やさしい時価会計

 平成12年4月1日から株式を公開している企業では金融商品の時価会計がスタートしました。金融商品といっても、その範囲は思った以上に幅広く、次のようなものまで含まれます。

@         有価証券

A         建設協力金等

B         商品ファンド

C         ゴルフ会員権等

D         デリバティブ

E         その他

 

これまでの会計では、たとえば有価証券ですと、実際に売却して売却益が現実のものとなったときだけ損益計算書に「有価証券売却益」として計上し、それに対して法人税等の税金の課税も行われていました。

 

 ところが今度の時価会計では、現実のものとなっていなくても、つまり「取らぬ狸の皮算用」であっても、決算期末に株価が高くなっていれば、その分を「有価証券評価益」として計上しなければなりません。

 

 ただ何もかも損益計算書に計上して税金もかかるというのではあんまりだというので、ごくごく限られたものだけ、損益計算書に計上し、税金もかかることになりました。

 

 それは有価証券の売買を事業目的にして、専門の担当者を何人も置き、頻繁に売買を行っている会社の「売買目的有価証券」だけということになりました。

 

 しかし、それ以外の会社の有価証券でも「有価証券評価益」を損益計算書に計上しなくてもいいというだけで、時価評価しなくてもいいというわけではありません。どの会社も時価評価は行って、貸借対照表(バランスシート)には、数字を時価でのせるのです。

 

時価が増えた分の差額は資本の部に「評価差額」としてのせて数字のつじつまを合わせます。これを「資本直入法」といいますが、早い話がつじつま合わせです。

 

 デリバティブについては、いままでは実際に決済されて損が出たり利益が出たりするまで、決算書の正式の数字にはまったく反映されていませんでした。それでヤクルトなどのようにいっぺんに1,000億の損失が出ても途中経過はなにもわからないという状態でした。

 

 そこで、デリバティブも決済されていなくても決算期には途中経過の損失や利益を計上しようということになりました。

 

 ゴルフ会員権はしかし値上がりしたといってもあまりあてにならないというので、利益はちゃんと実現してから計上することになりました。しかし、うんと値下がりした分については、「減損会計」といって、評価損を計上しなければならないことになったのです。

 

 面倒な世の中になったとお感じかもしれませんが、これらはいまのところ公開企業だけの話ですので、くれぐれも誤解のありませんように。