ドボワチン D.520は、フランス空軍により、モラン・ソルニエ MS.40シリーズの後継機として採用された戦闘機です。
試作機は1938年に完成したものの、エンジン、過給器、プロペラの問題解決が生産までに間に合わず、フランスの戦いの時点では全力を発揮できる状況にありませんでした。
フランス戦時の実際の性能は、エンジン馬力最大800馬力代後半、速度500km/h弱程度であったと思われます。
性能的には、ライバルのBF109Eと比較すると機体強度と急降下制限速度、低空での運動性に優れ、それを生かした戦い方を主体としました。
反面、上昇力、水平最大速度、高高度性能、初期降下加速では大きく劣り、総合して劣性であったと思われます。
フランス軍の運用記録にも、カーチス・ホークH.75、モラン・ソルニエMS.406より操縦がデリケートであり、敵機に馬力で劣るので、高度を稼いで、降下一撃戦法を主体としたとあります。
それでも、性能は当時フランス空軍の装備機の中では最良であり、モラン・ソルニエMS.406より機種改変した部隊の士気の回復は著しかったとのことです。
作例は実戦に用いられた機体ではなく、自由フランス空軍「ノルマンディー」部隊の訓練用に廃機から再生された2機、生産302号機と397号機の内の後者です。
後にソ連の空で戦うことになった操縦士達の多くが訓練に利用した機体で、特に397号機は、クルスク戦で戦死したエース、アルベール・リトルフが訓練に使用していました。
◎ドボワチン D.520 要目
全長:8.76 m 全幅:10.18 m 全高:2.56 m
全備重量:2,780 kg
エンジン:イスパノ・スイザ12Y-45 液冷V型12気筒 910 hp
最大速度:529 km/h
航続距離:戦闘998 km、輸送1530km
武装 :ダルヌ7.5mm機銃 4基
イスパノ20mm機関砲×1
☆制作
作例は、タミヤ1/48のドボワチンD.520を、ほぼそのまま作成しています。ディティール、細部はDTUの本を参考にしています。
組み立て時注意した点は、以下のとおりです。
1.胴と主翼の間(フィレット部と機体下面)に1mm弱の隙間が空くのでプラ材などで摺り合わせる。
2.機体下面の滑油冷却器が別パーツになっているが、胴体、冷却器側の部品を削って摺り合わせ、外板の段差をなくす。
3.垂直尾翼前端がやや丸く感じたので、削り込む。
4.コクピットの操縦席上部の、パイプと帆布の間をピンバイスで穴空けする。また、シートベルトがないので、付け足す。(腰に横2本、肩の上から縦2本)
5.351機以降は、ラティエのプロペラからショヴィエールchauviéreのプロペラに変更されているので、そのスピナーを用いる。
塗装については、今回は、変則的な塗装例を参考にしました。
この機体は、ジャンクからの再生機であり、フランス空軍の正式な迷彩を施していません。
下面色は正式ですが、上面色は上面迷彩色のニュートラルグレー単色としました。
302号機と397号機が、全面下面色単色か、下面色そのまま、上面迷彩色ニュートラルグレーかは、不鮮明な写真だと分かりづらいので、どちらと断定することは出来ません。
最近のフランスの模型雑誌の写真やら塗装図やらをひろうと、Wing Masters別冊3の397号機塗装図では、上面迷彩色グレー、下面ライトグレーの塗装考証となっています。
今回は、これに沿って、下面色と上面色が違う塗装としました。上面色ニュートラルグレーは、写真より汚れ退色が激しかったようなので、タンを混ぜて退色させた色を数色吹き付けています。
塗装後、ホルベインの水性油絵の具 アクアオイルカラーデュオの、ローアンバーで墨入れを施しています。
模型の塗装指示は、タミヤカラーのものでしたので、ハセガワ1/72のドボワチンD.520の塗装指示を参考にしました。
☆塗装
塗装に使用した塗料は次の通りです。
・機体内部色 ニュートラルグレー(13)
・機体下面色 グレーFS26375(308)
・機体上面色 ニュートラルグレー(13)
・国籍マーク リタッチ 赤 シャインレッド(79) 青 ミディアムブルー(72)
・主脚 グレーFS26375(308) オレオ部:シルバー(8) タイヤ:タイヤブラック(137)
かっこ内はミスターカラーのナンバー、かっこの後ろの数値は調合の比率です。
デカールは、ILIAD DESIGNのドボワチンD.520用デカールを使用しました。ただ、機体シリアルナンバーは、再生機である点と、302号機の写真に見えない点から貼っていません。