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2006/03/27

 ああもうなんでスパム投稿様におかれましてはこんな閑古鳥絶賛大合唱中サイトの掲示板にまで出没しやがってくださりますのでありましょう(答え、スクリプトだから)。いいかげんIPとかキーワードではじくのも疲れたですよ。いっそキーワード“含む”のだけ許可することにしようかしらん。コメントのなかには必ずヴェルレーヌの秋の歌を一節以上含むこと(そして上陸されて炎上する)

「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN 11/安彦良和 」(bk1)
機動戦士ガンダムTHE ORIGIN 11 去年の暮れに出たやつですが。
 しかしこの巻、表紙の画像見てもらえればあらすじなんて書く必要ないですね。シャアとガルマの士官学校時代のエピソード、ついでにモビルスーツ開発前史。こういう物語性のある一枚絵ってのはいいなあ。安彦的彩色ももはや鉄板。
 で、物語ですが、士官学校生徒をたきつける青年シャアの悪辣っぷりがたいそうよろしい。10巻の感想でも書いたけど、前史っていうか外伝な過去編の方が物語自体の面白さがあるですよ。映像分をなぞるより自由度があるから描いてる方のノリも違うんじゃないかなー。青年将校の蹶起とそれを利用しようとするギレン・ザビ。この架空史の盛り上がりっぷりがですね、どうしても昭和前期を描いた「虹色のトロツキー」とか日清戦争あたりの「王道の狗」なんかとかぶるのデス。
「王道の狗 1/安彦良和 」(bk1)
「王道の狗 2/安彦良和 」(bk1)
「王道の狗 3/安彦良和 」(bk1)
「王道の狗 4/安彦良和 」(bk1)
王道の狗 1王道の狗 2王道の狗 3王道の狗 4 というわけでちと古いコレを読み直してみたりしてたのです。(でもなんで3巻だけ書影ないの?>bk1)
 明治から大正期を背景に架空の人物配置した歴史物。つーかもう全編これ安彦節全開ですのよ。破れ続ける敗者の歴史。始まりはアイヌと和人の軋轢。主人公の加納と風間は和人なんだけど労役から脱走したときアイヌに化け、ここからもう敗者の立場。そもそも北海道で働かされてたのも天誅党だの大阪事件だの、自由民権を題目にした一種の内戦の捕虜として。そこから内地へ帰るときに二人の立場は分かれて、権力者に接近する道を選んだ風間と、王道を行く一匹の狗と覚悟を決めた加納。当然、物語の焦点は加納の方で、彼を接点に多士済々な人物が登場。朝鮮開国派で日本に亡命した金玉均とか、非両班で東学党の乱のリーダーだった全琫準だとか、若き孫文だとか、もう東洋革命家列伝。うひー。
 ただ残念なことにラストは急ぎ足。これからってときに掲載誌が休刊(廃刊)しちゃったんですよねー。4巻にまとまられた新版では追加分もありますが、やっぱし日清戦争開戦後はばたばたしちゃってて伏線も消化不良。王道と覇道とに袂を分かった加納と風間の対決ってのも、いくらでもじっくりやれたはずなのになー。今でも残念よ。
 ところで写真残ってる史実の人物については、かなり似せてて雰囲気でてます。陸奥宗光(物語上では明治日本を覇道に傾ける推進者としてヒールに描かれてる)なんかそのまんま。でもって美人と評判だったといわれる夫人の陸奥亮子は作中でもやっぱり美形です。

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