「譜読み? 初見?」

譜読みにコンプレックスを感じている方は、案外多いのではないでしょうか? 殆どの場合、音符単位で読んでいるからスラスラと読めないのです。 文章を読む際、普通は文字単位で読まないですよね? それと全く同じ事なのです。 でも、「音符にはシャープやらフラットやら調号なんかが付いてていちいち判断しなければならないけど、文字はそんなことないぞ!」 って・・・なんか難しいこと考えてませんか?(笑)

むしろ「初見」に関しては、楽譜を読むより文章を朗読する方が難しいと思います。 例えば、読めない漢字が出てきたらどうします? 読めない綴りが出てきたらどうします?? いちいち辞書などで調べなければいけませんね〜。 楽譜はその点では実に合理的に出来ていて、視覚的に眺めるだけで良い(というか何とかなる)ように出来ています。

「・・・それは分かってるんだけど、ダメなんだよなぁ」っていう人、、、 貴方は真面目すぎるんですよ。 急がばまわれ、視点を変えるだけでいいんです。 一生懸命になることは悪いことだとは言いません。 が、一途にがむしゃらになればなるほど見えなくなる、分からなくなる事だってあります。



◆調号のからくり

旋律(メロディ)を作り出しているのは音階です。 もっと噛み砕いて言えば「ドレミファソラシド」に全てが集約されてしまうのです。 音階なくしては和音も作れません。 (ただし、アヴァンギャルドというか前衛的というか、そういった曲の中には当然、例外もあります。)

音階

あとは 音階のスタート地点が異なるだけで、 音階の形式(各音間の間隔)は基本的に変わることはありません。 “Molldur”や“Blue Note”、及び全音音階(whole tone)等の例外もありますが、 装飾的だったり音楽のキャラクタを出すためのものであり、 全ては、この基本形から派生したものだと考えた方が分かりやすいです。
(実際には中世ルネサンス時代の教会旋法[ドリア/フリギア/リディア/・・・etc]のうち、 エオリア旋法とイオニア旋法が、この基本形に集約されたのですが・・・。 金管アンサンブルなどでガブリエリの作品を演ったことのある方なら、 この「旋法」という言葉はピンときますよね? 現代の曲でも、独特の雰囲気を醸し出すために、 この「旋法(モード)」が用いられることがしばしばあります。)

調号 では、調号について・・・

この調号というシロモノ、ただデタラメに付いているのではないことは 言うまでもありませんが、ちょっと眺めてみると、フラットとシャープ・・・ 最初に付く場所は違いますが、規則性に気が付くと思います。

2つ目の調号が付く際、 シャープは一つ目の調号の4度下に、フラットは一つ目の調号の4度上に 付いています。

3つ目の調号が付く際はどうでしょうか?

シャープは一つ目の調号の2度上に、フラットは一つ目の調号の2度下に 付いていますね。 3つ目以降は 「一個とばした」左の調号の位置の、シャープなら2度上、フラットなら2度下に付く 仕組みになってます。

( う〜ん。 調の近親関係は「4度圏」ではなく 「5度圏」 で論じられることが多いから、 シャープは左隣の調号の5度上に、フラットは左隣の調号の5度下に って言うべきか。 でも、譜面を書く際の慣習でいうと「一個とばし論」の方が覚えやすいんだよね(^_^ゞ )

この際、何故そうなるのか?って考えるのはやめましょう。(苦笑) 全調列記して並べ替えればそうなるんですから。 数学的に考えれば導き出せますけど・・・(^_^ゞ
楽隊は余計なことを考えないほうが身のためです。(自爆)


実は、調号から調を簡単に割り出す方法があります。
(この方法で調性を覚えた人って案外多いかも・・・)
シャープやフラットが幾つ付いていようが、とにかく

調号の一番右の位置の音に注目

して下さい。


調号の右端の音・・・それは、

ャープなら、その調の「
ラットなら、その調の「ァ」


の音になります。


「シ↑ド」

「ファ↓ミ↓レ↓ド」


・・・と手繰ればすぐに「ド」の位置が確定します。
「これを真っ先に書け〜!!」って言われそう・・・。(汗)
・・・私が何か書くとどうも理屈っぽくなっちゃうなぁ。


◆拍子〜リズムの形

音階(スケール)が掌握できれば、アルペジオ(分散和音)は比較的簡単な筈です。 “3度堆積”〜例えば「ソ」から3度堆積すれば「ソシレ(ファ)」〜すれば和音になるのですから・・・。

そうなると初見の近道のもう一つの要素は、 リズムの把握 だと思います。 曲の冒頭部分の五線上には普通、「音部記号(ト音記号)」と「調号」、そして「拍子記号」が記されているはずです。 しかし、 わざわざ拍子記号を見なくても、音符の並びを見ただけで拍子がおおよそ把握・判断出来るべきです。

譜例

上の譜例1〜3は音価だけで無機的に捉えれば、すべて同じです。 けれども人間が演奏すれば異なったものになるはず。 何故って言うまでもなく、明らかに 拍子が違うんですもの・・・。 もはや、音を出す前のブレス、いや、それ以前にもう、意識からベツモノです。

( 器楽曲の楽譜なら、常識で考えても譜例3のようなケースは希有だけど・・・ というより譜例3のように書かれたら私は怒る!・・・もしくは、やる気がなくなってしまいますよ^^;;; )

通常、細かい音符が並んだときは 拍節に応じて音符が連桁 されてるはずです。 上に掲げた譜例の拍子の答合わせをする必要はありませんよね? 敢えて答えれば、「譜例3」は拍子が分からないってことですね。



楽譜は決して無機的に書かれてはいません。 ・・・というより、無機的に読むとそこから生まれる音楽は無機的なものになってしまいます。 初見が利くことはスキルの一つですが、数学的に音を並べるだけにならないように気を付けたいものです。

読譜はパフォーマンスの準備であってスタート地点でしかありませんよね? 楽器演奏は「音を出すこと」ではなく「音楽をすること」です。 さもないと、人間が音楽を演奏する意味がなくなってしまいます。 無機的な「音」ではなく、有機的な「音楽」を心がけて、経験を積んで自分の中に取り込んでゆけば 自然と自分の音楽の語彙(ボキャブラリーと云った方がいいかな?)が 豊富になり、それが初見力に結びつくのです。 いかにして音に生命を吹き込むか、・・・それがもっとも大切なことだと思います。




作成 1999/11/08(月)
by やちまう (山内 真澄 / YAMAUCHI Masumi)
ymch@din.or.jp