サラリーマンの確定申告

                   

                              

 日本はサラリーマン社会といわれるが、サラリーマンの数はどれくらいいるのか。労働力調査の統計によれば男女合わせて約5,300万人という数字が出ていた。これは日本の労働力人口約6,800万人の8割近くを占める。サラリーマンが幸福でなければ、日本は幸福でないといわれるのがよくわかる。税務上の観点からサラリーマンを捉えるとどうだろう。国税庁の統計を見てみると、所得税の納税者約5,000万人の中で申告所得者が700万人、給与所得者は4,300万人となっている。とすると、所得税を負担するまでもないサラリーマンが1,000万人ほどいる計算になる。

日本的経営の三種の神器とされてきた年功序列、終身雇用、企業内組合が崩れて、サラリーマン受難の時代を迎えている。税金の上でも、定率減税の廃止、消費税の引き上げと、サラリーマンには冷たい風が吹き始めた。その上、給与所得控除の見直しが言われたり、サラリーマンにも確定申告させるべきだという意見が現実味を帯びるようになっている。海の向こうの米国ではサラリーマンも確定申告をしているが、日本でもそうするようにしたらどうかというのである。米国型の制度が次々に導入されている現状からすればいつ採用されてもおかしくはない。

それでは、今の日本で所得税の確定申告をする人がどれくらいいるかというと、約2,000万人となっている。この中から申告所得者の700万人を除くと、サラリーマンの1,300万人ぐらいが今は何らかの形で確定申告をしていて、残りの3,000万人のサラリーマンが確定申告をしていない計算だ。

 なぜ、サラリーマンにも確定申告をさせるべきなのか。政府の税制調査会では、納税意識の向上をはかるためだとしている。しかし、同時に「税務執行面にも配慮しながら」と述べていることからすれば、やはり3,000万人のサラリーマンが現実に確定申告に押し寄せたら、税務署がパンクしてしまうという心配もぬぐいきれないのだろう。