Machine Voice
【エピローグ・そよぐ風、揺れる雲】






 風がそよぐ、緑の丘。

 この場所はデュオとヒイロ、そして今回初めて連れて来てもらったα2しかしらない。

 『俺は宇宙育ちだから、やっぱこういうのはあんまり馴染まないけど、でもいいよな、すっげー奇麗だよな』

 この丘から見える風景は緑一色に満たされて、こうして眺めているだけでも飽きずにずっと見ていられる。
 夕方になれば辺りはオレンジ色に染まって、森の向こうに朱い太陽が沈む様がそれは奇麗だ、とデュオはいう。

 だから、ここを選んだ。

 そう話してくれたデュオの笑みは、少し悲し気ではあったものの、とても穏やかで優しい雰囲気を纏っていた。

 空は青くて、音は木々のざわめきだけ。
 樹齢はどれくらいになるのか、大木の下の木陰に座り込み、α2は、じっとデュオとその眺めを見つめていた。
 時間は流れ、だんだんと陽はその高さを下げて、少しずつ風景の中へ下りて来る。
 α2もデュオも何もいわず、ただその風景を見ていた。
 
 「α2っ、空が曇って来た、そろそろ帰ったほうがいいかもしんねー。」

 いってデュオは唐突に立ち上がった。
 背伸びをして、一つ大きく息を吐き出すと、何も入っていない墓標に向かって彼はいう。

 「じゃぁな、ヒイロ。またくるな。」

 それからすぐに背を向けて、彼は振り返らずに歩きだす。
 その背中をα2はじっと見ていた。

 「おい、α2?」

 かなり歩いてから、やっと気付いたのか、デュオは振り返って彼の名を呼んだ。
 α2は墓標を振り返り、手の中の何かをその前に差し出す。

 「これは、お前に返す。」

 掌の中のキューブ。ヒイロ=ユイの記憶が入ったそれ。
 α2はキューブを持ったままその手を強く握りしめた。
 パキリ、と小さな音がして、キューブは砕け、中のデータは破壊される。
 そしてゆっくりと手を広げれば、キューブの破片と中の生体部品が墓標の上に落ちて行く。

 「おいっα2、何してるんだ?」

 遠くでデュオが呼んでいる。

 「何でもない。」

 彼は、答えた。




END.



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