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出陣!たまには信じよう

2002年12月6日  FOX−兄貴


私は現在、チームリーダーという職に就いています。
自分で電話を取って応対することはなく、自分のチームに所属しているサポーターの支援、指示、管理を行っています。

たまにお客様と直接話す機会があるとすれば、クレームとか苦情とか問題のあるユーザだったりとか。
よりいっそう、胃によろしくない状態になっております。


さて、そんなある日のこと。
いつものように雑務処理をしていたところ・・・

ウチのチームの新人が、イエローカードを出しました。


イエローカードとは、その名の通り黄色い蛍光色の紙で、

「なんかやばそうな雰囲気です」

というときに、出します。
これを見たリーダーは、速やかに盗聴を開始し、状況を把握します。

ちなみにレッドカードもあります。
これは、お客様から上の者を要求されたなど、すぐに交代しないとマズい場合に出します。


私はすぐに、盗聴に入りました。

「だから、なんでこんなにすぐに壊れるんだよ!」
「はぁ・・・」

故障のクレームらしい。

盗聴と筆談の結果、

・購入して3年のノートパソコンの液晶が壊れた
・特別保証などに入っていない(通常の保証期間は1年)
・お客様は、会社の上の人間にすぐ直すように言われた
・有償になると伝えたところで態度が豹変した
・要望としては
「無償で直せ! 今すぐ来い!」

ということが分かりました。
典型的といえば典型的なクレームです。


しばらく有償無償の押し問答が続いたあと、

「上司に代われ!」

ということになり、いよいよ出番と相成りました。

しかし、代わったものの、お客様の主張は今まで通り。こちらの回答も今まで通り。
どんどんお客様の口調はガラが悪くなり、

「お前、オレの上どんな人間か分かってんのか?」
「街を歩けなくなるぞ?」


さらに、

「オレが指を詰められたら直してくれんのか?」

など、暗に(というかはっきりと)一般の職ではないということを言い出しました。

まー、こういうこともよくあります。
株主を名乗ったりヤ○ザを名乗ったり。これも典型的なクレームでして。

どうせはったりでしょうから、適当にあしらって話を進めていきました。


お客様との交渉の末、今すぐに人を向かわすことは不可能であること、有償になることを説明。
その結果、お客様も疲れたのか、

「今すぐが無理ならいつ来るんだ」
「それは修理担当に確認してないと断言できません。折り返しお電話にしてもよろしいですか?」
「分かった。10分以内に電話をよこせ」

ということに。

ちなみにこの時点で修理担当と連絡を取っていて、明日なら可能であることを確認していました。
しかし、こういう場合には、一度落ち着かせるため、また所在をはっきり確認させるため、折り返しにします。

折り返しまでの10分間、他の人と談笑。

「指を詰められたらどうするんだとか言われたよ」
「わはは、そりゃ大変だ。修理じゃ治らないですね」
「でも、本物のヤ○ザだったら笑えますな」
「んなことあるわけないじゃん」


そして10分後。
折り返しの電話をしました。

トゥルルルルル ガチャッ


「××組」(野太い声で)


・・・・・。
えーっと。


「私、○○サポートセンターの△△と申しますが・・・」
「おぅ、ちょっと待て」

「おい! さっきのヤツから電話!」


・・・・・(硬直中)


「ああ、さっきのな、上の人間が『もう捨てちまえ』ってよ。もういいわ」
「・・・左様でございますか」

冷静に冷静に回答。
しかし電話の向こうでは、

「捨てちまえ捨てちまえ! こんなもん!」

という怒鳴り声が聞こえたりとか・・・


早急に電話を切った方がよい。
本能でそう判断した私でしたが、そう思うよりも早く、あちらが電話をお切りになりました。

すぐさま、全リーダー、全社内窓口にメールです。
物別れであり、しかも危険な香りのするユーザーですので、注意を促す必要があります。

っつーか・・・まさか本物だったとは思わなかったですわよ。


たまにはお客様の言うことも信じよう。
そう思った新人リーダーでありました。

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