この話、実は殆どヒイロサイドで話しが進むんです(^^;;。



 2.

 『どうかしたんですか?ヒイロ。』

 余りにも珍しい相手からの連絡に、カトルは回線が繋がった途端に驚いた表情を見せた。
 それでもすぐに、相手の話を聞こうと口を閉ざして待つような間をくれたカトルに、ヒイロはほんの僅かの逡巡を見せてから口を開く。
 …恐らく、無駄ではあると思いながらも。

 「デュオについて…何か、あったという話を聞いているか?」


     ******************

 
 デュオの様子がおかしい事には、随分前から気づいていた。
 …とはいえ、彼に直接聞いたところで何も答えないだろうという事くらい、ヒイロには分かっていたし、彼がそれに自分が関わって欲しくないと思っている事も、その様子で分かっていた。
 だから本来、デュオに何かあったとしても、それはあくまでプライベートであって、自分の立ち入るべき事ではない。…それは十分に分かっていたし、お互いの立場や気性を考えても、普段のヒイロならば気になどする筈がなかったのだ。

 けれど、なんだろう。

 しいていえば、胸騒ぎとでもいうのだろうか。
 いや、そんな漠然としたものではない、もっとハッキリとした不安感が、最近デュオを見るたびにヒイロの胸に湧き上がってくる。

 デュオと一緒に暮らすようになって、ヒイロは初めて、ある程度都合を合わせるように相手の様子や予定を考慮する、という生活(いわゆる他人との共同生活)の仕方を覚えた。そうして彼を見ていたことで、戦時中には気づかなかった彼の事をいろいろ知る事が出来て、その事が、余りにも自分が今迄持っていた彼に対するイメージと違って、驚きを覚える事も少なくなかった。

 図々しくて、慣れなれしくて、騒がしくて、おせっかい。
 確か自分が、戦時中、ずっと彼に見ていたのはそんなイメージ。
 けれども、それは彼が意図的に纏っていたイメージだという事を知ったのは…いや、そうでない部分を彼が見せてくれたのは、彼が少しづつ自分を心の内に入れているのだと感じた時だった。
 例えば、彼はあれだけ明るそうに振る舞っていて、なのに、声を出して笑ったところをみたことがなかった、とか。
 戦時中は、暇さえあれば無駄なおしゃべりをしていたくせに、今、家で素のままで生活している時は、何か用件でも無い限り彼から話してくる事はあまりない、とか。
 能天気な馬鹿者だと見下していたかつての姿は、うわべの作り物だったのだと、その事に驚いて…でもそれよりも、彼の本当の姿を見れた事の方が自分にとっては重要らしいという事に気づいて。

 余りにも、自分が今迄知っていた彼とは違ってる彼。…そしてそんな違いを見つける事が何故か楽しみだとさえ感じている自分。

 デュオ、という人間はヒイロにとって、出会った時から…意味はその時その時でいつでも変ってきたけれど、不思議な…今迄会ってきた他人のように無視できない何かを持っていた。…いや、ヒイロに、いつも何か他の人間とは違う感情を持たせた。
 それが不思議で、不可解で、最初は確かに苛立ちしかなかった彼に…だが気づけば、何時の間にか彼の存在を傍に許す自分がいた。

 不思議なのは、彼。
 不思議なのは、自分の感情。

 わからない事に苛立って、体を繋げてみたりもしたけれど、…いつももう少しで分かりそうなのに、やはりわからないから。
 よくも悪くも、他の人間とは別の感情を感じる彼の傍にいて、それが何故なのかを見つけたかった。だから、彼と暮らす事にした。

 それでも、まだ、答えは見つからない。
 彼に触れる度に、何か分かりそうな気がするのに、未だ、答えは自分の中に見つからない。
 それは時に、酷いもどかしさを自分に感じさせるけれど…今の生活に心地よさを感じてもいたから……自分は、もしかして答えをわざと探していないのかもしれない。
 こんなにハッキリしない、けれどそれをハッキリとさせたくないとも思う、自分の感情こそが一番不可解で……。

 いつか、答えが、出る時はくるのだろうか。

 だた、今、一つだけ分かる事は。
 自分が、デュオの傍に、自分の意志でいる事を望んでいるのだ、と、それだけだった。





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