《↑戻る》

2002/06/09

 積読期間が長くなる傾向。いかんな。

 読んだものふたつ、冷めたのと熱いの。ひとつめ、「気分はもう戦争2.1/作 矢作俊彦 画 藤原カムイ」たしか第二期犬狼が終わったあたりで連載してたんで、自分的に犬狼と印象がダブってしまった記憶がありますが(おい)、でも改めて読むとやっぱり「気分はもう戦争」。この冷めきってる薄ら寒いまでのクールネスがたまんないです。絵は絵でむっちゃくちゃうまいですし。惜しむらくはあの三人があんま活躍してないってコトでしょうか。まあメガネは見せ場があるんですけどね、ハチマキとボウイがほとんどチョイ役で。あうあう。

 ふたつめ、「ピルグリム・イェーガー/作 冲方丁 画 伊藤真美」第一巻。ムヤミにかっこいい絵でムヤミに熱いハナシでムヤミに大風呂敷なもんで、いまOursで連載してるやつの中で一番楽しみにしてるマンガです。一巻の時点で舞台は1521年のイタリア、っていうからチェーザレ・ボルジア(←これがワタシのリファレンスの限界)が死んでから十年とちょい、教皇領とかミラノとかフィレンツェとかでわけわかんなくなってた時代。主人公は悪魔憑きを祓う“芸”をなりわいにする二人の女、軽業師のアデールと占師のカーリン。で、この二人のやる“芸”ってーのがかっこいーんです。まだ全員でてきてないけど“三十枚の銀貨”(イエスを売ったユダが貰った報酬だ)たちのアクションもいちいちかっこいいし、そいつらのセリフもケレン味たっぷりってカンジでして。とにかく、“なんかよくわからんけどこの先面白くなるだろうなるに違いない読まねばなるまいオーラ”というのが強烈にでているマンガなのですよ。

2002/06/08

 法事の帰りみち、上映開始五分前の映画館に飛び込んでみたり。
 というわけで観てきました。ローランド・ズゾ・リヒター監督作品「トンネル」。いや、予想外の大収穫。すばらすぃー映画でしたです。ざっと背景的な説明しますと、東西冷戦下、壁が建設されたベルリンにおいて西から深さ7メートル、全長145メートルのトンネルを掘って、29人もの東ドイツ人を西に脱出させることに成功したという、実話に基づいた、映画です。
 トンネル掘って脱出っていうと、どーしてもスティーヴ・マックィーンがバイクで鉄条網飛び越えたりするアレとか思い浮かべちゃったりしてしまうわけですが、この「トンネル」ってのは、そんな派手な映画じゃなくて、題のとおりひたすら壁の下のトンネルをめぐるオハナシになってます。別れ別れになってしまった家族、恋人のためにトンネルを掘る人間。監視下におかれて息をひそめながら西からの連絡を待っている人間。なんとしても脱出ルートをつきとめようとする東ドイツ国家保安省の人間。そして……脅迫されて当局に密告してしまう人間。
 まあ、実際に成功したっていうのがわかってるので、映画でも最後に脱出は成功するんだってわかって観てたんですけど、それでも、二時間半以上の長編というのに途中でダレるなんてことはまったくありませんでした。ここらへんは、トンネルをめぐっていろんな人間たちのドラマが積み重なっていくという構成のおかげでしょうか。淡々と、重苦しく描かれるこれらのエピソードのなかでも、夫が脱出後に生まれた乳飲み子を取り上げられると脅され、東ドイツ当局に協力してしまうカロラって人の悲劇は際立ってます。
 そしていよいよ決行当日。ここんとこで、これまでの地味な作劇からやや外れて派手な(っつーてもハリウッド的ではないんですが)アクションが入ったりして、ここらへん創作だなっていうのがわかっちゃってアレなんですが、それでも、それをおぎなって余りあるくらいに素晴らしいラストです。結末はわかってます。脱出に成功します。29人。だけど本来脱出させるべき人数は32人だったんです。着の身着のまま、その服をトンネルの泥で汚しながらも涙ながらに喜ぶ人たちと迎える人たち。そこにあるのは待望の再会に流される歓喜の涙であると同時に、ついに会えなかった愛する人への万感込めた涙でもあるわけです。たまらずワタシも泣いてしまいましたです。


Copyright くわたろ 2002