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2005/04/24

 花粉は終わってくれたのかなあ。鼻水はそれほどでもなくなったけど、目があいかわらず。

「リンガフランカ/滝沢麻耶」(bk1)
リンガフランカ 何度も読み返してる一冊をば。落語家の長男だけど噺家としてはサッパリな幸福亭笑太と、お笑いネタのために生きているような岸部の二人が主人公。自殺してしまった父の葬儀のさなかに逃げるようにファミレスに入った笑太が、漫才コンテスト予選当日だってのにコンビの相手も決まらずネタをあーだこーだと練ってた岸部と出会って即席のコンビを組んでコンテストを勝ち上がっていくというのが大まかなストーリー。
 漫才とマンガでは笑いポインツが(構造的に)違うはずなのに、二人がやってる漫才のボケだのツッコミだのがマンガとしてもギャグになってるってのがいいですね。ボケツッコミに限らず台詞のテンポというか、間のマンガ的表現がうまいってところでリーダビリティがぐっと上がってるような気がします。うーん、ネーム見てみたいよ。
 コンテストが進むのと同時に二人のお笑いへの想いも明らかになります。弟に抜かれ父からも期待されず自分の才能に絶望してしまっている笑太の葛藤、笑いでしかコミュニケーションとれなくなった岸部の過去(これは岸部の「師匠」こと妹の美穂子が語るのですが、このちんまい「師匠」がまたかわいい)、他人を笑わせるためのボケとツッコミの裏側で追いつめられている二人。だからこそ、コンテスト決勝戦にのぞもうとする舞台袖で二人がお互いを認め合ってから、はばたく二羽の鳥のシルエットが描き込まれたラストのコマにいたるまでの流れはすばらしい。もう、読み返すたびに、涙腺弛むトコロになっちゃっているのです。

2005/04/20

夜勤明けの帰りの電車って、一度座るともうそのままずぅえったいに寝過ごしちゃうのってのが、いやはや何とも。

「皇国の守護者 1/原作 佐藤大輔 漫画 伊藤悠」(bk1)
皇国の守護者 1  UJで連載中のやつ、単行本化。あの「皇国」がってことも嬉しいですが、伊藤悠のマンガがってことでも二重に嬉しくあるのですよますよ。ハラショー。
 サーベルタイガー(剣牙虎ね)がいて翼竜がいて銃はあってもまだ先込式で阻止砲火としては期待できず騎兵って兵科がなお攻撃の主力で蒸気船はあるけど運送には帆船がまだ主流でーなどなどなどの、戦争を面白くしてくれちゃってる原作の設定はそのまま、マンガならではの表現も冴えてます。実は連載予告カットで主人公新城みたとき、なんか伊藤氏らしからぬ平板な顔だなーと思ったのですが、いやこれが一巻読んでみると実にあっている。原作だと新城って凶相ってな表現がされてたと記憶してるんですが、同時に怜悧であったり小心者だったり合理主義者でもあればすげー根に持つ性格だったりと、とにかく多面性きわだつ人物。で、マンガだと一見平板なデザインの新城ですが、逆に苦虫かみつぶしたり恐怖を必死に抑えたりといった場面ごとの表情の変化がよくわかる。多面性もつ人物のマンガ的表現として巧いのですよ。んで、これがまた例の佐藤節なセリフとぴったりなんですな。
 それから感情表現としてのカオだけじゃなくて作画全般、とくに動きのあるシーンがいいです。忍者物とかの伊藤氏の旧作でもそうでしたが、躍動感みなぎる大ゴマつかっての見せ場ってのがすげー気持ちいい。サーベルタイガーの獰猛な暴れっぷりが堪能できるというものです。でもやっぱり一巻の目玉は東方辺境領鎮定軍総司令官<帝国>陸軍元帥東方辺境領姫ユーリア・ド・ヴェルナ・ツァリツィナ・ロッシナ閣下の「全騎兵聯隊突撃!!」の一声とともに展開される6ページ連続で活写される抜刀騎兵の吶喊でありましょう。おお、ユーリア。

2005/04/19

 今日のも後追いです。実際の読了時期は積読現況を参照してくださいまし。

「ほしのこえ/原作 新海誠 漫画 佐原ミズ」(bk1)
ほしのこえ 個人制作ってことで話題になったOVAのマンガ版であります。原作ではどっちかっていうとあかぬけない造形だったキャラクターは、細い線ではあるけどリファインされてるマンガ版の方がいいかな。逆に3Dのモデリングツールとか使えない分、ロボットとかメカの表現はマンガの方がビハインド。でもって原作で最大のウリだった(とワタシが思ってるところの)背景やライティングとかをうまーく使った一人称的叙情的表現ってのが、それはマンガにおいてはまあそれほど珍しくはない手法なので、特色ってほどにはなってない。でもラストの二人のセリフは原作と同じで、そこにもっていくまでリリカル方面で押し通したっていうのは正解だと思います。やっぱあれが強力な泣きポイントだし。
「昔久街のロジオネ/夢花李」(bk1)
昔久街のロジオネ 佐原つながりで読んだ一冊。“昔久街(なつかしまち)のロジオネ”、“一丁目桔梗屋の姫様”、“僕のシャララ”、“ROBOT”の四作収録の短編集。このうち“ROBOT”が佐原ミズ名義、アフタヌーン四季賞で佳作になったやつです。
 絵はもう完成されてるっていっていいけど、話がわかりにくいってのは感じます。とくに“ROBOT”は一読しただけじゃきつい。場面とか主観・視点の切り替えがかなり急。でも表題作の“昔久街(なつかしまち)のロジオネ”はシンプルでよかった。子供のころに遊んだ人形はもういらないと棄てちゃう女の子ヒメユカの前に現れた、いたずらっ子ロジオネ。と、これだけでわかっちゃうようなオチではありますが、このロジオネくんのショタっぷりがすばらしぃー。ちなみに表紙がこの二人。
「チキタ★GUGU 5/TONO」(bk1)
チキタ★GUGU 5 あいかわらずヒトが容赦なく死んでいくマンガです。そもそもラーとチキタ、オルグとクリップっていう、人食いのバケモノとそのエサになるはずの人間ってペアが物語の根幹にいるもんだから、善悪やら倫理やらが一回転も二回転もしちゃってるのもしょうがないかもしれんのですが。で、人食いのはずのラーはどんどん迷っちゃってますね。チキタをエサとして考えられなくなったどころか完全に依存しちゃってるのが、また、切ないといっていいのか、それともシュールというべきなのか。

2005/04/17

 夜勤だの休出だのですり切れちまったカラダに史上最強の花粉が追い討ち、ってなわけで三月あたまくらいからずーっと鼻水とまりまへん。モニタみるのもつらいけど、でもある意味それが仕事なワケで、ますます悪化……。と、まあ、こんな状態なので更新とまってしまいました。すんまそん。

「世界の終わりの魔法使い/西島大介」(bk1)
世界の終わりの魔法使い へたれてたあいだに読んでた本のこと、少しずつ書いていきます。書けるうちに。
 西島氏の二作目。みんななんとなく魔法が使えるって村でひとりだけ魔法を使えない男の子ムギと、正体は最悪最強の魔法使いである女の子サン・フェアリー・アンが出会って始まるボーイ・ミーツ・ガール、ではあるんだけど、どこか前作「凹村戦争」の同工異曲のような気もする書き下ろしな一冊。
 ああ、また気持ちよくぶっこわすなー。もう感心するしかありません。とはいえ壊しっぷりがクールすぎた前作のような印象は受けず。やっぱ飛ぶのがいいよね。魔法使いのホウキでもエンジンつけた空飛ぶサーフボードでも、飛んでる絵、それだけで気持ちいい(単純。
 魔法の村、その正体が明かされて、それがぜんぶ壊されて、そして何もかも無かったことになってしまっても、想いは外へ。読んだあとに解放される何かがあります。
「EDEN 12/遠藤浩輝」(bk1)
EDEN 12 マーヤやレティアの正体はプログラムなのか神なのか、ってなところが明かされる前にマーヤからディスクロージャーウィルスによる奇病“コロイド”の意味づけが語られます。これがこの巻のキモでしょうかね。ブラッドミュージックを思い浮かべたのはワタシだけではないはずだ。それからついでにミシマ女史がメガネを外してしまった件について(略。

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