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2002/02/28

 えー、読む前だけじゃなく読んだ後も積読状態にしてたら日付とかわけわかんなくなっちゃったので、今月読んだマンガから時系列無視して列挙。

 「夏色ショウジョ/綾瀬さとみ」。快楽天掲載のをメインにまとめた一冊。シリアスな話とおバカな話の落差が激しい一冊でもあります。どっちの傾向でも女の子はぷにぷにでかわいーしエロは濃いーしでいいんですが、両者を比べると、ワタシ的嗜好を割り引いてもやっぱしシリアスの方が出来がいいと思います。どうもバカ話の方は展開がぎこちないというか、そのぎこちなさって作者としては笑いポインツなんでしょうけど、そこでこちらとしてはあまり笑えないと。後書きで作者はそうじゃないといってますけど、ムリして(バカ話を)描いてるって印象をもたれるのはそこらへんが原因じゃないでしょうか。いちばん良かったのは、シリアス方面ですが、「笑ウ少女」。年の離れた男の子を好きになった女の子の悲劇。エロをやるのが主人公カップルじゃないんで、エロマンガとしてはどうかとも思いますが、破滅に向かう終盤の緩急つけた展開はとてもいいです。

 「ドロヘドロ/林田球」第一巻。オビにあるように、魔法使いの話、ではあるんですが、世間一般でいうところのファンタジーって要素をことごとく排除していて不思議なカンジ。舞台はスラムっぽい街、出てくる人間のなりはストリートというかチンピラ風情(おい)、魔法使いも魔法使わないもやることはとんでもねーし、主人公は餃子好きのワニ頭。でもってエロはないけどグロとバイオレンスはたっぷりなのに、どこかトボけてるというかホノボノしてるというか。不思議。

 「イエスタディをうたって/冬目景」第三巻。ハルちゃんをめぐってリクオにライバルが登場したりもしますが、形見分けで消しゴムもらうシナコ先生のエピソードなんかもじーんときます。

 「蟲師/漆原友紀」第二巻。雑誌掲載時のカラーページがそのままカラーで載っててブラボ。常人には見えない蟲と、それを扱う蟲師。退治するされるという単純な対決的関係ではない両者の深みある関係もいいですし、読んでて朝露のような清々しさを感じさせてくれる絵がとてもいいです。で、この二巻では「雨がくる虹がたつ」という、虹の蟲のオハナシがいちばん良かった。虹を追いかけなきゃいけなくなった男の屈折、とうとう追いついた虹の正体、しみじみ。ええ話や。

 「大合作/トニーたけざき 園田健一 あさりよしとお」えー、奥付の表記は代表三人だけですが参加作家総勢74名。アフタヌーン創刊10周年記念だった「大合作」と14周年記念だった「大合作2」を創刊15周年で記念出版ということで、パーティーというか宴会ノリにあふれた一冊。オマケ的に載ってる、自分の作品以外のキャラを描くという「大合作ギャラリー」もそんなノリ。当たり前ですが、ギャップのある取り合わせほど笑えます。「二瓶勉×なげやり」とか。

2002/02/27

全四話で完結、というわけでOVA「エイリアン9」の感想を。や、面白いです。楽しめました。
 そもそもの原作がひじょーにアニメにしづらそーな画面構成だったんでどんなふうに“動く”のか、そこがOVA第一話見るまでの期待、というか不安なところだったんですが、そこはまったくの杞憂でした。全編にわたって非常に丁寧な作画。ローラブレードで動き回る対策係たち三人の動きのなんとなめらかなこと。あと、原作で「カカカ」という擬音をカマしてくださいましたドリルさまも、縦横無尽に動いてくださいます。そんなわけでアクションシーンはどれもいいですが、私的ベストは第二話ラストで大谷ゆりちゃんのボウグが過成長する場面でしょうか。もう刺す刺す刺す刺す刺しまくる。
 OVA独自の演出としては、ゆりちゃんの見る「夢」がありますけど、これもぐっど。対策係として体験させられた恐怖、不安を、サイケなお花畑の中で反芻させられるという、なんとも悪意に満ちた夢(誉め言葉)。四話では、イエローナイフに取り込まれてた遠峯かすみちゃんまでこの夢を見ます。というかもう夢じゃないし。
 で、原作では中盤だったイエローナイフ編が四話でということなんで、このOVAは原作全部を消化してません。イエローナイフ編がOVAのラストエピソードってことになります。ここはやっぱり残念ですねー。ブレーキ忘れて加速しっぱなしの原作からすれば、ここからもっともっと面白いはずなので。その代わりということなのか、OVAのイエローナイフ編では原作よりもかなり踏み込んだ描写、掘り下げがあります。久川先生以上に校長先生が悪党だったり、川村くみちゃんがイエローナイフにトラウマを突かれて半狂乱になったり、ぐちょんぐちょんになったり、かすみちゃんを取り返したと思ったら首絞められたり、ゆりちゃんはいつも以上にわあわあわあわあ泣く泣く泣く。まあ首絞めは原作でもありますが、それをアニメでマジメに見せられるとさすがにキます。ともあれ、かすみちゃんが戻って、三人そろったところでめでたしめでたしで一区切り。
 そうです、一区切りってだけで、まだ終わらないですね。そのあとエンディングテーマが流れてエピローグです。とんでもないエピローグ。くみちゃんの死体。うはー。
 たしかに原作でもくみちゃん死にます。でも、その後も物語は続きます。それが、こんなふうに最後の最後で死体持ってこられるとですねえ、たしかに死んでる状況自体は原作に忠実な描き方なんだけど、意味がまったく変わってくるというか。
 このエピローグでなんとなく思い出したのが、映画「恐怖の報酬」。イヴ・モンタン演じる主人公のトラック野郎が最後の最後に向かえる死。たしかにアレはすんごくキマってました。あれ以外のラストはありえんでしょう。そのラストになるべくしてなったのだと観る者に納得させられるだけの重厚な緊迫感が、あの映画にはたしかにあります。全編にわたってあります。だけどOVAエイリアン9は、底意地悪い、サイケな、偏執的な世界観かもしれないけれど、めざす着地点はそこではないということは、第一話、第二話の展開が原作を非常に忠実にトレースしてたことからも明らかです。原作知ってる人間へのサービスかもしれませんが、これはサービスとはいいません。蛇足といいます。四話全体の評価を下げるものではありませんが、この部分はやっぱし残念。イエローナイフ編ですっきり終わった方が良かったんではないかなと思いますです。


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