WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35





☆実艦解説
  1939年4月、Z31〜Z36として発注された、小型の38B型駆逐艦は、従来の大型駆逐艦とは異なり、艦隊のワークホースたることを期待されており、次の性能を持っていました。

基準排水量:1,780t 満載排水量2,353t
速力:少なくとも最大36ノット 航続力:3,500浬/19ノット
武装:12.7cm軽量連装砲塔×2
    3.7cm単装機関砲×2、2cm単装機銃×2
    53.3cm三連装魚雷発射管×3
    爆雷投射機4基、爆雷投下台2基、爆雷18発)

  この艦は、従来の駆逐艦の補助として艦隊任務に充当され、艦隊直衛、対艦、対潜、高速機雷敷設を行うとされました。作戦海域はバルト海及び北海、シェトランド諸島やノルウェイの遠方海域でも使用できることとされ、それに必要な航洋性を要求されました。
  しかし、第二次世界大戦開戦により計画はキャンセルされ、Z31〜Z36は36A臨戦型駆逐艦及び36B臨戦型駆逐艦として建造されることになりました。これにより、38B型駆逐艦の計画は、近い排水量と武装を持った39型艦隊水雷艇に吸収されることになりました。

  39型艦隊水雷艇は、基本的にはSボートの拡大版的存在だった従来の35型、37型水雷艇と違い、艦隊任務に用いる性能を目指し、1939年9月に設計が開始されました。計画当初、速力を35ノット以下−34.7ノット程度−に抑えて砲熕兵装を重視するか、機関スペースを増して速力増加を重視するかで論議が別れましたが、既存の水雷艇(35型水雷艇、37型水雷艇)でも実質速力が34.7ノット程度しか出ていない点から、砲熕兵装重視の設計が決定されました。
  砲熕兵装は当初12.7cmSK C/34×4(後に3)か10.5cmSK C/32×4の両案が検討されましたが、対空火力の増加が求められ、12.7cmSK C/34では仰角30度で対空火力がないため、70度の高仰角の可能な10.5cmSK C/32×4と決定されました。
  1939年9月末の会議では、任務は、次の通りとされました。

・主に主力艦、装甲艦、巡洋艦の直衛。前路掃海、対空、対潜護衛。
・副次的任務として機雷敷設、潜水艦掃討任務、偵察任務、船団護衛任務、空軍との共同任務。
・作戦海域:バルト海及び北海、シェトランド諸島やノルウェイの遠方海域

  上記任務に必要な航洋性、復原性、航続距離が求めらたため、船体は従来の水雷艇より大型化しました。
  航続距離は、19ノットで1,200浬から2,400浬へと倍増し、従来の水雷艇の枠を超えたものとなりました
  砲熕兵装は10.5cmSK C/32×4で、駆逐艦並みの測距儀、射撃指揮装置を装備しましたが、高射指揮能力は持たず、高射時には砲側射撃となりました。
  水雷兵装は従来の水雷艇と同様の53.3cm三連装魚雷発射管2基を装備し、予備魚雷は持ちませんでした。発射指揮には、駆逐艦と同じTZA2水雷方位盤を用いました。
  水測機材も駆逐艦並みとなり、竣工当初よりS-Grät、GHGを装備していました。
  爆雷兵装も駆逐艦並みとなり、K砲片舷2基両舷計4基、爆雷投下台片舷3基両舷計6基、爆雷最大32発を搭載しました。
  電測兵装は竣工時より環境上にFuMO21が装備され、戦時中に増設もされました。
  機雷は60発が搭載可能ですが、機雷搭載中は復原性の問題から、燃料搭載量を50%以上に保つようにされました。
  完成してみると、速力は実質31ノット程度、航続力は2,085浬/19ノットと、機関の不成績が目立ちましたが、結果的にこの型が成功したタイプとなったのは、戦後もフランスやソヴィエト連邦に接収された艦が長く用いられたことからも分かります。

  水雷艇T35は、シーヒャウ社により建造され、舷側のナックル廃止など、建造の簡易化が試みられました。1944年10月7日竣工後、第5水雷艇群に配属され、陸上戦闘の撤退支援を行いました。
  終戦時、無傷で残存し、1946年アメリカに引き渡され、DD-935のハルナンバーを付与されました。その後、フランスに引き渡され、他の水雷艇の部品と利用として使われ、1952年処分されました。


◎39型艦隊水雷艇 T35 1945年時要目
建造シーヒャウ社 1944年10月7日竣工 1946年アメリカに引き渡し
基準排水量:1,318t 満載排水量:1,780t
全長/102.5m 水線長;97.0m 水線幅:10.0m 平均吃水:3.25m
機関:ヴァーグナー缶(蒸気性状70atu、460℃)4基 ヴァーグナー式高圧タービン2基 2軸
機関出力:32,000hp 速力:計画33.5ノット 実際約31ノット
航続距離:計画19ノットで2,400海里 実際19ノットで2,085海里
武装:10.5cm SK C/32(46.29口径)単装砲4門 3m測距儀1基を艦橋上に、射撃指揮装置を艦橋内に装備
    37mmM42連装機関砲2門 37mmM43単装機関砲2基 20mmC/38四連装機関砲1基 連装機関砲2基
    53.3cm 三連装魚雷発射管2基 TZA2水雷方位盤を装備
    爆雷装備 K砲片舷2基両舷計4基、爆雷投下台片舷3基両舷計6基、爆雷最大32発
    機雷60発搭載可能
電測兵装:FuMO21 1基を艦橋上に、FuMO63“Hohentwiel” 1基をを後檣後ろに装備
       FuMB“Smatra” 1基、FuMB“Bari” 1基を前檣に装備
乗員数:206名


☆制作
  作例は、WSW1/700 T35そのものです。追加工作として、舷外電路の追加と、機関砲の砲身の0.18mm真鍮線への変更、後部20mmC38四連装機関砲架台が4角形なのを後部を削って台形に変更しました。また、艦橋上にTZA2水雷方位盤を追加しました。魚雷発射管は、タミヤ1/700 プリンツ・オイゲンから流用しています。
  10.5cm B砲脇の爆雷投射機4基、パラベーンは、ピットロードの日本海軍武装パーツXから流用し、改造して使用しています。
  他はほぼ、そのまま組み立てています。


☆塗装
    塗装に使用した塗料の調合は次の比率で行いました。
・上構色 ガルグレー(11)3+ツヤ消し白(62)7
・船体色 RLM75グレイバイオレット(37)2+エアクラフトグレー(73)1+つや消し白(62)7
・喫水線色 セミグロスブラック(92)7+つや消し白(62)3
・鉄甲板色 RLM75グレイバイオレット(37)
・煙突ファンネルキャップ シルバー(8)
・ボラード、錨鎖、錨 セミグロスブラック(92)

  かっこ内はミスターカラーのナンバー、かっこの後ろの数値は調合の比率です。
  その他、艦橋窓、魚雷発射管に、油絵の具のアイボリーブラックで軽く墨入れをしてあります。

WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35
WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35斜前上より

WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35
WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35横より

WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35
WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35斜後上より

WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35
WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35斜前より

WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35
WSW1/700改造 ドイツ39型艦隊水雷艇 T35斜後より


◎参考資料
・「第二次大戦駆逐艦総覧」 出版社 大日本絵画
・「GERMAN DESTROYERS OF WORLD WAR TWO」 出版社 ARMS AND ARMOUR PRESS
・「Z-vor! 1914 bis 1939」 出版社 Koehler
・「Die deutschen FLOTTENTORPEDOBOOTE 1942-1945」 出版社 MITTER
・「GERMAN WARSHIPS 1815-1945 Volume One:Major Surface Vessels」 出版社 CONWAY
・「CONWAY'S ALL THE WORLD'S FIGHITING SHIPS 1922-1946」 出版社 CONWAY
・「NAVAL WAPONS OF WORLD WAR TWO」 出版社 CONWAY



模型関係に戻る
ホームに戻る