「風水 瞬」探偵事務所


ファイル15「長崎小学生殺人事件」
 小学生がクラスメートの喉笛を切り裂いたショッキングな事件が、ちまたを賑わせている。
 座らせた彼女の後ろから片手を頭に巻き付けてカッターを首筋に滑らせるという映画のワンシーンの様な手段と、加害者ホームページへの被害者の書き込みが動機という点が目を引く事件だ。
 でも私が気になったのは違う2点だった。
 1つ目は殺害する事を決めてから実行するまで4日もあった事だ。確かにカッターを使う授業が無かったのが理由と言う事だが、12歳の少女が4日間も殺意を維持していた事じたいが意外だった。人間という自然の摂理から外れた生き物だけが持つ強烈な負の感情、これを維持するのにどれだけの意志の力が必要か・・・。
 2つ目は15分もの間、死体と一緒に居て死んだ事を確認していたという点だ。今までの常識では加害者は死体を恐れるとされていた。それがこの事件では死体を突いたりして完全な死を確認していたというのだ。冷静と言うより、何かが壊れている。
 おかげで犯罪心理学の本は改訂する事になりそうだ。

ファイル14「サッカー観戦の必需品」
 日本ではワールドカップが大いに盛り上がっている。世界でも出場している国は同様らしい。ただちょっと違うのはサポーターの観戦グッズのようだ。
 日本でよく見かけられるのはメガホン、国旗、双眼鏡・・・って所だが、ロシアではこれに火炎瓶が追加されるらしい。この間の日本戦の時広場で中継を見ていた人の中に点が入った直後に火炎瓶を投げ、車を破壊し、すし屋を襲った連中がいたらしい。海外ではサッカー見るのにも完全武装で行かなければならないらしい。なんだかな。

ファイル13「人間を殺す事の正当化」
 ニューヨークのビルが突然地図から消された。この事件で「神風」が話題になったサイトが結構あった。
 多くは「神風」と「テロ」は違う。「神風」には歴史的背景があり、自分の主義主張を通すための「テロ」とは違う。エトセトラ・エトセトラ。
 でも人間を殺すことを正当化する理由なんて存在するのだろうか?
 正当防衛は?自分の命を守るために相手を殺す。でもそんなやばい状況に追い込まれなければ殺す必要は発生しない。死刑は?処罰される人間にとっては最恐の刑罰かもしれないが、そいつが殺される事で何か解決されるのだろうか?犯罪への抑止効果はあるとは思うけどね。
 そして、どんな理由が有るにしても、社会的に許されたとしても、殺した人間は必ず背負わなくてもいい重い物を担ぎ続ける事になる。殺す事を正当化する事なんてできはしないんだ。

ファイル12「リアルとアンリアルの狭間」
 西欧のとある国の政府がテレビ局へ次のような要請を出した。
 「真似をしてビルから飛び降りる子供が居るのでポケモンの放送を中止しろ。」
 それって何か間違ってないかい?んじゃ、そちらの国ではスーパーマンもスパイダーマンも放送禁止って事になる。冗談でしょ!
 日本でも似たような事があった。とある過激な映画を国会が問題にしたと言うんだ、暇な政治屋さんだ。暴力的な映画を見たから犯罪に走るなんて、100%否定はしないが、それってそいつのまわりに現実と非現実の境目をちゃんと教えられる人間が居ないって事だよね。大人の詭弁て奴を感じた瞬間だな。

ファイル11「Broken Generation」
 春になると何処かのネジが抜け落ちてしまう連中が毎年居るのは有名な話だ。しかし、今年のはちょっと変わっていた。
 「殺人を経験する必要が有ると信じ込んだ妄想男」「目立つことをやりたいと言ってバスジャックしたショートサーキット男」に「夢ので人を殺すように命じられ実行したサイコ男」、これだから世紀末は目が離せない。
 しかし、この一連の事件には面白い共通性がある。それは犯人が全て17歳と言う点だ。ついでに言うならあの酒鬼薔薇君も同じ年なんだな。
 ここまで来ると偶然の一言ではすまされそうにない。あの世代に何があったのだろうか、17年前に彼等がこの世に生を受けた頃、ひょっとしたら表沙汰にはならなかった核実験でも行われていたのでは?それとも胎児にだけかかる特殊な細菌でもばらまかれたのではないか?
 考えただけでもワクワクしてくるね、これからもあの世代は要チェックだね。

ファイル10「その連中をそう呼ぶのは間違いだ」
 少年が一人死んだ。この歪んだ時代にそれは珍しいことではなかった。原因は川に入っていて体温が下がった為による内臓の機能障害。でも真の原因は理由のない集団リンチだった。相変わらず凶暴で狂った街だ。でもこんなニュースは最近は珍しくないのも事実だ。
 しかし、俺がこの事件で気になったのは、とあるニュースだった。
 そのレポーターは、集団リンチを仕掛けていた連中を被害者の「仲間」と紹介していた。俺の記憶が確かならこういう関係を「仲間」とは呼ばないハズなんだがな。
 あのレポーターは、自分を死に追い込んだ連中を「仲間」と思うのだろうか?

ファイル9「神は彼らに何を告げたのか?」
 この所宗教絡みの事件が多いのはやはり世紀末という時代がなせる技なのだろうか?選民思想にとりつかれ貧者の核兵器を作らせた教祖、セミナーに参加すれば癌すらも治すという指導者、頭に触れるだけで生物学的死を超越させるグル。この神も仏も無い日本に現れる神の使徒達はかなり変わった啓示を受けて目覚めているようだ。
 ただ、私は彼等の事や起こした事件より、彼等を神に祭り上げた人間の方が興味がある。彼等が釈迦の様に生まれながらにして神の使徒を自覚していたとは思えない。誰か優秀な洗脳屋が彼等をその気にさせたはずだ。その「誰か」は普通の凡人を神の使徒に仕立て上げたのだ。そう考えると暴走して壊れた傀儡よりも、「どうやって作ったか」が気になるのは当然でしょ。
 手に入れてみたいと思いませんか、「神を作るテクニック」。

ファイル8「冤罪の生み出す罪とは」
 この間「甲山事件」が冤罪だったと報道があった。何でも21年ぶりに無実が証明されたとか。無実を勝ち取っておめでとうパチパチといった報道が多かっが、ちょっと待て。死んだ人間がいて、それが自殺や病死でなければ、そこには加害者が存在したはずだ。しかし今回の事件では冤罪が確定するまでに21年、確か殺人の時効は15年のハズ。するとこの事件は冤罪の確定と同時に時効が成立した事になるのではないだろうか?すると冤罪で捕まった人の人権は守られたが、被害者の人権はどうなるのだ?何か引っかかる物を残す事件だった。

ファイル7「英雄の死とは」
 とち狂った航空マニアがハイジャックをして捕まった。これ自体はそんなに奇異な話では無い。不思議なのはその後、死んだ機長を英雄視するマスコミだ。機長がとった行動は確かに的確で勇敢であった。それに敬意を表すのは否定しないが、持ち上げすぎだと思う。あれでは今後このような事件が起きた時、機長は全員死ぬ覚悟をしなければいけない。彼等にだって待っている人が、守るべき人がいるんだ。家族だって英雄としての死より、格好悪くたってかまわないから生きて帰ってくることを待っているんだから。

ファイル6「毒物混入模倣事件」
 ちょっと古い話だが、中学生及び中学校教師の自宅にクレゾールが、ダイエット飲料として送りつけられた事件があった。事件自体はこの間有った事件の模倣犯とも言えるが、その後の学校の発表とインタビューに答えていた学生のコメントが笑わせてくれた。
 学校側の発表では、犯人に対して昔イジメの様な事があったが、現在は全くないと発表した。
 おいおい、冗談はよしてくれよ。犯人、しかも女生徒が、愉快犯の様に無作為に犠牲者を選んだって言うのかい?しかもターゲットには教師までいたんだぜ。どう考えても確信犯だ、犠牲者には自覚が無くとも明らかに恨みを買ってると考えるべきだね。
 もっと笑わせてくれたのが、同じ学校の女生徒だった。TVのインタビューに犯人の女生徒が学校へ戻ってきたら今まで通り受け入れると話していた。
 TVだからってカッコつけすぎだよ。殺人未遂犯を優しく受け入れてくれる社会が歴史上存在したとは思えない。それとも、今まで通りイジメてあげるって意味ならば別だけどね。

ファイル5「北朝鮮ミサイルの余波事件」
 この間北朝鮮のミサイルが日本の空を散歩していたらしい。それ自体には私はあまり興味がなかった。でも、その後起きた事件には、脳味噌の回路がショートしているんじゃないかと思った。
 ミサイルに怒った市民が在日朝鮮人に強迫状を送ったり、数々の嫌がらせを行っているというのだ。何を考えているんだか、子供にだって理解できるようなひどい逆恨みだ。確かに頭の上をミサイルが通過していった事は恐怖だろうし、怒りもわくだろう。しかしだ、在日朝鮮人全てが諜報部員だとでも言うのか?罪もなく、弱い子供に対し危害を加えようとするなんて本末転倒もはなはなだしい。何勘違いしてるんだ。W.W.2の時、多くの日系人がアメリカで迫害された事を今でも怒りの対象としている国の人間が同じ事をするなんて。
 人間なんて、そんなもんだと判っているつもりなんだけど、なんだか割り切れないな。

ファイル4「毒物混入事件」
 最近世間で食べ物に毒物を混入する騒ぎが連続して起きている。最初のカレーの事件だが、警察の発表を聞いていると犯人の行動が何か幼い感じがする。
 まず動機がはっきりしない。一人の人間を殺害するため、もしくは一人だけを殺害すると怨恨の線で発覚するのをおそれ、まとめて殺害したとは考えにくい。何故なら毒物の混入が配られる直前と言うことから、ターゲットが必ず毒入りのカレーを食べる確率はそんなに高くはない。それに、先に他の人間が倒れ始めたらターゲットは決して食べない等の不確定要素が多すぎるからだ。
 次に、毒物が二種類使われた点。青酸性と砒素系の毒物、どちらもおなじみの定番の物であるが、何故2種類使ったのだろう?薬物に詳しい人間なら一つ一つがどれだけの殺傷力があるかは知っているはず、2種類も用意する必要は無い。又、鍋が3つあったのに一つには検出されなかったと言うことなので、毒物の量は少ない。これには、犯人が調達できなかった場合と必要な量が判らなかった場合の二通りが考えられる。
 以上の点から考えてみると、動機の曖昧さ、手段の稚拙さ、計画性の無さが感じられる。従って、今回の犯人はかなり衝動的で幼稚な発想でこの事件を起こしていると考えられる。ひょっとしたら又、犯人は子供かも知れないと思わせる事件であった。

ファイル3「女教師刺殺事件」
 この間、中学生がバタフライナイフで教師を刺殺する事件が起きた。マスコミは毎日のように報道を繰り返している。これを聞いていて、ちょっと疑問に思ったことが有る。
 犯人の少年は、自分を注意した教師に対して「殺してやる。」と言っていた。マスコミはこれを犯行予告のように報道しているが、はたしてそうだろうか?
 現代の日本に於いて「殺す」という言葉は、一昔前とは比べようもないくらい重みを持たない言葉になっているとは思わないだろうか。こんなセリフちょっと腹を立てた小学生だって吐いてのける、本来この言葉の持つ重さを知らずに。
 別に犯人を擁護する気はさらさらないが、あの報道についてはいまいち納得がいかないのも事実だ。

ファイル2「酒鬼薔薇聖斗事件」
 それはまだあの事件が起きて間もない頃のことだった。挑戦状の一部が公開され犯人像も全然分かっていなかった。始めは全然興味もなく気にもしていなかったが、あるニュースで挑戦状の一部が紹介されていた。それを聞いた時直感的に犯人は若いと思った。さすがに14才とは思わなかったが、10代後半から20代前半だと。理由は犯人の行動が無意味で幼稚である事、挑戦状の文章のあちらこちらに映画やマンガのセリフと酷似した物が見受けられることなどがあげられる。そして、この犯人はすぐ捕まるだろうと友人達に宣言した。
 はたして、予想よりは遅かったが捕まった犯人はご存じの通り少年だった。
 何が彼をそこまで壊してしまったのかは私には分からない、なにせ私も壊れている人間の一人なものですから。

ファイル1「闇に光るものを追え」
 それはゴールデンウィークが終わったばかりの穏やかな春の日だった。
 クライアント「A」からメールが届いた。
 「深夜のドライブ中に海辺で変な光を見た。近づいてみると波の中で細かくキラキラした物がいっぱい黄緑色に光っていた。あの光はいったいなんだ調べてくれ。」
 早速私は調査を開始した。その結果次のような可能性が出てきた。
1.単なる目の錯覚。
2.夜光虫
3.海蛍
 ここで、クライアントの名誉のため1は却下。光は黄緑色だったと言うことなので、青く光る3の海蛍も却下。従って2の夜光虫であると結論を出した。そしてクライアントに報告。但し、何故固まって光っていたかについての報告はあえてしなかった。なにせ夜光虫は魚等の死体にたかって食事をする習性がある。と言うことはクライアントが見た幻想的な光の中にそんな物が有ったなんて知ったら、かなりがっかりすると思ったからだ。まぁ、事件は無事に解決した。


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