UP時間がちょっと遅れましたが、まだ毎日更新してますー(^^;;
いや、予定だと最終話だけ、1日空いてからのUPになると思いますが…。




 9.

 「え?ちょっと待て…なんで突然っ」

 帰ってきてすぐ、ヒイロがいった言葉に、デュオは驚いて大声を上げた。

 「カトルからの招待だ。お前もクリスマス周辺は休みをとってあるといっていただろう。」
 「っていっても確認も取らずになぁ…」

 怒っているように見せかけているが、その真剣さは怒りのせいじゃない。
 僅かに青ざめた顔色は、隠しても、事情を知っていればすぐに分かる。
 デュオは必死になって抗議をしてきた。
 だが。
 
 「問題はない筈だな?」

 そう聞けば。
 彼は言葉を濁しながらも、諦めたのか、了承の返事を返してくる。
 それからすぐに、大きく溜め息を吐き出して…瞳を苦しげに歪ませた。

 カトルからの、内輪だけのクリスマスパーティの誘い。
 日付は12月25日。
 24日はどうしても終戦記念パーティの方があるから仕方ないが、よければ数日前から、L4のとあるコロニーにあるカトルの別荘にこないか、と。
 デュオにいった話はそうだった。…そして、それはデュオを暗示から助ける為の計画でもあった。


      ************


 『12月24日、0時0分丁度。”シルバーベルの子供”への、最後の暗示は発動する。』

 他の”シルバーベルの子供”を調べて分かった結果。
 奇妙な事に、彼らは皆、同じその日のその時間に自殺をしていた。
 何故そうなのかはわからない。だが、ヒイロが調べた者達が一人も例外なくそうであった以上、”シルバーベルの子供”達全てが、わざとそう設定されていると考えられる。
 ただ、違いがあるのは設定された年であるが…デュオの様子を見て、今年のクリスマスが、彼の期限なのだというのに間違いはないだろう。つまり…スイーパーグループは、メテオが長引いても3年と予測していたのだ。

 『そこまで細かい時間が分かっているなら簡単だ。その時が来たら、奴が自殺なぞ出来ないよう、猿轡でもかませてどこかに縛り付けておけばいい。』
 『そんな乱暴な…その時間が過ぎるまで、デュオには悪いけど、薬で眠っていてもらうというのはどうでしょう?』
 『…いやまて。寝ていれば発動しない程度の暗示なら、今迄助かった者もいた筈だ。本人の意志に関係ない無意識の部分に暗示が植え付けられているなら、意識のない寝ている時は、逆に余計発動しやすい可能性もある…。…ただし、これはあくまで仮定だからな、方向性としてはその時間に、何らかの方法でデュオが自殺できないようにしておくという考え自体は間違っていないだろう…。』

 ただし、状況が状況であるから、念には念を入れて。
 幾重かの保険をかけて、計画を立てた。
 その場にカトルがいたという幸運が、かなりの無茶をも可能にさせて…それでも全ての不安が拭えたわけではないのだが。

 既に暗示を掛けた本人が死んでしまった以上、暗示を解くという方法は選べない。…いや、デュオを調べれば解けるかもしれないが……彼に、こちら側がその事を知っているのを、気づかれてはいけないだろう。
 今回、デュオ本人が、掛けられたであろう暗示の事を知っているのは間違いない。
 なのに、それを誰にもいわないのは…彼が自分だけでどうにかしようとしているか、既に運命を諦めて受け入れるつもりであるか…どちらにしろ、こちらが知っている事を知れば、彼は確実に逃げるだろう。

 ごめん…。

 彼が最近、何度もヒイロにいっていた言葉。
 恐らく、彼が選んだのは、運命を受け入れて死ぬのを待つ事。

 …冗談ではない。
 自分に何もいわずに死のうなど、そんな事、許せるものか。

 感じるのは怒り。…けれど、その奥にあるのは…もっと別の、怒りの熱とは正反対の冷たいモノ。
 彼が、死ぬ、という事。
 その事が、自分に与える本当のモノは考えたくない。

 知った時は、一瞬目の前が怒りで赤く染まった。
 それだけの重大な話を、自分に知らせない彼に。
 教える必要がないと、思われている自分に。
 だが、怒りを感じている内はおそらくまだ良かった。

 怒りを落ち着けている内に、ふと、気づいたのは。

 …もし、本当に彼が死んでしまったら…自分は何を思うのだろう…?


      ************


 「げっ、周回便?!」

 未だ文句をいうデュオをひきつれて連れてきた宇宙港で、デュオはシャトルのチケットを見せた途端に大声を上げた。

 「仕方ないだろう。この時期それくらいしかチケットが取れなかったんだ。」

 これが嫌ならカトルに自家用シャトルでも頼むしかないが…奴にそこまで迷惑を掛ける訳にはいかないだろう、といえば、デュオは大人しくなる。
 年末のこの時期、コロニー行きの便はどれも満杯だった。
 燃料補給や乗客の入れ替えをしながら各コロニー間を回る周回便だと、目的地へ着くのに1日、ルートによっては2日の差が出る。

 「って事は着くのは…」
 「22日の夕方だが、問題があるのか?」

 いえばデュオは、少しだけ青ざめていた顔を横に振る。見返した顔は既に笑顔になっていたが。

 「なんでもねー。そっか、周回便でも結構速い奴なんだな。そんじゃ問題ねーか…。」
 「……そうだな。」

 ヒイロはデュオに気づかれないよう、握っていた掌を更に強く握りしめた。





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