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【4.果てぬこの想い】
〜1997・10・4・アルマトイ・カザフスタン戦〜
1−1

勝ちきれない中央アジアの遠征が続いた。否定しようとしても、こみあげてくる不安を隠しきれなかった。その度に、さらに強く否定した。どうしてなのだろうか。こんなに大事に想っているのに。こんなに好きなのに。どうしてこの想いは伝わらないのだろうか。夜も眠れずに想い続けても、振り向いてはくれない。でも、忘れる事なんてできやしない。結局は、気になって気になって仕方が無い。肩透かしをくらっても、何だか裏切られたような気がしても、それでも好きにならずにいられない。これこそ、恋の病だ。…なんだ。日本代表に対するこの想いは、まるで恋と同じではないか。やるせない想い。果てぬこの想い…。

10月4日。駒場スタジアムで日本−カザフ戦を観た。駒場スタジアムは、レッズ戦終了後に無料開放され、多くのサポーターが集まった。雨のそぼ降る浦和駒場スアジアム。しかし、みんなが声を枯らして、オーロラヴィジョンに向かって、コールを送った。太鼓を叩きながらの大声援。よく耳を澄ますと、NHK−BSの中継の向こうから、日本サポーターの声援が聴こえてくるではないか。そしてそのコールに声を併せる日本にいる私たち。遠く、見も知らぬ国、カザフスタンで戦う日本代表。その遠い異国まで行ったサポーターと、日本にいる私たちが、1秒とないタイム・ラグのなかで、同じコールをしている。これは駒場だけではないだろう。世界中のテレビの前で、同じ光景が見られただろう。
加茂監督更迭?そんなことはどうでもいいような気さえした。どうだってよくはないけど、どうにでもしてくれ、と思った。この日、ロスタイムで同点に追いつかれての引き分けは、負けに等しいような重圧を、日本代表に、そして私たちサポーターに投げかけた。その重圧を強く、強く否定し続けることだけに集中した。弱くなんかない。負けない。負けないんだ。
なぜこんな想いをするのか考えた。日常の生活がある。私にも仕事がある。学生の人には授業もあるだろう。それがたかが「サッカー日本代表」に心をとらわれて、昼も夜も、いてもたってもいられないのだから、世話が無い。これは一体なぜなのだろうか。別に、韓国に負けようが、カザフスタンに負けようが、私たちの命に別状などないのだ。日常生活に支障もきたさないだろう。しかし、現状はどうだ。寝ても醒めても、心を捕らえて放さない。これは一体何なのだろうか。先日の日韓戦で、前夜に数千人を超える徹夜組が出たのはなぜか。たかがオーロラヴィジョンでの放送に、数千人の人が駒場に集まるのはなぜか。みんな、サッカーが好きなのだ。日本代表を愛して止まないのだ。
神にもすがりたかった。私には一体何ができるのか、教えてもらいたかった。私が知るただ一つの事。それは、ひたすらに信じ、そして声援を送り続ける事だけだと悟った。
もう、これは盲目の恋なのだ。加茂さんの采配が思わしくない?選手起用がおかしい?そんな事は解っている。それでも。それでもサッカー日本代表を愛して止まないのが、サポーターではないのか。ここで応援を止めるサポーターが、一人でもいるだろうか。もしもいるとしたならば、本当にサッカーを「愛して」いるのだろうか。私たちにできる事。それは信じて、応援を続ける事。それ以外にほかならないのだ。指摘?追求?糾弾?そんな事はいつでもできる。「今」、もっと必要な事があるはずだと思った。。頭の中では、「オー…フランスー…」というメロディーが浮かんで来る。気づくと、「アレアレニッポン」を口ずさんでいる。これは恋と同じなんだ。気が付けば、「あのひと」の顔が脳裏をよぎる。頭に来ても、キライになんかなれやしない。好きにならずにいられない。やるせないこの想い。果てぬこの想い…。
とにかく信じようと決めた。何があっても。人を、愛する事とは、そうではないか。信じる事だ。夢を、この想いを、諦めない事なのだ。何があってもいい。この後、残りを負けるんじゃない。日本代表。もう一度、顔をあげて、明日の事を考えてくれ。世界中の日本サポーター。私たちは、彼らに惚れてしまったのだから。彼らが疲れた時、ピッチに降りて、彼らの肩を抱く事は、できない。カズが涙ぐんでいても、「諦めないでくれ」と声をかけてやることもできない。能活が「バカじゃないの」と自分を責めても、それに言葉をかけてやることはできない。しかし、今週末にはまた彼らはウズベキスタンのフィールドに立つのだ。そのあとにも、まだ全部で4試合、残されているのだ。私の言う事など気休めだと思うかもしれない。しかし、それでも私は信じたい。世界一のサポーター、日本代表サポーターのみんな。この恋を、この果てぬ想いを、貫き通すんだ。今、信じないでどうする。今、応援しないでどうする。今、愛さずにどうする。今までやってきたことは、どうなってしまうんだよ。
今後の予選勝ち抜きの星勘定と分析は、マスコミの方々にお任せする。加茂監督と長沼会長の動向、次監督の起用は、協会にお任せする。選手たちの心のうち、私サポーターの心のうちの分析は、心理学者にお任せする。そんなことはもうどうでもいいんだ。私たちができること。私たち、サッカーを愛し、日本代表に恋焦がれる私たちにできる事は、バカみたいに果てぬ想いを声援に変えて送り続けるだけなんだ。 今、日本代表に必要なものは、勇気だ。その勇気を彼らに与える事ができるのは、私たちサポーターの祈りなのだ。だから、果てぬこの想いを、祈りに変えて、贈ろう。

「眼を閉じると、フランスの青空が見えるような気がしないか。」
求め続ける勇気。そして信じ続ける勇気。


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