、この映画はまったく退屈している暇さえない。そこがまったく違うところ。だから
こそ、一部の人の楽しみではなくなっているのかもね。
B/
本来映画は娯楽だから退屈しないというのは、大成功のはずだと思うのね。でもそれでいいいのかしら。俳優が大切でもない、ストーリーもい
い加減でもいい。SFXとスリルさえあれば、いい映画になるってことになると、今までの映画の常識が覆ってしまうことになる。「まず
何よりもプロットが大切です。いい脚本からいい映画は生まれますが、悪い脚本からいい映画は生まれません」ってやつ。でもいまどき
こんなことを言っている私は古いのかしら。最近不安になってきている。
J/
僕も最近そう思うことがある。よく年配の人が「昔の映画は良かった」なんて言うのを聞いて、決してそんなことはないのにと心の中で思
っていた自分が、今同じことを言っているのじゃないかって。けれどそんな時は自分に言い聞かせるわけ。「でも待てよ、『スナッチ』だ
って好きだし、『ラン・ローラ・ラン』も刺激的だったし、若者に受けていた『バッファロー66』だってものすごく楽しめて、新しい刺
激というのも求めている自分がそんなはずはない」と。
B/
もうそういう発想をすること自体が充分おじさんだけれど(笑)
J/
でも今思うと『バッファロー66』は話自体はとてもクラシックだったりするし、『スナッチ』なんていうのも、ヒッチコックおじさんに
も通じる英国風のブラックな笑いが基本になっていたりして、表現は新しくても、しっかり映画の歴史の上に立った映画なんだよね。『ハ
ムナプトラ』みたいな映画は、もう完全にそれからはずれてきた映画という気もする。だからついていけない(汗!汗!汗!)
B/
でもこの映画のストーリーのいい加減さは、B級の王道をいっているに過ぎないわけで、伝統に乗っかっていないわけじゃないわよ。
J/
確かに!映画を観ている間、どこかで観たことがあるなという感じがしていたんだ。『シンドバット虎の目大冒険』とか。途中でミナトン
っていう、怪物が活躍もしないうちに自滅してしまうバカバカしさにとても通じている。その上、『ハムナプトラ2』のクライマックス
最後の30分なんて、シンドバッド・シリーズに瓜ふたつだった。また意識して、モンスターの動きも作っているんだよね。わざわざコン
ピュータ・グラフィクスで(笑)
B/
そういう風に観ると、この監督のノリって単なる映画オタクに他ならない。
J/
ただ、当時とは配役が違うんだね。ジョン・ウエインの息子のパット(しない)リック・ウエインが主役で、キャロライン・マンローがそ
れにからむなんて、そんないかにもBの匂いの人は使っていない。主役のふたりは一流だと思うし、脇役も渋い英国俳優なんかを持ってき
ている。だから立派な映画に見えてしまう。
B/
ハリウッドのアクション映画に関していえば、お話はBなのに、売りはAっていう作品が、SFXの技術の進歩によってますます増えてい
くのじゃないかしら。もうB級映画は大衆のものなのよ(笑)そういう風に新しいジャンルの映画と考えると、なんだか納得できてしまう。
私はこんな映画ばかり増えるのはごめんだけれど。
J/
一億総オタク化なんてのは、ゾッとするね。オタクにも楽しみを残しておいてほしい!あれっ?自分ってオタクだったっけ…
B/
この映画がいかにオタクっぽいかっていうことは、せっかく主役のふたりに子供ができたというのに、その設定にまるで目がいっていない
ことなのね。例えば、母子がいっしょに博物館を見学するとか、父と息子に同じクセがあるとか、そういうエピソードがあれば、このスピ
ード感だけで走りまくる映画の中でホっとする場面も生まれてくると思うのだけれどね。
J/
『インディ・ジョーンズ』シリーズの優れているところってまさにそこなんだよね。父親もいて、ヘンなやりとりをしていたり、気の強い
ヒロインと恋愛して翻弄されたり、話にメリハリがあった。それがこの『ハムナプトラ2』にはないんだね。監督が観客にお構いなく、自
分の好きなことだけをやって突っ走っているという感じがする。
B/
でもこの映画の究極のバカバカしさは…(笑がこみ上げてくる)
J/
あっ、それはこれから観る人には悪いよ。まぁいいかっ、言っちゃえ。言っちゃえ。(これから観る方は、先は読まないでください)
B/
前作から引き続いてることなのだけれど、イムホテップがエジプト王のお妃になる女性と不倫をして、王に反逆してしまったことから、処
刑されるということが、この事件の発端になっている。数千年の時を超えてこの愛を成就するために、彼がミイラとして甦ってきたことか
ら、色々な災厄がおこる。これが基本のプロットになっているのね。
J/
ずいぶんロマンチックな話なんだよね。しかも今回は、主役ふたりの前世まで明らかになって、さらに宿命の度合いを強めているからね。
B/
ところが、その愛が、単なる気まぐれ程度のものであったことが今回明らかになってしまう。地獄の底に飲みこまれそうなリックをエブリ
ンは身を呈して救け出すのだけれど、アナクスナムン姫は、なんとイムホテップを見殺しにして自分だけ逃げてしまう。イムホテップがあま
りにも哀れでウー。
J/
あの凶悪なイムホテップが目に涙をいっぱいためてね。(笑)アナクスナムン姫はひとりで逃げたのだけれど、結局スカラベ(ゴキブリみた
いな虫)に食べられてしまう。(笑)それにしても今回のイムホテップって可愛そうすぎたよね。特殊能力さえ失って、逃げ惑うばかり。河
を氾濫させるのと、人を3人殺す以外に何も悪いことはしていない。何のために出てきたのかよくわからない。一応タイトル・ロールのは
ずなのに。(原題は『THE MUMMY RETURNS 』)
B/
もっと可哀想なのが私たち。え、この程度の愛のために彼は人様にこんなに迷惑をかけていたのかって。散々ひっぱられてこの結末は…。
永遠を誓った愛があればこその、悪事の数々ではなかったのか…なんか裏切られたような気がする。
J/
はははっ、笑い事じゃすまないよね。愛するがゆえに悪霊になってまでも恋人の復活を果そうとしていたのではなかったのか。裏切られて
絶望して、みずから命を絶ってしまうなんて。
B/
あんた何人の命を奪っていると思うの!しかも3回も自分の命を粗末にして!って言ってやりたいわね。情けないわねー。(笑)『素晴らしき
哉!人生』でも見せてやろうか。
J/
いやー、己のやったことを振りかえったら、もっと絶望すると思うよ(笑)いずれにしても、この映画こんな風にB級のノリで楽しむ分には
いいと思う。ヘンなもの観ちゃったゾ的な楽しみ方でね。でも若い映画ファンに「これこそ映画!これこそヒーロー!」なんてマジに言わ
れちゃうと、映画界の先行きに不安を感じてしまう。映画ってこんなものじゃないのだけれどって言いたくなることは事実。だから敢えて
★はふたつ。
B/
やっぱり映画はお話から…私はSFXにはだまされないわよ。
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