Love・ラブ・らぶ・ドリーマー



SIDE:デュオ
 デュオ・マックスウェルは悩んでいた。
 ヒイロは俺の事どう思っているのだろう…。
 と、いう事で悩みのネタは例にもれず、美形さんなんだけど今一つ人間味にかける愛しい恋人(?)の事であった。
 ガンダムもなく、やっとこさ戦争という枷から解かれたデュオが生涯一大決心をして告白したのはつい1カ月前。戦争当時から惹かれている事に気付いていたとはいえ、男同士だしなんか自分を嫌っているような態度とってるしと、どう考えても色好い返事を貰えると思えていなかったから玉砕覚悟だった、それは…。

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 「ヒイロ…、俺ッ、お前が好きなんだ。」
 「…(無言)…。」
 「男の俺にこんな事いわれてお前気持ち悪いかもしれないけど、俺…お前の事好きだから…それがいいたかっただけだから。…だから…その…もう会えないとしたって、そういうヤツもいたなって覚えててくれるだけでもいいから…その…」
 「…(無言)…。」

 ヒイロの表情は変わらない。いつも通りの無表情、ポーカーフェイスというヤツだ。なんの感情もない瞳でじっとただ観察するようにこちらをみている。
 ああやっぱり止めれば良かった…。
 いっているうちにも後悔ばかりが押し寄せてきて、デュオはもう何を言えばいいのかわからなくて、なんだか悲しくなってさえきてしまって、声もだんだん小さくなってしまう。

 「それでも俺…」

 もう消え入りそうな声で、それでも言葉を続けようとすれば。

 「もう会わないのか?」

 そういって、少々意外そうな顔をしてヒイロが尋ねて来た。

 「いやっ、あの…俺は会えれば会いたいけど、お前俺を嫌っているし…。」

 なんか自分でいってて悲しい…。
 涙が零れてきそうなのを意地でぐっと押さえて、デュオはにぃっと笑顔を作る。

 「戦争も終わって、嫌われてるのに付きまとう程馬鹿でも女々しくもねーよ。ま、今回のは俺のけじめみたいなモンだから、お前はお嬢さんとでも幸せになってくれ。」
 だけれど、じゃな、っとウインクをして踵を返したその背に、掛けられた言葉は。
 「俺はお前が好きだが。」

 …思わず硬直。

 「ヒ、ヒイロ?えーっとその好きってのは…」

 そうか嫌われているんじゃないんだな、それはよかったけど、この場面でイキナリ言われると勘違いするじゃないか、とデュオは胸のどきどきを自分で無理くり押さえつけてゆっくりと振り返った。

 「好き、という言葉の定義は、お前が今いったのと同じだと思ってくれていい。」

 えーと、えーと、だってそれって…。
 口許がほころびそうになるのをじっと我慢。

 「俺のいう好きっていうのはだな…、その一緒にいたいとか、お前が俺だけを見ててくれればいいとか…。」
 「ああ、そう思っている。」
 「……」

 夢じゃないだろうか。
 呆然として、こんな言葉さえ平然と表情一つ変える事なく告げるヒイロの顔をじっと見つめた。そりゃもう、言葉通り『夢心地』という状態で。これ以上ないという幸せを感じてしまったのだ。…その時は。

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 と、いう事で現在、二人は同居をしているのだが。
 ヒイロは本当に俺が好きなんだろうか?
 それが最近どうしても気になる。あの時はいって貰えた言葉が嬉しくて、もうそれだけでいいやって感じだったのだが、こうして二人で暮らして暫くしてみるとどうも疑問ばかりが沸く。
 なにせ、何もない。
 朝起きて、食事の支度は当番制で、食べたらそれぞれ仕事と学校へいって、帰り時間は大抵合わないから勝手に夕飯を食べて、勝手に寝る。休日は休日で、ヒイロは本読んでるかパソコンに向かってるし、こっちは友人と遊びにいくか寝てるかテレビ見てるかだ。
 何かが違う。
 どう贔屓目で考えてみても、これは友人同士の同居と違いが見つけられない。
 好きだって告白し合った二人の生活というのとは、何処か違うのではないかと思う今日この頃、デュオはずっと悩んでいた。

 「…デュオ。本当にヒイロは君の事好きなの?で、君も本当にそういう意味でヒイロの事好きなの?」

 そして今日、カトルに相談してみれば、返されたのはその一言。最近の生活を全て話して、どうだろうと聞いたデュオにカトルの返事はそれだった。

 「やっぱり、違うよな。」

 真剣に考え込むデュオを見て、だがカトルは完全に呆れ顔でこちらをじっと見つめて溜め息さえ吐いている。

 「ねぇデュオ。君ヒイロの事を好きってどういう風に?…男同士だけど好きになっちゃったっていうからには、恋人同士がするような…キスしたいとか、それ以上の事したいとか…そういう事も考えた事ある?」

 それ以上…ってぇと…。
 ぽっと顔を赤らめて、デュオは急いで聞き返した。

 「男同士でも、そういう意味で付き合ってる場合は、そーゆー事をするもんなのか?!」

 するというよりも、したくなるものじゃないの?…そう言われたデュオは少なからず衝撃を受けた。
 まず、デュオ自身だが、ヒイロに関してキスをしたいかと思えば、…したいかな、とか思う。
 で、それ以上となると…うーんうーん…ちょっと想像はできないが、言われてみれば、どきどきしてきて…したいかも、なんて。
 だがその場合、問題は立場だ。
 あの奇麗な顔のヒイロを抱きたいかといえば…抱きたい、と思う。だけどやっぱりそういう立場はヒイロは嫌がるかな、とも思うのだ。それじゃぁ抱かれたいかといえば、それはちょっと恐いかなとかやっぱ嫌かなとかも思うけれど、ヒイロが自分を望んでくれるというのならそれでもいいかなと思う。結局、自分的には「俺はちゃんとそこまでしたいって思えるくらい好き」だと自信を持てたワケだが、やっぱりヒイロはどう思っているのだろう…という最終的にはさっきと変わらない疑問が残るだけだった。
 そこでデュオは決心した。
 ヒイロが本当に自分を好きなのか試してみよう、と。
 もし、ヒイロが本当にデュオを好きなら、カトルのいう通りやっぱりそーゆー欲求がある…と思う、多分、恐らく、…そう思われる、…という事にしておこう。で、もしそういう場合、あのプライド高そうで俺様なヒイロが自分の下になりたいなんて思っているとは考え難いから、立場はこっちが下になるとして…つまり、誘ってみようというわけだ。

 「俺、試してみる。」

 重大決心に真剣な表情でそう返したデュオを見て、カトルは一瞬面くらったものの、何かを思い付いたのか楽しげに笑顔を作る。それから、「そうですね」と先程とは打って変ったやたらと気乗りをした調子で、向こうの方から提案さえしてきたのだ。

 「それではですね…、彼はL1出身ですから…。」




SIDE:ヒイロ
 ヒイロ・ユイ(偽名だが)は、ご機嫌だった。
 いや、本人以外に彼がご機嫌だという事が分かるモノはいなかったが、彼は今ご機嫌なのだ。…たとえ仏頂面をしてようが、声に抑揚がなかろうが、目つきが悪かろうがだ。
 誰にも知られず、彼は実際のところ浮かれているのだ。
 なにせ、彼は今『好きな相手』と一緒に暮らしていて、しかも両方で告白もしている、ちゃんとした両思い。周知の(共に暮らしているという時点で)恋人同士というヤツだろう。
 恋人、いい響きだ。
 ちょっとその言葉を頭の中でリフレインさせれば、石膏像のように動かない彼の表情の中、整った眉の端が0.5ミリ程下がる。
 家(これも憧れだったらしい)に帰れば、デュオがいる。もしかしたら、デュオはまだ帰ってきていないかもしれないが、帰って来るのだ、必ず自分のいるところへ。
 そう考えるのは楽しい。彼が自分のモノだと思える。
 なるほど、「好き」というのはこういう気分なのだ、というのが現在のヒイロの精神状態なのであった。
 さて。
 今日も今日とて、学校の後、バイトにいって家へと帰る。自分達の住む『家』、今はまだ同棲という形だが(勝手にそう思っているらしい)、ゆくゆくはけじめをつけてちゃんと結婚をしよう、などというところまで考えいるから恐ろしい。
 そんな事を考えながら、家へと着いて鍵を外し中へと入る。
 まずは玄関、デュオの靴がある、どうやら今日は先に帰っているらしい。
 それでまた機嫌メーターがちょびっと上がって、ヒイロはとりあえずリビングへと歩いていったのだ。

 リビングでは…、デュオがソファで眠っていた。しかも、何故か、着物…それも女物のを着て髪まで解いて。



SIDE:デュオ&ヒイロ
 「デュオ?」

 とりあえず、眠っているデュオにヒイロは声を掛けてみた。元ガンダムパイロットであるデュオが、こんな無防備状態で眠っているとは余程疲れているのかと、まずはそう思って、一応そっと。…この時点で、何故ここでそんな格好しているのか、という事は事情があるのだろう程度にしか考えていない。

 「ん…、ヒイロぉ?」

 眠そうに目をとろんとさせて、ちょっと怠そうにデュオは顔を上げた。ゆっくりと頭を垂れたまま体だけ起き上がらせれば、髪の毛がそれ自体の重さでソファに零れ落ち、ぱらぱらとそのスキマから白いうなじが表れる。和服というのは、うなじの部分はいわゆる「ヌキ」があるから背の途中までもが見えてしまって、それにヒイロは内心見とれてしまった…とはいえ、表情は相変わらずに。

 「あ、ひいろ、おかえり…。」

 いかにも寝起きな声は掠れて、唇も乾いているのだろうか、いってから、デュオはペロリと舌を出して唇の周りを舐めた。しかも、やはり寝起きで動作が鈍いらしく、起き上がる動作もその唇を舐める動作だって、いつもちょこちょこ動きまわっている彼らしくない程ゆっくりだ。

 「ねみ…。」

 欠伸を一つしてやはりゆっくりとした動作で、何故か解いてしまっている長い髪を気だるげに掻き上げる。それからふぅと一息ついて、思い出したようにこちらを見上げて、目があった途端、少しだけ微笑む。乱れた髪の間から覗く青い瞳が、嬉しげにヒイロの顔を見つめてくる。

 「あ、今起きる…な」

 いってから、やはり彼にしては驚く程鈍い動作で立ち上がった。
 「あ、ちょっと捕まらせて」なんて言いながらヒイロの肩に手を掛けて、「んっ」とまた吐息のような声を出して力を入れ、思い切って体を持ち上げる。

 「あれ?」

 だが、余程眠いのだろうか、立ち上がってすぐにデュオはよろけてヒイロによりかかってきた。

 「悪いな。」

 そういって、顔を上げてまた笑い掛けてくるデュオ。そうすれば、今度は彼の吐息さえ肌に掛かるほどのまじかで目と目が合ってしまう。
 しかも、思わず支えた手はどうやら彼の腰の辺りにいったらしくて、彼の華奢な腰のラインを内心改めて実感したりしていた。

 「あ…」

 デュオがちょっとだけ顔を赤らめて、顔を逸らす。
 首を曲げた事で、今度ヒイロの視界に入ってきたのは、寝乱れてちょっと空いてしまったデュオの胸元だ。後は、汗のせいでばらけた髪の幾筋かが張り付いた首筋と。

 「本当に、悪ィ…」

 いってデュオは、ヒイロから離れる。…また、髪を掻き揚げながら。
 そうして部屋に向かって歩こうとするが、どうしてだかふらつく足元は今にも転びそうだ。そう思ってヒイロが見ているその前で、…ほんの数歩歩いただけで…デュオはまた体のバランスを崩し、こてんとその場に倒れてしまった。

 「デュオ…」

 ヒイロがいって、倒れたデュオの傍へと近づいて来る。

 「ヒイロ?」

 情けない顔で、デュオがヒイロの声に振り向いた。

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 で。
 …これでもだめか?
 これがデュオの現在の心境だった。
 L1出身のヒイロへ色仕掛けをするなら、という事でカトルに連れていかれ、この「着物」なる民族衣装と、数本の参考用ビデオを渡された。ビデオを見ながら、ヒイロの前でやる事をシュミレートし、着付けはカトルがついでに出来る人を呼んでやってくれたし、少しくらい乱れてた方がいいくらいだし、さて準備オッケーって感じだったのだが…。
 ヒイロの表情はやっぱりまるで変わらない。
 ここまでやっても、ヒイロの無表情が崩れる気配さえないし、動揺している素振りもない。
 デュオとしては、自分でいうのもなんだがかなりイイセンいっていると思うのだ。
 自分が男としては華奢だって事を知ってるし、長い髪を解けば女みたいだって自覚があるから、精一杯その辺をフルに活用して誘ってみたつもりなのだ。
 だけどやっぱり、男がやっても気持ち悪いだけなのだろう。…正気に返ればデュオだってそう思う。内心これ以上ないくらいに落ち込みながらも、ヒイロに悟られるわけにはいかず、とりあえず最後にカトルから受けたアドバイスの『最後の手段』だけはやってみようとは思うのだが…。
 デュオはちょっとだけすまなそうにして、近づいてくるヒイロを見た。
 恐る恐るという…ちょっと哀願しているような表情を作って。

 「ごめん…ヒイロ。その…良ければちょっと寝室まで肩、貸してくんねぇ?」

 やはりヒイロの無表情は揺るがない。
 ああ、と感情のかけらもない返事だけが返ってきて、デュオを益々悲しくさせる。
 とりあえず、言葉通り近づいてきて肩を貸してくれて起き上がるのを手伝ってはくれるものの、彼から何かこちらに期待するような反応を返してくれている気配はまるで伝わってこない。
 だめなんだ、と思いながらも起き上がる拍子にまたよろけてヒイロの胸に抱きついてみる。
 …反応ナシ。
 それどころか、いい加減こっちののろのろした動作に痺れを切らしたのだろうか、ぐいっと強い力で持ち上げられて、そのままずるずると引きずられるように寝室へ。ぽぉんと幾分か乱暴にベッドに放り投げられて、デュオはばふっとベッドにつっぷす。
 あぁ、そうだ。最後の手段、最後の手段。
 なるべく不自然にならないように、体勢を立て直そうとベッドの上で身じろぎして、態と着物の端がめくれるようにする。その状態で足を少し立てれば、するりと布地は肌を滑って太股が片方だけ露になってしまう。

 「ヒイロぉ…」

 不安げな瞳でヒイロを見上げる。
 …だけれどやっぱり、ベッドの前でじっとこちらを見ているヒイロの瞳には、欲望のかけらも存在してはいなそうだった。
 いつもの無表情、いつもの無愛想、その視線はこちらを軽蔑しているかに見える。
 もう、だめだ。
 デュオは思った。きっと、嫌われた、それに本当は自分の事を好きだったわけでもないのだ。
 じっと見つめる瞳は、何の感情も映していないかに見える。
 そして。
 暫くの沈黙の見つめ合いの後、ヒイロは口を開いた。

 「俺は今、困っているのだが。」

 声は完璧な棒読みで。

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 なんだろう?
 なんだか分からないが、ちょっと困った感じだ。
 ぴくりとも動く事ない完全な無表情のまま、ヒイロは実は困っていた。
 何故だか分からないがデュオが和服でソファで寝ていて、何故だか分からないがなんか体調が悪そうで、そして何故だか分からないがそんなデュオを見ていると自分は困る。
 そう、なんか困っている、何に対してなのか自分でも分からないのだが。
 先程からデュオの一挙一動がやけに目を引く。なんだか目を離せない。いや、目を離せないのはこいつの存在に対して前から自覚していたことだが、いつもとちょっと勝手が違う。いつもは見ているだけで心が和むような気がするこいつが、今は見ているだけでなんとなく焦りのようなものを感じる、今の自分は平静ではない…と思う。
 だがその理由は分からない、多分感覚的なもので理論でどうこういうものではないのだろうが、こういうのは初めてだからどうすればいいのか分からない。
 感情のままに生きる事は正しい事だ。
 そう思うからその通りに生きる事にしているわけだが(デュオに好きだといったのだってそのセイだ)、こーゆー場合では感情はどういう方向性であるのかが分析できない。具体的な問題ならば一応即答できるのだが、総合的に見て、どうしたいのかどうするべきなのかが分からないのだ。
 例えば。
 デュオを目的地まで連れてきたワケだからもうこの部屋をでてもいい。だが部屋を出て行きたくないと思う。
 デュオは和服を着ているもののもうかなり乱れてしまっていて、そのまま着ているつもりなら直してやればいいし(何故か着付けができるらしい)、もう着ないならさっさとパジャマでもなんでもとってやるなり着せてやるなりしてやればいい。…だけれど…そんな事どうでもいい気がするのだ。
 さあどうする?
 ヒイロは思い切り悩んでいた。
 いつでも即答即決断のヒイロには、こうやって悩む事さえ自分の混乱を増させるばかりだ…表情にはまるきりでないものの。
 だから固まったまま、じっとデュオを見る、見る、見る…見るだけ。
 声もかけない、顔の筋肉も固まったように動かない。
 さてどうするか?
 完全無表情の中、ヒイロが悩みまくっていると。

 「…ごめんな、俺もう出て行くよ。」

 いきなりデュオががっくりと項垂れて、そんな事を呟いた。

 「何故だ?」

 こういう具体的な事になら即反応ができる。ヒイロはすぐにデュオに問い返した。
 「…だって、お前俺の事好きじゃないんだろう?」
 やけくそのように叫んでデュオが顔を上げれば、その目は涙を一杯に溜めて、堪えるように唇を引き結んでいた。
 俺が…泣かせたのか?
 驚きは言葉とデュオの表情の二重で。ヒイロは更に困るしかなくなる。
 だがとりあえずは。

 「俺はお前が好きだ。」

 それだけは返す。もちろん声は抑揚なんてまるでない。
 前にその言葉をいった時は、デュオは嬉しそうに笑っていた。だが、今回は違う。

 「嘘つくなよ、無理してそんな事いってもらっても嬉しくなんかないね。」

 更に大きな声で叫んで、とうとうあの透明な青い瞳からは涙が零れてしまう。

 「別に嘘はついていない。」

 内心では、ヒイロはこれ以上ない程に驚いているし、困惑しているし、悲しいのだ。
 だがそれでも声にも表情にも、それらのかけらさえもが出てないヒイロに、デュオは余計に悲しげな顔をする。
 どうすればいいのだろう?
 とりあえず誤解を解きたいのだが、どうも今のデュオは何をいっても信じてくれないような気がする。

 「デュオ…」

 呟いて、溜め息。
 もうこちらの顔を見ようともしないで、ベッドにつっぷしてしまったデュオへ仕方なくヒイロは近づいて行く。
 そうしてデュオの肩に触れると。
 ピクリ、とその肩が過剰反応して揺れる。
 ?
 その瞬間、ヒイロの中に不可解な高揚感が芽生えた。

 「ヒイロ?」

 デュオがその手から少しづつあげるように、ゆっくりと視線をこちらの顔へ合わせて来る。その顔が目の前に映って、涙に濡れたまつげと頬に残る跡になんとなく意識してしまって息を飲んでしまう。
 完全に膠着状態で、ヒイロはデュオを見つめる。…どうやら鼓動が早くなってなんとなく緊張しているような状況らしい。

 「…手ェ、離せよ。」

 デュオが顔を背けて呟く。
 だが、そういわれてもヒイロはなんだかこの手を離したくはなかった。自分の感情に問いてみれば、即答で「離したくない」という答えが返って来る。
 とはいえじゃぁどうしたいんだといえば、どうしよう?…なのだから始末に追えない。
 感情のまま手を離さずにいるのはいいとして、その後どうしたいのかが分からない。それが自分ながら腹が立ちさえする。身体中を駆け巡るような焦燥感はあるのだが、これがどういう理由で起るものなのだかが分析不可能だ。

 「離せっていってんだろっ」

 デュオが叫んで今度は思い切り手を払おうとする。
 その手を無意識の内に掴んでしまって、今度は正面から視線が交わる。
 泣いているセイで白目が充血してしまった、デュオの瞳がこちらをみている。

 「何故泣く?」

 いいながらその涙を拭ってやると、余計にデュオの瞳からはぽろぽろ涙が流れ出した。

 「やめろよっ、同情なんかいらねぇ…」

 震える声で途切れながら、やっとそれだけをいって大きな青い瞳を伏せてしまう。
 そうして再び、今度は本気でこちらから離れようと体を大きく振る。
 と。
 それでも離れない、万力みたいなヒイロの腕にひっかかるように、互いで引っ張り合い…気がつけば二人ともにバランスを崩し倒れ込む形となった。…しかも体勢としてはヒイロがデュオの体の上に乗りかかってしまうといった感じで。


 「……」
 「……」


 互いに無言。
 だが互いに、ちょっと体同士が重なる瞬間びくりとしたりなんかして。
 二人が二人共膠着してしまった。

**************************

 …。
 いや、その…目的が目的だったからその…何だが。
 今までデュオはヒイロの反応を見るのにずっと顔しか見ていなかったのが悪いのだが。
 こーして体がぴったりと重なってしまって、その…分かっちゃったのだ。
 下半身に、その…当たる感覚が…だからそれが目的なんだけど。
 なんだかさっきまで、その反応がなくてショックを受けていたのではあるのだけど、いざこれから…ってのを実感してしまうと、どうにもならない。
 なんだちゃんと反応してくれてんだ、と思ったり。
 こいつって実はムッツリスケベ??、とかも思ったり。
 だがそうしていろいろ気を紛らわせる為に考えてみたりしても、一番強く沸き上がって来るのは『恐い』という感覚。カトルにいわれてからは、ずっと「ヒイロならいいか」と思ってこうして誘っていたのだが、いざ事になりそうってとこまでくると、実際恐い。情けなくも体が固まってしまって、何もできない、何もいえない。
 心臓がすごいスピードで鼓動を刻んでいるのを感じてしまって、ヒイロの体温とか、呼吸の音だとかがやけに肌で実感できてしまって、…こりゃどうしましょうってもうどうしようもない。もしかしたら、自分もちょっと体が反応してるかもしれない。目茶苦茶恥ずかしい。

 「デュオ」
 「うわぁっ」

 随分と長い間、身じろぎさえしなかったヒイロが、そういって顔を見ようとしてくる。しかも、丁度声を出した場所がこちらの耳元まじかだったおかげで、耳元で囁かれているのとそれはほぼ同じ事で…デュオは、耳元から顔から何から、全身が赤くなっていくのを実感した。

 「俺は今、どうすればいいのか分からないのだが。」

 そのヒイロのセリフに、こちらこそパニック状態のデュオは正しく誤解した。
 迷っているのか?…やっぱコイツ大元は優しいから、俺の事気遣って?
 だからいってやる。

 「いいよ…お前のしたいようにして。」

 びびるなデュオ・マックスウェル!…最初からそのつもりなんだろう!!
 デュオとしてはもう必死の覚悟でいった言葉であった。
 だが。

 「…だから困っているんだが。」

 ???…いつも強引につっぱしっているこいつにしては随分と歯切れが悪い。
 まだ迷っているなんてらしくない。それともそこまでこちらを心配してるのか?
 そう考えるのはちょびっと嬉しい。顔はもう合せられないくらい真っ赤だから、背けたままで更にいう。

 「…これ以上いわせんなよ。俺、お前ならいいから…さ。」
 「…」

 そういえば、彼はまた無言になる。
 じっと、いつくるかいつくるかとどきどきしているデュオの上で、彼はひたすら無言を通す。
 だが、しばらくして。

 「…何が、いいんだ?」

 そう、返してきた。

 「はぁ??」

 デュオは驚いて、それから少し考えて。…予想できた一つの答えにちょっと別の意味で恐くなった。恐る恐るヒイロの顔を見てみれば…どうやら彼の表情は本気で困惑しているらしい。…それくらいの表情ならできるようだ。

 「…あのさ、お前…その…ヤリたいんだろ?」
 「ヤリたいというと?」

 きくなよ、そんな事!!

 「だってその…当たるんだけど…。」
 「何がだ?」

 だから聞くなって!!

 「お前の下半身が…その…だからッ」

 そこまでいって、デュオは切れた。…もうどうにでもなれって感じだ。

 「お前ッ、俺とセックスしたいんだろっ。いいかっ、隠してもだめだからなッ、お前の○○○(←想像におまかせします)が勃っちまってるのは分かってるんだからなッ。」

 言ってから目を閉じる。
 開き直ったとはいえ、これはもう壊滅的に恥ずかしい。
 そして、暫くは沈黙が流れて…。

 「…そうか。」

 ぽつり、と。
 なんの感慨もない声がヒイロから発せられた。

 「ヒイロ?」

 デュオはそおっとヒイロの顔を窺うように見てみた。そうすれば、彼は自分の下半身の状態を見てちょっと触れたりしているのだ。…???
 デュオはなんだかとてつもなく悪い予感がした。
 自分のソレをちょっと観察したりして、ヒイロは何かを確認している。
 それからふいに顔を上げて。

 「…なるほど、これが性的興奮というモノだったのか。」

 …デュオは、自分の顔が強ばって行くのが分かった。


 セックス、というモノ。その目的は、子供を作るため。
 そういう認識があったから、それが恋人あるいは夫婦のする事だという認識はあっても考えからは除外していた。
 デュオとはヒイロの思うところ両思いの恋人同士なのだが、男同士であって子供は作れない。そういう事で思考からは省いていたのだ。
 だがそれでも、その行為が性的興奮…つまり欲情という感覚から行われるモノである事はしっているし、どうやるのかだって知識はある。よーく知識を検索してみれば、確かに男同士でやる事もある…というのも聞いた事あるし、一応そっちのやり方も知識だけは知っている。
 だが、ヒイロはその欲情だとか性的な興奮とか知識はあっても感じた事はなかった。
 だから、これがそうなのかと知るのはちょっとした感動だ。
 やはり自分はデュオが好きなのだ、デュオは自分にこうやってイロイロ今まで知らない感覚というか感情を自分にくれる存在なのだと、そこでもまた感動する。
 そして。
 デュオの言葉通りならば、それをやってもいいのだ。
 セックスというのは快感を得られる、というのは知っている。性的快感というのは経験がないが、セックスで抱くという行為は相手を手に入れるという言い方もできるのだから、デュオが自分のものになる感覚をもっと強く手に入れられるに違いない。…そうか、デュオの事を欲しいと望むのはこういう感覚に繋がるのかと、ヒイロはとてもうれしくなった。もう、やる気満々に実際のやり方の知識を引っ張り出して頭の中で確認したりする。
 やり方さえ知っていれば、自分はなんでもできる、その自信に揺らぎはない。だが、どうせやるならば完璧に。最初であっても失敗は許されない。
 ヒイロの頭の中で、行為の段階が奇麗に整理され、箇条書きで順番通りに並べられる。後は実行あるのみ。ヒイロはデュオに向き直った。
 

**************************



 「デュオ…」

 いきなりガラリと雰囲気を変えて、ヒイロが近づいて来る。

 「なぁお前もしかして、その…知らなかったとか?」

 そう聞き返してみれば、ヒイロは鼻でふっと笑って自分の頬に手を伸ばして来る。
 思わず後ずさりそうになるデュオの体を、今度はもう片方の手がこちらの腕を掴んで引き寄せて…デュオはヒイロの胸にぽふっと抱え込まれる形になった。

 「お前やり方分かってる??」

 ひきつって聞いた言葉は、キスで塞がれてそれ以上を言えない。
 なんだか180度動作モードを変えたようなヒイロの豹変ぶりに、デュオは呆然とするばかりだ。

 「ん…」

 しかもなんか…こいつウマイ…かも。
最初は何度かついばむように唇を合わせて、それからこちらが慣れてきた頃を見計らって舌を差し入れてきて…。ちょっとびくびくしてしまうこちらの舌を殊更ゆっくりと舌先でなぞって…そうしてから今度は幾分強引に舌同士を絡めて来る。追い上げるように、思わず逃げてしまうこちらの舌を絡めとろうとしてくる。
 なんだか、そのやりとりの間にデュオはこれから起る事を想像してしまって体が火照ってきてしまった。ぴちゃりという濡れた音が聞こえた時なんかには、体までがびくりと震えてしまったくらいだ。

 「デュオ」

 耳元で囁く。今度のは偶然ではなくて、故意だという事が分かる。
 しかも自分も、そう分かったせいで余計に意識してしまって、そんな声だけで体がまた震えてしまう。…もしかしたら、俺、この声に弱いのかも。
 ヒイロの手は巧みに体を伝って、本当ならバカ力の筈のその手は驚くくらいそっと触れて、微妙な感覚を肌に与えて来る。着物は脱がさずに、襟を思い切り開いて胸を肌蹴させ、指が先程からその胸の突起を摘まむ様に弄んでいる。

 「やだ…ちょ…何やって…。」

 デュオだって初めてだから、実をいえば男同士のやり方がちゃんと分かっているわけではない。だから胸なんて女みたいに膨らんでいるわけではないし、そんな事で自分が感じるなんて思わなかったから、恥ずかしいを通り越して、気分はちょっといただけない。
 こちらの声をだがヒイロは無視しているのか、それとも態とか、胸への愛撫は止められる事はなくて、今度は片方を指で弄んだままもう片方を口に含んでくる。唾液に濡れたそこが外気に触れて冷える感触は堪らなくて、一度口から出されてから再び熱い舌に包まれて、思わず喉がひきつるような声を上げてしまう。
 ちょ…こいつ初めてだよな?…確かにそうだとはいってないけど、でもあの反応って初めてだよなぁ??
 泣きたい気分になりながらも、心の中で何度も自問自答する。そんな事考えてるのだって、気を逸らしたいからなのだが、やがてヒイロはそんな隙さえも与えてくれなくなってしまう。
 ヒイロの指が、そこに、触れる。
 流石にやる事が分かっちゃいるけど、恐いのだ、やっぱり。
 思わず身構えるように体を固くして、ごくり、と唾を飲み込む。
 入り口を撫でる様に触れるその感触が、妙に生々しくって、緊張する。

 「デュオ」

 耳元に吐息混じりで囁かれた声に、

 「うわわぁああぁっ」

 と、色気もそっけもない悲鳴が上がる。
 だがそれくらいでは、ヒイロのヤル気が萎えたりはしないようだった。
 声を上げた瞬間に、とうとう指が入ってきて、デュオは瞬間声どころか息が詰まる。
 やはり慣らそうとしているのか、指は何度も入り口の浅い部分で出し入れを繰り返し、それだけでも異物感に軽い吐き気さえ催した始末だ。
 現在、指はまだ一本。
 その細さを考えると、最終的に入るモノとは比べようが無くて、覚悟の上とはいってもごめんなさいと逃げたい気分だ。

 「う…アッ…ッ…」

 指の動きは少しずつ早く荒々しくなってきて、前よりも深くまで差し入れられている。しかも時折濡れた音がしたりするから…あ、いつの間にかコイツちゃんと指濡らしてやがったんだなどと妙にその用意周到さに頭に来たりもする。
 くっそぉ〜初めてのくせに、初めてのくせにぃぃっ。
 心の中では叫んでも、声にしようとすればどうしても喘ぐようにしかならないから、思いっきり口を噤んだ。その様子にヒイロがくすりと笑ったようだが、いくら頭にきても今は反撃もできなくて我慢するだけで精一杯だ。
 下の方では、散々慣らされたせいで、幾分スムーズに指が中へ入るようになったらしく、こんどはもう一本増やされて、圧迫感が倍になった。
 そしてまた二本分の太さとヒイロのを想像上で比較してみたりして、やるまえから泣けてきてしまう。
 …入らない、絶対こんなじゃ入らない。

 「やだ…。やっぱ無理だって…ヒイロ。」

 だから、正直にそういえば。

 「…かもしれないな。」

 と妙に冷静な声が返ってきて、デュオは止めてくれるのかと期待に体の力を抜いた。
 だが。

 「おい…あのっ…ヒイロッ」

 抵抗する間もなく持ち上げられて、ぽふっとベッドに裏返しにされて放られた。…つまり体勢としてはうつぶせに寝かされたわけで、その意図する事にデュオはさーっと血の気が引いてい行くのを感じた。

 「…もしかして、これって…」

 返すヒイロの声は、お約束の棒読み風、感情あるのかコイツな感じ。

 「男同士の場合は、こちらの方が楽だろう。」

 いいながら、ベッドに突っ伏したままのデュオの腰だけを持ち上げる。

 「ヒイロッ…タンマ…。」

 急いで起き上がる前に、そこの中に勢いよく何かが入って来る。
 あぁ、とうとうやっちゃったんだ、と目を瞑れば想像ほどに圧迫感は酷くない。

 「まだ指だ。少しは力を抜けないか?」
 「…そうはいっても…」

 少しほっとはしたものの、中の指は確実にさっきよりもまた増やされているらしくて、だけれど、体勢が変わったせいかやけにスムーズに動かされて…その動きに体までもが揺らされる。
 しかも、ヒイロが後ろから覆い被さって来たかと思うと、空いている手が前に回って、こっちは直接的な快楽を導こうとしてくる。

 「ウッ…ン…。」

 前の感覚と混ざったせいか、そうして中をかきまわす指のほうからもどうしようもないもどかしさが込み上げてきて、声を押さえるのも辛くなって…きっときつく瞑った目からは涙が流れているかもしれない。

 「あ…。」

 ヒイロの指が一際奥まで差し込まれて、同時に前を煽っていた手も強く彼を握るから、デュオはとうとうその手の中に吐き出してしまった。

 「…」

 解放後の、ちょっとした放心状態の中、ぼんやりと枕につっぷす。
 ぼーっとしている中に聞こえて来る、金属音、ジッパーが下ろされる音。
 それが何かをゆーっくりと思い出して、途端、デュオはがばりと起き上がった。

 「あの…ヒイロッ…」

 だが、そういって起き上がろうとした時にはもう遅い。
 ヒイロの手は既にもうデュオの腰をしっかりと固定してしまって、先程まで指が入れられていたそこには、想像したくない別のモノがあてがわれていた。

 「ごめん、やっぱ、止めよう、な…」

 逃げようとしてそういえば、ヒイロの手がまたデュオの前でそれを掴む。

 「───ッ」

 息を飲んだ瞬間。

 「ア…」

 それが、入って来る。
 やっぱり、想像以上の圧迫感にデュオは息をするのさえ忘れて固く体を身構えた。

 「デュオ」

 ヒイロの声が耳元に再度掛けられる。
 それから、前を掴んでいた手が、またゆっくりと煽るように動きだす。
 後ろからは、少しずつ、埋め込まれるように、それが中へ入って来る。
 体に力を入れようにも、前から与えられる感覚で、うまく力が入らない。
 ただ入って来るものを感じながら、次第にまた膨れあがって来る前の感覚に耐えなくてはならず、頭の中は何かを考えて気をそらす事さえできない。

 「あッ。」

 ある程度奥まで入って、ヒイロが一度突き上げるように体を揺らした。
 それだけでまた体から力が抜けて、上半身を支えていた腕ががくんと折れる。腰だけはヒイロに支えられて高く上げられているのだから、考えてみればとんでもない格好なのだが、どうしても一度力を無くした腕は体を支えられなかった。
 やがてヒイロが動きだすと、胸をシーツに擦りあわせられながら、体全体を揺さぶられる。もう、感覚はどうしようもなくて、声だって押さえられない。
 ベッドの軋みと、自分の中にヒイロが入って来る時の濡れた音が聞こえて、感覚は更に膨れあがる。
 圧迫感は確かに苦しいのに、もどかしい快感も押しあがってきて、それに足までもがガクガクと震える。もう全身に力が入らない。

 「ヒ・・イロォ…」

 力なく呟いた言葉に。
 体の奥へ何か熱いものが注ぎ込まれる感覚。
 デュオもまた、二度めの開放を迎えた。



SIDE:ヒイロ

 「…なぁ、お前。初めてだったんだよな?」

 あの後、一度目よりも慣れたデュオに気を良くして、デュオが気を失うまで…何回かの情事の末に(何回かはご想像におまかせします)、ヒイロはやっとデュオを開放した。
 目がさめて、起き上がった途端、ヒイロをぎんっと睨みつけてデュオがいったのはまず、コレ。

 「ああ。」

 とりあえず、嘘をつくつもりもないのでヒイロは正直に肯定した。

 「…初めてのワリには…随分とその…慣れてんじゃねーか?」
 「知識ならあったからな。」

 そう返してやれば、デュオは益々不穏な表情を見せる。

 「…お前途中から、人格変わったみてーだったぞ。初めてだったら、普通もっと戸惑ったりするもんじゃねーか?」

 それにヒイロはやはり平然と答えた。

 「やり方なら知っている。どうして戸惑う必要がある?」
 「……」

 それを聞いて、デュオはもう何もいってはこなかった。
 
 

SIDE:デュオ
 俺は、間違ったかもしれない。
 デュオは、初めて今の現状を後悔していた。
 デュオの持つヒイロのイメージといえば、ちょっと冷たいけれど奇麗な顔と、真っ直ぐな視線、優秀な頭脳と運動能力、だけれどたまに無茶をしてそこが危なっかしくて惹きつける…と、そんな感じだったのだ。
 だが、それよりなにより、こいつって、変。
 確かに奇麗な顔は今でも好きだが、よく考えてみれば、今まで「好き」だというフィルターのセイで良く見えてなかったこいつのおかしいところがいろいろ思い当たってきてしまう。
 確かに、機械みたいなヤツだとは思っていたが、自分が欲情してるのにも気付かないし、なのにやればトンでもないしと、ちょっとこりゃ早まったかもしれないなんて考えて…。
 しかも。

 「デュオ」

 そういって近づいてきて、また体の上に被さって来るこいつは…。

 「…あの…さっき、十分やっただろ?」

 好きだとは思っていても笑顔はひきつる。

 「お前が好きだ。」

 それはいいけど…。

 「恋人同士なら、やってもいいのだろ?」
 「……。」

 こいつは、限度ってモノを知っているのだろうか?
 もしかして。
 ヤル事を覚えたけど、押さえる事を知らないってヤツ??
 という事は…。
 こいつがもういいって思うまで、付き合わなきゃならないのか?俺?

 どう考えても人外の体力を持つ相手を知っているだけに、デュオは気が遠くなっていく気がした。

 …合掌。



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