薄暗い とある狭い部屋・・

 

暗くても その部屋からは 乱雑で 怪しい雰囲気が プンプンと 漂ってくる。

そこかしこに 見るからに怪しげな ものが・・

 

何の薬品かは解らないが、なにやら錠剤が入ったビン・・

緑色の液体が入ったビーカー・・

白い煙が 絶え間無く もくもくと 湧き出ている 試験管・・

「キシャアアアアアアア! キシャアアアアア!!」

聞いたことも無いような 恐ろしい声で 叫び続ける 実験用のねずみ

山のように積まれた 何やら難しそうな 専門書の数々・・

 

それらのなかに 埋もれるようにして 作業に没頭する 一人の女性

「 ふふ・・・ふふふ・・」

時おり、 耐え切れなくなったかのように 含み笑いをこぼしながら 研究を進めるその姿は

まさに 『 異様 』としか 言いようが無い。

 

やがて 彼女は 小さな 小さな 米つぶ くらいの 機械を作り出した。

その中に 手に持った、 バッテリーらしき ものを 組み込み始めた。

「・・・ふふ・・・うふふふふふふ・・」

・・カチャカチャカチャカチャ・・・・

なにが そんなに うれしいのか? 金髪の女性は 薄気味悪い笑い声を もらしながら、

作業に 没頭する。

すると、 どうだろう?

しだいに その機械は まるで、 小さな 小さな クモのような カタチになった。

 

「う・・うふふふふ・・・・できた・・・できたわよ・・・ついに!!!」

 

抱きしめずには いられない :前編


 

赤木リツコは そのマシンを いとおしそうに、手に乗せて ゆらりと 立ち上がった。

電気スタンドの 明かりが 彼女の顔を照らした。

何日徹夜したのか 解らないような 疲労と睡眠不足による 憔悴しきった その顔・・

しかし 彼女の目は生気にあふれ、 ギラギラと 異様な気迫に満ちている。

 

「 うふ・・・うふふふふ・・これで・・・これで あの人は 私のもの・・私のものに・・」

ぶつぶつと なにやら 呟きながら 彼女は 部屋の中を歩きまわり、

部屋の中央に 歩みを進めた。

「後は・・ 命令 カギとなる音 を考えるだけね・・・

まず・・カギとなる音 は・・・

そうね・・・

指を鳴らす 音にでもすればいいわ・・わかりにくいしね・・・ふふ・・

そして、 命令は・・・っと・・・」

 

もわわわわわああああああ <−妄想モード開始の音

「 司令、ここの実験結果 なんですが・・」

「ん?・・・なんだ?・・・赤木博士?」

パチン!

「?・・・なんだね?指など鳴らして・・お・・おおおお!!!ぬ!!か・・

体が 勝手に!!うおおお!!」

「きゃっ!し!司令!そんな!こんな公衆の面前で・・・(#^_^#)ポッ

「ああー!碇司令が リツコを熱烈に抱きしめてるうううう!!!

「い・・いや・・これは違う!・・葛城三佐!」

「な!ほんとだ!司令が 赤木博士を!!」

「か・・体が勝手に・・・うう!!や・やめてくれ!違うんだ!」

「おーい! みんな!見てみろよ!!凄いぞ!!」

「センパイ・・・・不潔・・・」

(ふっふっふっ・・人目が 集まってきたわね・・ようし!)

「ああ!司令!こんなことになってしまって!もう 私の人生はメチャメチャだわ!!

責任とって結婚してください!

「なっ!なにを言い出すんだ!」

「そうよ!碇司令!責任とってあげなさいよ!リツコももう 若くないんだし!」

「そうだな・・碇・・そろそろ お前も 身を落ち着かせる時期だな・・」

「ふ・・冬月!! 貴様!!よけいなことを!」

「おめでとう ございます!司令、赤城博士!」

「おめでとーっす!リツコさん」

「ああ!ありがとう!日向君 青葉君!」

「や!やめろ!これは 違うんだ!罠なんだ!!」

「またまたー 恥ずかしがっちゃって 碇司令も 純情なのねぇー」

「ふふ・・そうね、ミサト・・純情なんですもんね・・あ・な・た!

「がああ!そ・・そうか!赤木博士!この私の体になにかしたんだな!」

「あーら、 なんのことやらわからんちん♪」

「ひ・・卑怯だぞ!!」

「さー ちゃっちゃと 式場の手配よ!あ、シンちゃん!いいところに!お父さんの再婚が決まったわよ!」

「・・・とうさん!・・・おめでとう・・・」

「シンジ!違う!助けてくれ!!」

「シンちゃーん 妹か弟が できるの 楽しみねぇー」

「はい!ミサトさん」

「恥ずかしいこと 言わないでよー ミサト!でも・・・がんばりましょうね!あ・な・た!

「ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

−−−−−−−−−妄想モード終了−−−−−−−−−−−

「 うふ・・・うふふふふふふふ・・・・・・・これよ!!これだわ!!!」

手の中のマシンを見ながら 、恍惚とした表情を浮かべていた リツコは

歓喜の声を あげた。

「 相手の首筋に 装着し、 神経を あやつることにより、決まった音に対して 、決まった命令を実行させる!

完璧だわ!!天才だわ!!私は!!」

 

どうやら、 この 謎のマシンを だれかの 首筋に 装着 させ、 カギとなる音をその人に

聞かせると、 決まった命令・・たとえば 『指を鳴らした人を抱き締める』 みたいな行動を

強制的にとらせることが できる・・・・・と言う、 まことに恐ろしい機械のようである。

あわれ、 ひげメガネ・・(T_T)

 

「 命令は・・・熱烈に 抱き締める で いいわね・・・」

マシンに 接続された キーボードから リツコは 行動のデータをカチャカチャと 入力 した

「さて・・・次は・・・カギとなる 音・・・指を鳴らす 音を入力しないと」

そう 言いながら、 リツコは その機械に マイクを 接続した。

「さぁ・・・いくわよ・・・」

いくらか 緊張した おももちの 彼女は マイクの前で、 指を構えた。

「せーのっ!!」

と、 その 瞬間!

プシュー!!

リツコの研究室のドアが開き 書類の束を持った 伊吹マヤが 入ってきた。

「センパーイ! ちょつと 実験の結果で わからない ところふぁ・・・ふぁ・・・ふあ・・ふあ ふあっくしょん!」

パチン!

「うう・・すみません、ちょっと風邪ぎみで・・・ずず・・・あれ?センパイ? なにしてるんですか?」

「な・・ なんでも ないわよ、 なんでも、 気にしないで マヤ!」

とっさに マイクから マシンを取り外し、 リツコは それを 手の中に隠した。

「でも・・・その マイク・・・なんですか?」

「え!? はは・・いーのよ いーのよ 、気にしないで!!さ、 行きましょう!」

「あ・・センパイ・・押さないでくださいよ!」

プシュー!!

( み・・見られなかったわね・・・多分・・・でも・・

いちお 指は鳴らしたけど ちゃんと録音できたのかしら?・・・多分、大丈夫ね・・・ふふ・・・)

リツコと マヤは 第一発令所へと 歩いた。

 

「あー リツコ! 待ってたわよー 今の実験でね、ちょつと おかしいところが あるのよー」

( ふふ・・ミサト・・・日向君・・青葉君・・・副司令・・・マヤ・・その他スタッフ10数名・・証人は 十分ね・・)

かくして、 リツコの 恐怖の作戦が 始まった。

 

一通り、 通常の実験作業を やりおえると、

彼女は 実験の結果を 持って 高い場所から 様子を見下ろしている、

ゲンドウのところへと 行った。

「司令・・・今回の 実験なのですが、 やはり S2機関は・・・」

などと いいながら、 リツコは ゲンドウの机の上 に 結果の書かれた プリントを広げた。

ゲンドウが そのプリントに 気を取られ、下を向いた瞬間!

(今だ!!)

リツコは 素早い動きで、 手の中の マイクロマシンを 彼の首筋に、装着した。

ピッ

(やったぁあ! 成功よ!!成功!!気づいてないわ!)

「?・・・どうした・・・赤木博士・・・報告を続けてくれ・・」

「あ、 はい 失礼しました。 それで ですね、・・・」

( ふふふ・・・いくわよ・・・碇司令・・・・いえ・・・あ・な・た!)

パチン!

(さぁ!!抱き締めなさい!ここで !この 私を!熱烈に!!)

・・・・・・・

・・・・

・・

「どうした?・・・赤木君・・・・指など鳴らして・・・まじめに 報告してくれ・・・」

(あ・・・・あれ?・・・お・・・・おかしいわねぇ・・・も、 もう一度!)

パチン!

「赤木博士・・・・ふざけているのか・・・?・・」

「あ・・・あははは・・・いえ、 なんでもないんですけどね・・・」

(お・・おかしいわ!!ちゃんと指を鳴らす音を入力したのに!)

「・・・・報告を続けろ・・・・・・」

「は・・はい!」

(まさか・・・失敗!?この 私が!!そんな!?)

一通り、報告を終えた リツコは、しょんぼりと、オペレーターたちの場所に戻った。

(はぁ・・・そんな・・完璧だったはずなのに・・・・)

と−−−−−− その時、

「クション!・・・・ずず・・・・」

「あれ?マヤちゃん、 風邪?」

「あ・・葛城 さん・・・・そうなんですよぉ・・・昨日、ちょっと 寝冷えしちゃったみたいでぇ・・」

「そうなのー、・・・実は あたしん家の アスカも 風邪ひいてるのよ 早く帰って 休んだ方がいいわ、」

「あ・・・アスカも風邪を??・・・それで 今日はシンジくんしか 来てないんですね・・・・え!?・・・

えええ! きっ・・・きゃああああああああああああああああ!!!

「碇司令!!なにを!?」

ミサトの 目も前には、 ゲンドウに抱き締められる、 あわれな マヤ嬢の姿が!!

「い・・いや・・・なぜか 体が 勝手にだな・・・・」

「いやああああああ!!汚いいいい!!!センパイいいいいいい!!たすけてーーー!!!」

「こ・・こら!大きな声を出さないでくれ!伊吹くん!」

「マ・・マヤ!!」

「碇司令!彼女を放してあげてください!」

「ち・・・違うんだ!葛城三佐!!体が勝手にだな!」

「いやあああああああ!!!犯されるうううう!!!」

「な・・・伊吹君、誤解を招く発言をだな!」

「司令!が!マヤちゃんを!!おーい! みんなぁー!!凄いぞ!!」

「碇・・・そういうのを セクハラ と 呼ぶのだぞ・・」

「ふ・・冬月!!貴様!!のんきなことを いってないで」

「いやー!!せくはらああああああああああ!!」

「伊吹くん!違うんだ!とにかく違うんだ!」

「せーくーはーらーああああ!!」

 

(こ・・・これは・・・どういう事!?・・・・まさか!!)

阿鼻叫喚の現場を前に、 リツコは 脳味噌をフル回転させた。

(そうだ・・・ 私が カギとなる音を 録音した時・・マヤが部屋に入ってきて、確かクシャミをした・・・

あの音が 私の指を鳴らす音を 掻き消していたとしたら・・・ああ!!

クシャミが きっかけの音になってしまったんだわ!!

 

リツコが 事の真相を 突き止めている間に、 事態は 悪い方へと転がり続けていた。

「 あ!!レイ!!いいところにきたわね!今 凄いことが!」

「けだものおおおおおお!!!」

「レ・・レイ!!お前なら わかってくれるだろう!助けてくれ!!」

発令所に あらわれた レイは 依然として マヤを抱いているゲンドウ・・

叫び声を 上げ続ける マヤ

無責任に 事態を盛り上げ続ける ミサト

そのまわりを 何十にも取り囲む 野次馬を 一瞥すると、

 

 

「・・・・・・・・・・・・・フッ・・・・・・・・・・」

 

 

 

「レイイイイイイイイイイ!!待ってくれえええ!!」

あっさり 鼻で笑って、 歩いていってしまった。

 

 

 

レイは そのまま、 発令所を出ようとしたが、 一向に 騒ぎに参加しない リツコの方を見て、

立ち止まった。

 

レイの瞳が、 怪しく 光った・・・・

 

 

「 マヤちゃんを 助けろ!!」

「おおー!」

「司令のセクハラをやめさせろ!」

「おおー!」

「実は 前から気に食わなかったんだ このジジイ!!」

「おれもだー!!」

「いい機会だ やっちまえ!!」

・・・

と、

正義感だけに 燃える ネルフ男子職員&女子職員&葛城三佐&副司令&&・・・・

と、 早い話し ゲンドウとリツコ意外の その場にいた 全員による、

髭メガネ集団リ〇チ大会が しめやかに 開催された

 

「はぁ・・・・はぁ・・・・ どうやら おとなしくなった みたいだな・・」

「そうだな・・・はぁ・・・はぁ・・・」

「う・・・・うう・・・・ゲホゲホ・・・・・」

「副司令・・・ かなり キック力 あるんですね・・・知りませんでした・・」

「いやぁ・・これでも 若い頃は サッカー部だったんだよ・・・」

「そうっすかー どうりで・・・・」

「そういう 青葉君、君の左フックも かなり 強烈だったでは ないか、」

「ボクシング、好きなんすよ」

「どりゃああああ!!」

ガスッ!!

「ぐはああ!!・・し・・・死ぬ・・・死んでしまう・・・」

「葛城さん、 そのくらいに しとかないと・・死んじゃいますよ?・・」

「はぁ・・はぁ・・・いーのよ 日向君、 こーゆーのは 徹底的にやったほうがいいのよ」

「大丈夫かい?マヤちゃん・・」

「はい・・・ みなさん・・・ありがとう、 助かりました。」

「怪我は ないかい?・・」

「はい!・・・・はぁ・・気持ち悪かった・・・・寒気が ひどくなりましたよ・・・は・・は・・・ハクション!」

「う・・・うおおお・・・また 体が勝手に!!!」

「きゃあああああああ!!!」

「ああ!また マヤちゃんを!!」

「この ジジイ!!まだ 生きてたのか!!」

「碇・・・貴様!!性懲りも無く・・許可する、殺ってしまおう!みんな!!」

「おおーー!!」

「ち・・違ううううう!!」

・・・・レイが、 ゆっくりと その 血のうたげ へと 近づいてきた・・・・

(まずい!!早くあの マシンを外さないと!司令が死んでしまうわ!)

我に返った リツコも あわてて、血のロンドの 中心へと 歩みを進めた・・・

「ち・・ちょっと!通して!お願い!!」

「あ! 赤木博士も どうですか!?2〜3発、スッキリしますよ!?」

「あ・・・あたしは 遠慮しとくわ・・・」

そんなことを 言いながら、 リツコは ようやく ゲンドウの後ろへと 回り込んだ。

(えーっと・・・確か・・・この辺に・・・・・んー・・・がじゃまで よくわからないわ・・・

・・・・・・・えーっと・・・

えーっと・・・・

な・・・・

な・・・

無いわ!! この 騒ぎで 落っこちちゃったのかしら!!)

リツコは 床に はいつくばり、 あわてて 探しはじめた。

しかし−−−−−

 

 

「フッ・・・・・・・・・・」

レイは 自分の手の中の マイクロマシンに 目をやり、 わずかに微笑すると

そのまま、 発令所の地獄絵図 を背に 食堂へと 進んでいった。

 


 

「 あれ!? レイちゃん じゃないかい、 なんか食べるかい?」

食堂の おばちゃんが いつもまにか 現れた レイに声を掛けた。

「・・・・・・・・・・・」

「お昼御飯は さっき食べに来たろ? 足りなかったのかい?」

「・・・・・・コショウ・・・・・・」

「え?・・・・なんだい!?・・・・コショウ??・・・」

「・・・・・コショウ・・・・・くしゃみ・・・・」

「・・・・??・・・・よくわかんないけど、 コショウなら ほら、 そこの テーブルに あるだろ?」

「・・・・・・・・・・」

「それを 持っていきな・・・・・って・・・ もう いない・・・・・ ふぅ・・・ あいかわらず 良く解らない子だねぇ・・・」

右手に コショウ・・・

左手に マイクロマシンを 持った レイは、

廊下を 足早に 歩いた。

 

目指すは 男子 更衣室・・

 

「・・・・碇君・・・・」

 

運良く(悪く?) ちょうど 着替えを終えた シンジが

更衣室から でて、 こちらに 歩いて くるところだ。

 

バッ!!

 

素早い 動きで レイは 廊下の曲がり角に 身を潜めると、

じっと シンジが 行き過ぎるのを 息を殺して 待った。

 

コッ

コッ

コッ

コッ

コッ

コッ

コッ

コッ

コッ

 

バッ!

シンジの 後ろ姿を 見送った レイは またまた いつもからは 想像もできないような

スピードで 曲がり角から 飛び出すと、 音も無く シンジのうしろ 首筋に

マイクロマインを 取り付けた。

ピッ

「はぁ・・・・ アスカ、 風邪ひいちゃってるから、おかゆに しないと・・・ それに 早く帰ってあげないと、退屈してるだろうな・・」

シンジは まったく 気がつかない。

パッ!パパッ!!

レイは 手にした コショウビンを 自分の 鼻の場所で 豪快に 振った!!

鼻に むずむずと・・・・

 

 

 

 

「 は・・・は・・・は・・・・・くしゅん!!」

 


レイに マイクロマシンを取り付けられてしまった シンジ

彼は 彼女の 策略に はまってしまうのか!?

ぜんぜん でてこない アスカはどうなるのか!

ゲンドウは どうなったのか!?

 

次回 抱きしめずにはいられない 後編 を待て!


 

後編を読む

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