一応短期集中連載…の予定(^^;;いつもに比べて一回の文章量が少ない分、コマメにUP…出来るかな?
希望ではクリスマスに終了したい…けどけどけど…予定は未定vv。




 1.

 だって、仕方なかったんだ。

 その時の俺は、自分の命なんかいらないやって思ってたし。
 このままただの浮浪児でだらだら生きてるくらいなら、力を手に入れて、人の為に大きいことやって死んだほうがいいって思っちまったんだから。

 …だって、まさか、戦争が終わって生き残るなんて思わなかったから…。



 「う〜。」

 目覚めは、最悪。
 頭が痛い。
 デュオは、がんがんと響くような痛みに顔をしかめて、それでも暫くすれば治るだろうと、とりあえずは起き上がる事にした。

 「痛ッ」

 だが今度は、頭痛ではない、もっと直接的な痛み。
 起き上がろうとした途端、ひっぱられた髪の毛に思わず目から涙が出る。

 「ったく、またかよ…」

 仕方なく、手で、ぴんと張った髪の毛の数房を持って軽く引っ張り返す。そうすれば『彼』の体の下に敷かれた髪が手元に戻ってくる。
 この、こちらの髪の毛を何時の間に解いて、あまつさえそれを敷いて寝てしまった『彼』をじとりと睨んで…。だが、出会った頃からは想像も出来ないようなその『彼』のあまりにも無防備な寝顔を見てしまえば、その怒りも霧散してしまうというものだった。
 俺も、甘いよなぁ。
 あの、ヒイロ・ユイがこんなにも自分を信用して、同じベッドで熟睡しているという事実。
 起きていればキツイ瞳に射抜かれるものの、寝ている彼の顔は歳相応よりも幼く見えて、少しばかりかわいいかも、なんて思ってしまう。
 いやまぁ……などとこんな事を考えてしまうのも、惚れた弱みというヤツか。
 なんでまたこんなのに…なんて思っても後の祭りというものだろう。
 彼は、自分の事をどう思っているか…気にならないといえば嘘だけど。いや、彼の自分に対する態度を見れば、希望的な答えを導き出せてもしまうけど…でも、やっと人らしい感情を持ちはじめた彼の事、不器用に、けれど精いっぱい自分を気遣おうとしている様が、そう見えてしまうだけにも取れるから…期待なんて、しない。そう、こうして、自分の横で眠ってしまえる程信用してもらえるという事実があれば、自分としては十分すぎるくらいに報われていると思うのだ。
 あぁ、そういや。
 クスリ、と笑みを零して。
 少なくとも、この髪の毛は気に入っているらしい、と。デュオは思いながら邪魔な髪の毛を手で纏める。
 それから、枕元のゴムを見つけて、髪の毛をとりあえず後ろで一つに結んでから、今度はじっくりと彼の静かな寝顔を見つめた。

 だって、仕方なかったんだ。
 こんなことになるなんて思ってなかったんだから。

 眠るヒイロの顔を見て、デュオは深いため息を漏らす。
 こうして、彼の傍にいられるのも、後何日の事だろう。

 「仕方ねぇか。ごめんな、ヒイロ。」

 小さく、小さく呟いて。
 ふぅ、とまた息を吐き出してベッドを降りようとすれば。

 「何がだ。」
 「……!!」

 起きる気配なんてまったく見せてなかった彼が、寝起きとは思えないハッキリとした声で聞いてくる。

 「うわ、てめぇ寝たふりしてやがったな。きったねぇ。」

 驚いてそう喚けば、煩そうに顔を顰めて、ヒイロもゆっくりと起き上がった。
 視線が同じ位置になって、寝起きのせいか、いつも以上に不機嫌そうな目がこちらを睨んでくる。

 「何が、ごめんだ。」

 オーバーにリアクションを起こす事で誤魔化そうと思っていたのは、失敗に終わったらしい。
 だから仕方なく、デュオは肩を竦めてわざとらしいくらいに、困った顔を作って答える。

 「いやその…俺みたいなのと一緒でさ、なんか…その…ごめんって…。」

 冗談めかして言葉を告げて、でも少しだけ真剣さを瞳に混じらせれば、ヒイロはだまされてくれるはず。
 嘘を付くのは主義じゃないんだけど…とは思っても、今言った言葉は嘘じゃないし、折角のあと少ししかない楽しい日々をぎすぎすして過ごしたいとは思わないから、この場合、嘘であっても方便ですませてもらうとしよう。
 …きっと、後で彼は怒るだろうけど。

 「何をいっている…」

 ヒイロの顔は益々不機嫌さを増していて、それを恐々上目使いで見れば、彼はあきれたように大きくため息を吐いた。
 それから、腕を伸ばして。

 「ち、ちょっと、ヒイロ?」
 「煩い、黙れ。」

 あっとゆうまに、がっしりと抱きしめられてしまって、身動きが取れなくなる。
 軽く身じろぎしてはみるものの、ヒイロの力で抱きしめられていれば、こちらから離させるのは不可能かと、デュオはあっさりと諦めた。
 だから、体の力を抜いて。
 ヒイロの好きにさせて、抱きしめられたまま、彼の肩に頭を置いてみたりして。
 何も言葉を交わさず、ただ相手の体温だけを感じて、時がすぎていく。
 彼は自分が無口だということを自覚している分、言葉に出来ない事を態度で表してくれて、その唐突さにデュオはいつも驚かされる。こちらを思いやる言葉なんてひとつも言えない代わりに、よく、こうして抱きしめてくれる。
 それは、彼の優しさ、なんだろう、きっと。

 …だからな、ちょっと、誤解しちまうだろ?

 まるで、自分が望む意味で好かれてでもいるような、…そういう意味で大切にされてでもいるような。
 こうして一緒に暮らしているのだって、たまに体を繋いでいるのだって、お互いに都合がいいからの話だ。ただ、強い信頼関係が確立はしているから、お互いがお互いのテリトリーに相手を入れて、弱みを晒す事を良しとしている。自分達のような者にとっては、へたな恋愛感情よりも、その関係の方が価値があるくらいで、デュオは今のこの状態に十分すぎる程満たされているのだ。
 それに、もし、それ以上を手に入れてしまったら、きっと後悔してしまうから。
 時間は、もう、余りない。

 「ほら、ヒイロ離せよ。今日は俺の当番だからな、朝メシ作るからお前はも少し寝ててもいいぞ。昨日、またお前遅かったんだろ?」

 笑いながらやんわりと彼の腕を掴めば、やっと彼は抱きしめる力を緩めてくれる。
 こうして、抱きしめられるのは、すごく好きなんだけど。
 だからちょっともったいないけど、この心地よさに慣れてしまえば、今を手放すのが惜しくなってしまうから。…そうしたら、今の自分を保てないから。
 緩んだ腕からするりと抜け出して、デュオは今度こそベッドから起き上がると、憮然とした顔で見上げてくるヒイロにひらひらと手を振った。

 「じゃあな。出来たら起こしにきてやっからさ。」

 扉を閉めた音に溜め息が重なったのは、一体どちらのものだっただろう。







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