134. おっぱいパブ (2005/8/8)


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今回は風俗初体験のレポートである。

おっぱいパブというところに同僚と行った。その日は先輩Yのお別れ会で、ダラダラと半ば確信的に終電逃すような飲み方をし、ブラブラと新宿の街を歩いているときに、一番先輩だったTさんが行こうと言い出した。

私はこれまで、風俗の入り口であるキャバクラにすら行ったことが無かった。聞いてみればそんなに大したレベルではない風俗だというから、いい機会なので一度連れて行ってもらおうと思った。

そこそこ酔っていたので場所をあまり覚えていないのだが、いわゆるしょんべん横丁と呼ばれるところを通って行った覚えがある。たくさん店があったが、店は決まっていたようだった。入り口で先輩Tが呼び込みの人と交渉を始めた。時間は午前一時ぐらいだっただろうか。看板に書かれていた料金が一時間八千円だったが、そこをTさんは六千円にまで値切ろうとしていた。さすがに厳しいだろうと思いつつ様子を見ていると、呼び込みの人も七千円まではあっさり値切ったが、それ以降は渋っているなあと思ったら、Tさんはなんと強引に六千円でねじ込んでしまった。なんと全員分おごってくれるとのこと。

狭い入り口を入ると、時間待ちのためのカウンターと椅子が並んでいた。一時間ぐらい待たされるという。とはいってもカウンターでビールやサワー系の飲み物を自由に注文できる。もうアルコールはいいやと思いながらも、ヒマなので飲みながら雑談しているしかない。店内はエイトビート系のテクノ音楽が大音量で掛かっている。列の先にカーテンがあり、その先が見えないようになっている。従業員に、えなりかずきに似た人がいて、うちら以外の馴れ馴れしい客連中を相手にニコニコしながら応対していた。

さきほどまでの送別会の主賓であった先輩Yは、おっぱい大好きでテンションが結構あがっていた。なにせこの人は、お客さんとの飲み会でやはり風俗大好きの取引先Sさんと風俗の話で大盛り上がりしていた人だ。その話の中で、出張先で行ったおっぱいパブで掛かっていた音楽が面白かったからと、その歌を「おっぱいもんで〜♪おっぱいもんで〜♪もんで〜もんで〜♪」と歌うものだから、周りみな爆笑で聞いていた。

この日もYさんは、私たちのちょうど前に並んでいた客が馴れ馴れしく話しかけてきたので、同じような調子で合わせてハイテンションで会話し始めた。なんか出身が近いとかでローカルな話題に花を咲かせていて、私たちはそれを延々聞いていた。まったく、今日を限りにお別れなのに、一体どういう人なんだと半ば呆れて見ていた。こんな人でも、業界では有名な外資系に転職したのだからびっくりだ。

あと一人か二人で私たちの番がまわってくるというくらいになってからが長かった。かれこれ一時間くらいが過ぎたとき、私たちの中で先頭だったYさんだけまず番がまわってきた。場所が近いといいねと行って見送ったあとで、さらに時間が過ぎていくのであった。そのうちに従業員が頭を下げてやってきて、延長取りすぎて今晩はもうここでは時間がないので系列店に行ってもらえないかと言ってきた。案内もしてくれるというので、仕方なくついていくことにした。Yさんにはあとでこのことを伝えてくれるよう店の人に頼んだ。

酔いがちょっと冷めかけていたとはいえ、まだアルコールが回っている頭で、店の人の案内についていって何度か角を曲がって店についた。今度の店はお寿司屋さんらしい。ここは女の子の源氏名がスシネタになっているというわけだ。制服もハッピみたいな感じ。胸のところに大きく名札が張ってある。ちなみにスシネタは女の子の回転があるためか枯渇していたみたいで、食べ物ならなんでもいいやみたいなヤケクソ感のある名前が多かった。ちなみに最初に行った店は温泉がテーマで、各地の湯どころの名前がついているとのこと。

今度は待たされずにすぐに入れた。店内は暗く、ブラックライトの証明がついていた。壁際にソファーがグルグルと隙間無く置かれていて、そのソファーに一つおきに客が座るようになっている。正面にアルコール類や氷のセットの載ったテーブルがあり、勝手に作ったり作ってもらったりできる。私たちは先輩Tと後輩Wと私の三人になっていて、その順序で座った。一人ずつにまず女の子がつく。

私に最初についた人は、ちょっと切れ目でショートヘアの落ち着いた雰囲気の人だった。私の左隣に座るや否や、すっと自分の脚を私の脚に寄せてきて、挨拶をした。もうこの所作に私はやられた。暖かくやわらかい感触だった。最初の会話は、私の連れである先輩Tを知っているという。よく来ていたのだそうだ。それから何を話したかあまり覚えていない。酔った頭でロクに考えが浮かばない。取り合えず手をつないで欲しいと言ってつないでもらった。おっぱいを触れる場所で手をつないでくれというのはどんなものなのか知らないが、もうそれだけでいい感じだった。

なぜか私は、よせばいいのに「手を見れば歳が分かる」とか言い出し、手をじっと見て24歳だろうと言った。当たりだと言っていたが、商売なのでとりあえずそう言っただけの可能性が高い。ただ、あとで先輩Tさんと話したときに、こういう場所の女の子は大体二十歳が多いのだけど、あいつはちょっと歳食ってる、頭いいから話していて面白い、と言っていた。この日は結局Tさんは彼女を指名してずっと話していた。

でそれが数分あったあと、音楽がイケイケ風のノリになり、ミラーボールの光が踊りだし、店のモードが変わった。彼女が着ていたハッピをはだけて腰のあたりまで下ろして上半身裸になり、私の膝に正面からまたがってきた。私は抱きついて感触を楽しんだ。スーツ着たまま裸の女性を抱きしめた状態になっている。おっぱいも一応触った気がするが覚えていない。二三分ぐらいして音楽が元に戻ると、店の名前の回転寿司のとおりに、時計回りに女の子がズレていった。

次の女の子は…このへんから順序をよく覚えていないので間違えているかもしれないが、小柄で浜崎メイクな人がきた。いきなりトイレに行きたいので行っていいかと許可を求めてきた。構わないと言うと彼女は席をはずし、私は一人になった。隣では先輩Tと後輩Wがそれぞれ自分の世界に入って女の子となにか話している。私が声を掛けてみても何の返事もなし。こういうとき、風俗初心者の私を何かいじるようなことを言ってくれてもいいもんだと思った。暇なので前の人に作ってもらったウィスキーを飲みながら様子を見ていた。特に変わったことをしている風でもないようだった。

確か私の記憶によると、三人の女の子と会話したのだと思う。記憶がごっちゃなのでここからは区別せずに語る。暗がりの中では少なくとも三人ともそこそこかわいかった。

おっぱいをもませるパブといっても、派手な音楽のモードになるまでは体が密着したキャバクラと変わりなかった。といってもこれを書いている時点で私はキャバクラに行ったことがないので分からない。キャバクラというのは話に聞くところによると、高い店は黙っていても女性のほうから話を盛り上げてくれるそうだが、安い店だと男が話を振らないとモテないのだそうだ。そのときの私はそこまでは考えなかったが、酔った頭で何か話を振れないかと考えていた。

女の子はそれぞれ小さなバッグを持っていて、仕事中も身だしなみなどのためかそれを携帯していた。ちょうど彼女がバッグを広げたので、中を見せてもらう流れになった。これはいま冷静に考えると定番の流れなのかも。どんなものが入っていたのかよく覚えていないが、そこから安室奈美江の話になった。彼女は安室奈美江の大ファンらしい。よくコンサートにいっているそうだ。生き方から共感できるという。

名刺もバッグに入っていたので一枚もらった。そこにはホームページのURLが書かれていた。誰も書き込んでくれないとこぼしていた。後日そのURLを見てみたら、絵日記のサイトだった。携帯で撮ったと思われる写真と、短めの文章がついていた。多くは私生活のことが書かれていたが、堂々と職場のことも書いてあるのに驚いた。何かコメントしようと思って方法を調べてみたけど、書き込みをすることは出来ないみたいだった。多分彼女は勘違いしているのだろう。もうそのサイトは閉鎖されていて見ることが出来ない。多分どこか違う場所に乗り換えたのだろう。探してみたいが、ちょっと探した限りでは見つからなかった。残念。

いけいけモードになってから、今度は背中をなでたり肩や頬を触ったり、鼻と鼻をくっつけてみたり、色々やってみた。いちいちいい。背中に小さくポツポツあせもみたいなものがあったり。下半身は原則ダメで許可制なのだそうだからと、上半身を触っているうちに腹を触ると嫌がられた。気にしているのだろう。肌を触りながら「猫より感触がいい」と訳の分からないことを言ってみたら、でしょうみたいに返ってきたり。でもよく考えたら自分が猫相手にやってることを女の子にやってただけだったりして。

手をつなぐのはフォークダンスのとき以来だ、などと半分ウソを言いつつ、いいなあいいなあと繰り返し言っていたせいか、大体リードしてくれた。おっぱいをなめてもいいよ、と言われたので乳首を口に入れてみた。決まりが悪い思いがしてすぐに口を離した。うーん。私は物質としてのおっぱいにほとんど興味がないようだ。それより背中とか腕とか脚のほうがいい。性欲があるのは恥ずかしいことではないのだが、私は本当のところそんなに性欲がないのかもしれない。口と口のキスもさせてもらったが、あまり興奮しなかった。何かやり方を間違えているのかとちょっと不安になったので、こんなもんなの?と訊いてみたが、こんなもんでしょと返ってきた。

三人のほかに、いけいけモードのときだけちょっと回ってくる人が二人ぐらいいて、その人のおっぱいもさわった。ちょっと歳がいっていて、まわるだけの人なのだろう。おっぱいが大きい人がいて触ってみたのだが、おっぱいがちょっと冷たくて萎えた。

そうこうしているうちに時間がきて、閉店の時間ともなったので、最後の女の人に手を引かれて店を出た。

先輩Yと再会し、まだ始発電車まで時間があるのでカラオケ屋かどこかに行った。Yさんはおっぱいの余韻を話していた。大きいのから小さいのまで一通りあって大満足だったと言っていた。その様子は見ていてすがすがしいくらいだった。

あとで後輩Wにどうやって楽しんでいたのか訊いてみたところ、いけいけモードじゃないときに強引に女の子の胸をもんで相手が嫌がるのを見て楽しんでいたそうだ。通常時に胸を触るのは別に禁止されているわけではないようなのだが、会話して楽しむ時間に胸をもまれては調子が狂うからだろう。彼は自分がSなのだと自分で言っていた。当時24歳で既に結婚していて、自分の連れのことを「嫁にするにはいい女」と言っていた大人びた男である。この男と先輩Yが、私の入社して間もない頃に30人の製造チームのプロジェクトリーダーをやっていたという、上司から認められ好かれている男だ。

おごってくれた先輩Tとも話をした。どんな風に楽しむのかよく分からなかったけど、とても良かったと言っておいた。先輩Tは一応私のほうも見ていたみたいで、普通に楽しんでいたんじゃない、と私に言った。

さてこうして私の初風俗が終わった。

正直私は風俗というものを見直した。通常時八千円で一回でこういうサービスが受けられるというのは、そんなに悪くはないなと思ったのだ。風俗と社会というものに一応何かしらの考えを持つ私だが、後輩Wの考え方つまり結婚と遊びを分けて考えるのがいいなと思うわけだ。男というものは女に色を期待してしまうわけで、それを結婚相手に求めてしまうと互いに不幸なことになる。色はお金を払って風俗で満たすことで、冷静にパートナーを選ぶことが出来る。

とは言っても、このとき以来私は今のところ風俗には行っていない。行きたいとは思うが、そんなに欲がないのだ。どうしてなのだろう。お金はあるのに。一人だと行きづらいというのもある。あれから何人かで行こうという機会もなかった。ただ、本当に行きたければひとりでも行っているだろう。いまでも時々このときのことを思い出すことがある。いい思い出だ。HなDVDは何本も買っているが、こういう店にはあれから一度も行っていない。

風俗とサラリーマンは男をしゃかりきに働かせるシステムなのだという人がいる。説得力のある話だ。しかしそれは一部の人だけだろう。少なくとも私の身の回りには、風俗に通いたいから必死で働くという人はいない。忙しくてもいいから稼ぎたいという人は、そういうところに行きたいからなのだろうか。私も、何かの拍子にそうなる可能性は十分にあると思う。

社会的な環境によるところが大きいのだろう。前の会社には、遊び人風の先輩が、ピンサロに行ったことがない、と言っているのを聞いたことがある。ピンサロとはピンクサロンの略で、いわゆるBしてもらえる店のことだ。おっぱいパブより一歩進んでいる。キャバクラには割と行っていたらしいが、ピンサロにはまだ手を出していないと言っていたのだ。その上にさらにCしてもらえるソープと呼ばれる店がある。今の会社ではあんまり詳しい話は聞いていないが、前の会社よりも遊んでいる会社だ。しかしそれでもまだ今の会社は真面目な会社なのだと、元営業の先輩Fさんは言う。

今回紹介した店は、先輩Tに言わせれば優良店なのだそうだ。安くて質が高い。だから混んでいたのだろう。先輩Tがまた別の日に風俗に行ったときの話を一回だけ聞かせてもらったのだが、知らない店に適当に入ったらサッパリだったそうだ。外人が仕切っていてボラれるだけで終わることもあるとのこと。もしこれを読んで風俗に行ってみたいという人がいたら、それなりに知識があり信頼できる人に連れて行ってもらうことをお勧めする。また、同じ店でも日によって女の子や料金や混み具合や雰囲気が異なるそうなので注意。


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gomi@din.or.jp