いまごろ軍事研究の11月号とか読んでたりするのですが、F2調達中止賛成なひとのすぐ後に反対なひとの記事があったりして、んーと、まーそーゆー状況なんだなーと。
- 「カラシニコフ/松本仁一」(bk1)
- モトはしばらく前に朝日新聞の国際面で連載してたコラム。あんま新聞読まなくなってた自分がこれだけはナゼか読んでて、んで、単行本になってあらためて読んでみた次第です。自動小銃AK47、通称カラシニコフの、そのものについて。それから、AKが使われている地域のレポート。この二本柱がこの本の中心。
ミリオタ的には前者がポイントなのかな。特に設計者カラシニコフへのインタビューなんかは貴重かも。奇抜な新技術を採用したわけではないのに扱いやすい名銃AKがなぜ生まれたのか。「私はAK47を発明したわけじゃない。開発したにすぎないんだ」というカラシニコフ自身の言葉は、アレもコレもと多機能目指してけっきょく高価な駄作を生み出してしまいがちな防衛庁と国防産業の方々に小一時間復唱させたいくらいですがそれは余談。
閑話休題、もう一つの柱、AKの使われている地域のレポート。著者のフィールドでもあるらしくアフリカの国々が取り上げられてます。シエラレオネの少年兵・少女兵の話(拉致されて暴行されて銃持たされて……)なんか読んでてひっじょーに気が滅入りますが、著者がこういう状況を、作家F・フォーサイスの言葉を借りて「失敗した国家」と記しているのが印象に残りました。政府に国を統治する意志のない状態、これが、失敗した国家。で、この本で取り上げられている失敗した国家(シエラレオネ、ソマリア、赤道ギニア、ナイジェリア等々)では例外なく治安が悪化し、AK47がばらまかれた状態になってしまってる。さて、そこでAKが国家を失敗させたのか、失敗した国家となったからAKがあふれちゃったかの因果関係については、あまり強く論じてなくてちょっと歯切れが悪い。でも希望を持たせるレポートもしてくれてます。それがソマリアから独立しようとしているソマリランド(リンクはどっちもWikipedia)についてのレポート。
治安を回復するためには蔓延してしまった銃を回収しなければならない、失敗した国家にとってとてつもなく困難なこの課題を、部族長老の説得という(聞こえは前近代的かもしれないけど)やり方でなんとか実現したソマリランドは、失敗した国家の立ち直るひとつのモデルケースになりうるのかもしれません。もっとも、ソマリランド自体を承認する国はひとつもなく、まだソマリア内部の一地方政権って状況。ってゆーか、ソマリアもう三つくらいに国が分かれちゃって群雄割拠の三国志状態なんですが、これがまた戦乱状態の火種になってしまうのかと思うと……、なんかもう、言葉も無い。