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2004/04/11

 携帯MP3プレイヤーとしては4年くらい前からSOTECのMP302ってのを使ってたんですが、とうとうお亡くなりに。まあ当時ですでに1万円切ってた買物だったんで、償却しきったといっていいですかね。

「プラネテス 4/幸村誠」(bk1)
 これにて完結。ハチマキのガムシャラっぷりが描かれた1,2巻から、タナベに出会ったことでハチマキだけでなく物語自体も大きく方向転換したかに見えた3巻。正直、どこ行っちゃうんだろうかと思ってましたが、無事に木星に辿り着いてのエンディング。
 もっとも4巻だけでいえば主役はフィー姐さんなわけで。戦争ってことで国家的にデブリばらまかれてしまう横でのデブリ拾い。犬の目つき、犬の意地。カッコイイじゃないですか。でもってカッコイイといえばロックスミス。満足してしまうことから見放された人間にしかできないことがある。木星の次は土星。たとえ人殺しと蔑まれようと。タナベや男爵と同時にこういう人間も描ききった、いいマンガでありました。
「氷が溶けて血に変わるまで/きづきあきら」(bk1)
 同人誌で発表された7編とアフタヌーン四季賞準入選な1編を収録したもの。扱うネタがDVだったり近親間の性愛だったり性同一性障害だったりときわどいのが多いし、結末も必ずしもハッピーエンドではなかったりしますが、ここには兄と妹の苦い関係をテーマにした佳作「モン・スール」(bk1)へとつながっていく部分がたしかにあります。8編の中では視覚障害者への接し方を問いかける「BITTER CAKES」というのがキました。ワタシの僅かな経験からいっても、ボランティアってのはむずかしーのよ。

2004/04/04

 職場と自宅とその移動で24時間×7日×4週終わってしまうとゆーのは一種のヒキコモリなのでわないだろーかと考えたりする今日この頃。けっきょく三月は一度も更新できませんでしたが、とりあえず三月に読んでたもの列挙。

「STAY ああ今年の夏も何もなかったわ/西炯子」(bk1)
「STAYプラス お手々つないで/西炯子」(bk1)
 この人のマンガは初めてでしたが、あー、これはすごくいい。「STAY」は田舎の高校で演劇部やってる5人の女の子それぞれを主人公に5話+1話。それぞれ夏の間、サマースクールあったり東京にあこがれの役者見に行ったり本人気づかないままデートしたりカッパ探したりしつつ、それぞれちょっとづつ変わっていく。この、変わらないよで変わっていく微妙な具合がですね、なんともいいです。まあ“何もなかったわ”って副題はちょっと嘘で、部長のよーぴん先輩だけは複雑な家庭環境でそうとう波乱もあったりするんですが、出した結論はというと県大会がんばろうっていう、何もなかったとして辿り着いたであろう結論と変わらない。ただ、その気持ち、心持ちというのが、夏の前と後とでちょっと変わっている。派手さ華やかさはないけど、清々しい、そんなお話。
 「STAYプラス」の方は、5人の中の脚本演出担当ないつも眠たげな目の山王みちるさんが主人公。実際の視点キャラは彼女とつきあってるイガグリ頭の佐藤くん。で、その佐藤くんは東京出身で全寮制のエリート校に通ってて恋愛経験も豊富で、田舎娘なぞ簡単に落としたるわって意気込んでたのにもう最初から最後まで山王さんに振り回されっぱなしでして、基本的にその振り回されっぷりを楽しむラブコメです。駄菓子菓子ッ、ラストの8ページ、これがねー、もー。ネタばれしないように書くのは難しいんだけど、これまでのすべてがあざやかにひっくり返されてしまって、あーもー山王さんすっげーかわいーじゃねーか、こんちくしょーってなもんでして。ラブコメなコンテクストではありますが、このラストにいたるまでの部分は、ミステリでいうところの長い叙述トリックであるのカモ。そして優れたミステリのトリックと同じように、いやラブコメであるからしてそれ以上に、晴やかな読後感をもたらしてくれるのです。おすすめ。
「境界戦線/やまむらはじめ」(bk1)
 大洪水と陥没とで陸の孤島になってしまった東京、一時は内戦状態にまでなったが徐々に混乱も収束しようとしてる、ってな設定での、男と女なオムニバス5編。やっぱこの人の短編はいいです。短い中にもキャラの葛藤する背景・理由がきっちりあるから、お話自体の救いのあるなしにかかわらず納得できます。でも一番スキなのはガン・カタ炸裂な姐御、小夜子さんのバカ話。
「とわにみるゆめ/三浦靖冬」(bk1)
 前作「おつきさまのかえりみち」(→感想)に続く2冊目な単行本。青年ギイチが道端で少女型ロボット(セクサロイド)R-F10-0を拾ったことで始まる物語……と書くと「ちょびッ」と区別つかないですが、やはりこの人ならではの児ポ法真っ正面な方向にエロエロなマンガであることは間違いないわけで。エロの見せ方(体位とか)が案外単調なのが気になりますが、懐古調のガジェットや世界観の中での背徳120%増量ッみたいな展開は前作以上で、なんかもう作風完成しちゃったんじゃないかってカンジもします。
凹村戦争西島大介」(bk1)
 面白うてやがて悲しき、そんなマンガ。
 携帯電話もラジオも届かない僻地、凹村(中国にある同名の村とはたぶん無関係で、オーソン・ウェルズに引っかけた名前)の上空にUFOだかなんだかよくわからないのが飛ぶようになって、どうやら外の世界ではヤバいことになってるようだけれど、中三で受験生な主人公の凹沢アルくんはあいかわらず受験生するしかなくて、でもそんなのはイヤだから謎の物体、遊星からの物体Xカモンっとか騒いでるうちに外の世界へ出て行くきっかけをつかんでいく……というお話。いや、引用過多なお話ってどうも敬遠してしまうんだけど、ここまでかっこよくやられちゃうと素直に降参。ヌルめのSF者でもニヤニヤしながら読めましたですよ。青背制覇とかいう人ならもっと楽しめる、と思うのですよ。
 だけどラストは悲しい。
 なんていうか、「最終兵器彼女」とか思いだしたりしたですよ。
 ネタばれしちゃうけど、この「凹村戦争」は全滅オチなんかじゃないから、その点では「最終兵器彼女」よりも高評価できます。でもアルくんが辿り着いた外の世界ってのが、なんかぶっ壊れまくってて、いや破壊された都市ってのは、それ自体で燃えるネタなハズなんだけど、この人の描線ってのがなまじクール過ぎて燃えるを通り越して悲しくなってしまったのかもしれない。外の世界、それが感じられなかった。これが悲しい。つまり“凹村”ってのが「最終兵器彼女」での“ちせの街”に見えてしまったと。その街が当人にとっての世界のすべて。外なんて関係ない。セカイ系。みたいな。
 やっぱり自分から外に行こうとしたアルくんには、もっと外の世界を見てほしかった。少なくとも、外の世界が大きく広がっているんだってことを感じさせてくれるラストであってほしかった。でもって、それはじゅうぶんできたはずだと思うんです。最終章の題は「都市と★」ってなってます。であるならば、「都市と星/A・C・クラーク」で、ダイアスパーを飛び出して外宇宙へと旅立つ主人公アルヴィンのような希望を凹沢アル(いま気づいたけどアル=アルヴィンだよね)にも持たせてあげられなかったかと。あのラストのコマは、たしかにクールなんだけど、そして悲しい。

Copyright くわたろ 2004