2010年2月17日 鋼鉄のサラリーマン
戦慄!静寂に響く足音
とある新年会の帰り道のことでございます。
その晩、私は普段とは違う駅で電車待ちをしておりました。
中途半端な時間も手伝って、ホームに私以外の人気はありませんでした。
そうしてしばらくすると、
カツン・・・コツン・・・
と、背後から足音が響いて参りました。
振り向くと、薄暗いホームを黒い帽子に黒いコート、黒いブーツと黒ずくめの女性が私の方へ歩いてくるところでした。
うつむき加減の上に帽子も手伝い、顔もよく見えませんでした。
その女性は私に一直線に向かって来ました。
カツン・・・コツン・・・
ヒールが床を打つ音が、夜の静寂によく響いておりました。
やがて、飛びかかるのにちょうどよい間合いを取り、女性は足を止めました。
私はというと、身の危険を感じてカバンを盾に身構えておりました。
そして、女性は懐に手を入れ、キチキチ・・・という音とともに、黒いワイヤーを引き出しました。
両手の間でピンと張られたワイヤーを見て、「殺されるのか?」と思った私を、誰が責められるでしょうか?
だが、私の心配は杞憂に終わりました。
黒ずくめの女性は、ワイヤーの先を自分の両耳に入れたからです。
そう、ワイヤーの正体はイヤホンのコードでした。
やがて女性は何事もなかったかのように、私の前を素通りして行きました。
愉快犯か、単なる偶然かは判りませんが・・・
他人迷惑だけでなく、不必要な恐怖を感じさせてはならないと思った事件でございました。
− 1899 −