Machine Voice
【12・差し伸べる手、受け取る心・1】

最後の対決編…かな(^^;;
サイドがころころ変わって読みづらいかもです。すいません。






 「デュオは、どこだ?」

 だが、そういったα2の言葉に返って来る返事は「お前と一緒ではないのか」とそれだけ。
 互いに向こうといると思って、わざと気にしないようにしていたのがまずかった。

 「デュオがいないのか。」

 ヒイロが確認してくる。
 アパートから帰ってすぐ、デュオとはこの廃ビルの前で別れた。その時の彼は真っ直ぐにビルの中へ入っていったから、ヒイロのところへ行くのだろうと、α2はそう考えた。そうしてα2は食料の買い出しへ行き、だが帰ってきてヒイロの傍を見ても、デュオはいなかったのだ。

 「お前はデュオを見ていなかったのか?」

 当然の如く、ヒイロはα2を責める。
 それが彼にとって正当な権利であると思うから、α2はいいわけをしない。ヒイロも、ここでα2を責めていても問題の解決にならない事を知っているから、いつまでもそんな事で時間を潰したりしようとしない。

 「デュオを探す。」

 α2の呟きに、

 「当然だ。」

 と答える。
 そうすれば後は無駄なおしゃべりなど一言もない。
 互いに無言で外へと飛び出す。
 α2はすでに感覚を広げて、センサー系をめいっぱいに稼動させていたから、この周囲にデュオがいない事を確信していた。ヒイロもα2が自分に聞いて来た時点で、その事に気付いたから、彼はデュオ自身を探す事よりも、デュオが何処かへいったその手がかりを探す事にした。α2ほどの移動範囲と広い感覚を持たないのなら、彼が見落とす細かい部分を調べるしかない。

 ビルから少しずつ、範囲を広げてデュオの足取りが残されていないかを探す。
 …そうして、ビルから少し離れた、それでもあのビルから一番近い電話ボックスで、ヒイロは目的の手がかりを見つけた。

 「デュオ…。」

 半開きのままのドア、エネルギー系の武器であけられた穴。受話器は外れて落ちたままで、どう見てもこの電話を使っていたものがなんらかの襲撃にあった事は間違いない。そしてα2が調べれば、多分、この穴が奴等の武器であけられたものか否かはすぐに判明する筈だ。

 「α2!」

 彼の音を拾う為のセンサーは、現在最大まで範囲を広げている。だから、呼べば必ず聞こえている筈。そう考えたヒイロの読みは当たっていたから、程なくして、α2はヒイロの前に姿を現した。
 人間ではないから、息を切らす事はないものの、明らかに切羽詰まった表情をして、ヒイロの前に走って来るα2。

 電話ボックスの前に立つヒイロの、その周囲を見ただけで、彼は何も尋ねる事なく全ての事を理解した。

 「デュオ…。」

 彼も又、名を呼ぶ事しか出来ない。
 そして彼は、自分より正確に敵の事を知っている筈だから。彼が今感じているのは予想ではなくて、確信。
 大きく目を開いたまま、α2は答える。

 「デュオは…奴等に連れていかれた…。」

 予想していた答えに、ヒイロは歯を噛み締めた。
 頭の奥が、音を立てて凍って行く。


   □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 二人して、呆然と立ち尽くしたのはほんの数秒。
 だが、すぐにヒイロもα2も正気に返って、彼らがまだ出来る事をする為に動き出した。

 α2は思考を順に追って、整理をする。時々処理に割り込みをかけてくる、感情からの働きかけはできる限り無視をするようにして。

 奴等はデュオを連れて行った。
 この周囲の様子だと戦闘らしい戦闘にはなっていない。
 だからまだ、デュオは無事に…そんなにひどい怪我などしないで生きている筈。
 奴等の目的…最終的にはデュオを殺す事。だが、その前に彼らには、デュオの持つガンダムの情報を引き出す、という目的もある。
 デュオがその為に連れていかれたのは疑う余地もない。
 情報を引き出すまでは、デュオは生きている。
 だから、その前に助ける事ができるなら────。出来るなら問題はない。だが、もしも出来なかったならば。

 どうなるのだろう。

 今まで知る事の無かった感情が、また一つα2の中に芽生える。
 その感情の名はまだ知らなかったが、もしも彼にそれを教えてくれるものがいたならば、それは強烈な恐怖────だと、知っただろう。

 α2は身を震わせる。
 何故かは知らない。
 耐えられない。
 だがやはり、彼はまだその感情の為の表情を知らないから、顔を変える事も出来ず。
 ただ、感情をそのまま押さえずにいれば、体の震えが止まらないから、わざと感情の処理に規制を掛けて、自分がまだやるベき事を思考へ乗せる。

 早く、早く。
 デュオを助けなければならない。
 それが失敗したらだなどと、今は考えてはいけないから。


   □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 
 しくじった、とデュオは思った。
 少しの間だけならと、電話ボックスに一人だけでいったのはまずかった。
 だけど、この用件はα2と、そして出来ればヒイロにもいいたくなかった。
 だから、これは自分のミス。

 ぐるりと取り囲まれた電話ボックス。気付いた時にはもう手遅れ。
 多少の人数ならば、デュオも丸腰ではないから抵抗するつもりであった。
 しかし、この状態からではいくらなんでも無理であろう。
 そう判断したデュオは、実にあっさりと彼らの前に手を上げて出て来た。
 ここで無理に抵抗をして、動けない程のダメージをうけて奴等に連れていかれるくらいなら、最初から投降して、五体満足のまま彼らから逃げるチャンスを窺っていたほうがいい。

 『奴等の目的はお前の命、そしてお前の頭の中にあるガンダムの情報。』

 だから、奴等はまずはお前を捕まえようとする筈。ただし、奴等にとっては頭さえ生きていればいいので、どんなに酷い怪我をさせようが、お前を捕まえられれば問題はない。
 しかも、デュオの頭の中、ガンダムについての情報は聞き出すのが目的ではなくて、頭の中から直接データを読み込むのが目的だから。人間の脳からデータを引き出す為には、脳が生きた状態でなくてはならないから、それまでは、奴等はお前を生かしておく筈。
 ヒイロの遺体から直接データを取れたのも、実は敵に発見された時にまだヒイロが生きていたからだという。

 記憶が抜き取られるまでは、自分は殺されない。

 だから、今はおとなしく彼らに従う。スキを見つけて自力で逃げる事は不可能でも、出来るだけ時間を稼いで、そうすればもしかしてヒイロかα2が自分を助けにくるかもしれない。

 「っと、悪ィ。」

 彼らのデータでは、自分は足を怪我している。それは確かにそうだが、もう痛みも引いていて、サポーターをしている今ではほとんど支障なく動く、本当は。
 だけどわざとよろけて見せて、少しでも彼らから油断を引き出そうとする。

 「しょうがない。」

 リーダー格の男がそういって後ろを向いて顎をしゃくりあげると、中にいる大男がデュオの体を担ぎ上げた。

 「…ツ…。」

 その乱暴な扱いに、一瞬噎せそうになったが、デュオは黙って男に担がれるがままにする。
 両手は縛られ、担がれた状態の今でも、周りの男達が絶えず自分を見張っていて、この状態では流石に逃げる事は不可能だろう。
 だから、逃げるとすれば彼らのアジト…記憶を取り出す装置があるところへいってから。それから、装置に掛けられる前に逃げる、それしか手段はない。

 生きる望みがある時は、ぎりぎりまで足掻く。
 ずっと、デュオはそうして生きて来たら。
 子供の頃から、いつでもいつ死んでもおかしくない条件でばかり生きて来た。逆にいえば、生きる為にずっと足掻いていたから、今、生きていられる。

 それに。

 死ぬには、まだ自分がしなくてはならない事が多かったから。


   □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 「奴等はデュオの記憶を抜き出そうとする筈。そして恐らく、奴等はその為の装置をまだ持って来てはいない。ならば。」

 タイムマシンを使って、その機械を未来から送ってくる筈、そしてタイムマシンを使った瞬間ならば、そのエネルギーの発生源を探す事で位置を割り出す事が出来る…とα2はいった。

 他にデュオの連れていかれた先を見つける方法のない彼らは、だからそれに縋るしかなくて、今、α2はじっと彼らがタイムマシンを使う時を待っている。
 タイムマシンのエネルギー源を探るとはいっても、それを感じる事はかなり難しくて、センサーを最大感度にしてやっと、それも未来と今が繋がった一瞬だけしか感じる事は出来ないらしい。
 待つだけ、という事は本当ならばしたくなどないが、今は待つしかない。
 彼を信じて。


     −−−−−−−−−−−−−−−−−


 まだか。

 目を瞑って、じっと座り込むα2を見て、ヒイロは心の中で、又、呟いた。
 こうしてα2がじっとセンサーに全ての処理の優先を渡してしまってから、もう、1時間以上も経つ。
 デュオがいなくなってからは2時間弱といったところだから、時間が経つ程デュオの生きている可能性が減る事を考えれば、いくら平静を保とうとしても保ちきれるものではない。

 自分でも何度目かになるのも分からない程の溜め息を一つして、壁に背を凭れ、目を瞑る。
 そうやって自分を落ち着かせようとして、果たしてどれくらい効果があるのかは自信がないが、『デュオはまだ無事』だと自分にいい聞かせて、それを唇だけで呟いた。

 大丈夫、まだ死んでいない。
 きっと、間に合う。
 絶対に死なせない。

 掌を固く握り締めて、いう度に瞑っている瞼さえも力が入る。
 不安を押さえる為に、こうして時々大きく息を吐いて、力を抜こうともする。
 自分の中の感情を殺して、ただ待つ事に耐える。
 少しだけ落ち着いたら、またα2を見て、彼がまだピクリとも動かない事に苛立つ。
 そうして、また、自分を落ち着かせる作業を繰り返す。

 だが。
 息を吐いて、α2を見た途端、今度は彼に変化があった。

 動かないのはそのまま、じっと座ったまま、彼はやはりまるで動かない。
 だが。
 目を開いて────その瞳は人形のように無機質な印象をしていたが、彼は目を開いて…何かを感じている。
 暫くして。
 彼の瞳に生気が戻る。

 「デュオの居場所が分かった。」

 そういって彼は立ち上がった。






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