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【T h i n k】

久しぶりに読みなおして思ったこと…「この話って、ヒイロいじめ??(笑)」
…たしか、最初にこの話作ったときは、「ヒイロがデュオの耳元で囁く」ってシチュエーションにモエてたような…。ま、いっか。





 「デュオ、準備は出来たか?」

 奥の部屋から現れた同い年の少年に、デュオは満面の笑顔を浮かべて振り返った。

 「おう、準備ったって持ち物なんて殆どねーしな。ここを使ってたっていう跡を消すだけだから、すぐに終わっちまったぜ。」

 やけに機嫌のいいデュオの笑顔とは逆に、感情を消した硬い表情の黒髪の少年──ヒイロは、彼らの唯一の荷物であるそれぞれのショルダーバックを持ち上げると、片方をデュオへと放り投げた。

 「で、次は何処へ行くんだ?」

 荷物を受け取り、表情での反応を現さないヒイロを気にする事もなく、デュオは笑顔のままでそう尋ねた。ヒイロはすぐに外へと続くドアへ向かって歩きだしながら、デュオの顔を見ずに答えを返した。

 「ここには長くいすぎた。今日宇宙港から隣のコロニーへの軍の定期輸送船が出る。それに潜り込む予定だ。」
 「ふーん。」

 ヒイロの後ろを追い掛ける様にデュオも歩きだし、返された言葉に曖昧な相槌をうちながらヒイロの隣へと回り込もうとする。それにヒイロが一瞬だけ足を止めて振り返り、デュオの顔へ窺う様な視線を投げた。

 「なんだよ?」

 予期せぬ反応に、デュオが目を見開いてヒイロの顔を見返す。

 「それだけか?」
 「は?」

 振り返ってきただけでも驚く事なのに、聞いて来た言葉はさらにワケが分からない。どうかえしていいかも解らず、思わず口許が強ばってしまう。

 「それだけって…お前が調べてそうした方がいいって思ったんだろ?俺はあそこから逃げられれば、それだけで何処か行きたいとこがあるワケでもないし、行き先はお前に任せるってのは最初に言ってあるじゃねーか。」

 何を今更…とデュオが眉を顰めてヒイロの顔を首を傾げながらまじまじと見つめる。その顔を動かない瞳に映して、ヒイロは何処か悲しげな響きのある声で答えた。

 「ああ。そうだったな…。」

 声と同時にヒイロが軽く瞼を伏せる。それにバツが悪そうに困った顔で益々きつく眉を寄せると、デュオは今度は殊更明るい声で話し掛けて見た。

 「そうそう。お前がいつも奴等に見つからない様に、場所を選んで行き方を調べてくれるからさー、今までこうして逃げられているワケだし。本当に信頼してるんだぜっ。」

 だが、励ますように掛けられた言葉はヒイロの瞳の中の影を益々濃くするだけで、何処かしら気まずい今の雰囲気を追い払う事は出来なかった。

 まったく、どうしたっていうんだ?

 わざと大袈裟に肩を落して息を吐き出し、恨めしそうにヒイロの顔を上目使いで覗き込む。その視線をヒイロが影のある瞳のままで見つめかえしてくるものだから、デュオはまた、更にいたたまれない気分になってしまう。
 じっと、ただ真っ直ぐに見つめてくる瞳には、言葉にならない、だが何か訴えてくる様なモノかがある。

 ──その理由を、今のデュオは知らなかった。




 ────何故、俺を疑わない?
 デュオが笑顔で笑い掛けて来る度に、その言葉が頭の中に浮かび上がる。あまりにもあっさりと自分を信じるデュオが信じられず、何故だか胃に重いものを飲み込んだ様な息苦しさが沸き上がって来る。だが、そんな事を考える事の方がおかしい。それは分かっている。
 『施設』を逃げてからずっと、デュオは自分に行き先を任せていた。実はこれも『組織』の方の計算通りで、ヒイロはいつも『組織』からの指示通りに移動を重ねているだけだったのだが、デュオは一度としてそれを疑おうとはしてこなかった。
 『組織』の意志通りに動いているのだから、『組織』からの追っ手に捕まる筈などありえない。だがデュオは、それさえもヒイロがうまくやっているからだとしか思わずに、ますます自分に対する信頼を強くしてくるのだ。
 …そう、それさえも『組織』の読み通りに。

 昨夜の遅くに、ヒイロは『組織』からの新たな指示を受け取っていた。今回の移動はその為であり、これから乗り込む輸送船に彼らの任務が待っている。彼ら────ヒイロもデュオも『組織』の一員であり『組織』の為に働いている。だが、その事実をこのデュオは何も知りはしない。それでも、デュオはちゃんと『組織』の一員として自分に協力し任務を遂行してくれるパートナーであった。本人の意志とは関係なく、あるキーワード、たった一言をヒイロがデュオに言うだけでデュオは任務に協力せざる得なくなるのだ。

 だから又、もうすぐ言わなくてはならない。あの言葉を。


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 「食料品とかがあるからかね。かなり寒いよな。」

 肩を竦めて手で腕をこすりながらデュオがそういって声をかけて来た。デュオの言うとおり、潜り込んだ輸送船の倉庫の中はかなり温度が低く設定されているらしく、少々肌寒さを感じるのは確かだ。

 「空気があるだけマシと思え。」
 「はは、確かにね。」

 寒さに震えながら、デュオが引きつった笑みを返す。壁に寄り掛かり、そのまますとんと床に座り込むと、さらに声のトーンを落して、おどけた仕草で口を開いた。

 「だけどさーその空気もちょっとだけ薄くないか?」

 ヒイロが振り向くと、やはり笑顔で自分を見つめる青紫の瞳が目に入る。それにやはり感情を映す事のない瞳で見つめかえすと、瞳と同じ感情のない声が口へと上る。

 「仕方がない。本来ならなくてもいいくらいの場所だからな。」

 素っ気なく言い放たれた言葉に、デュオが大仰に溜め息を付く。

 「まぁね。贅沢は言えないか。」

 淡々とした口調のヒイロと違い、デュオの声はいつも抑揚が多く、何かしらの感情を映して響いて来る。最初に会った時から、それは今まで変わらない。もの心ついた時から特殊訓練と生死の狭間の世界に住んでいたヒイロには初めて会うタイプの人間だった。

 「しかしほんとに寒いよな。」

 今度はヒイロに言ったワケではなく、ただ呟いただけらしい。
 ヒイロは、端から見ればそのデュオを無視する様に一人ですたすたと倉庫の奥へと歩いていくと、やがて、恐らく荷物にでも掛けてあったのだろう、一枚の布切れを持って現れた。

 「これにでもくるまってろ。」

 ばさり、と音を立てて座り込むデュオの上にそれが被せられる。

 「うわっ…と。」

 デュオは、突然掛けられた布の中でもがきながらやっとの事で顔を出すと、ふぅと一つ溜め息を付いて、改めて布を体に巻き付ける。それからちょっとだけ考えてから自分の正面に座ろうとしたヒイロに向かって手で招く仕草をすると、少し首を傾けて、窺う様に弾んだ声で名を呼んだ。

 「ヒイロ。おい、お前だって寒いだろ?だったらこっちこいよ。一緒にくるまってた方があったかいしさ。」

 くるくると動く瞳を今は細めて、柔らかな笑顔でデュオがヒイロに笑い掛ける。それを見て一瞬躊躇はしたものの、さらに掛けられた「なぁ」という催促する様な声に、自然とヒイロの体は動いていた。
 近づいて来たヒイロを迎えるべく、デュオが布を広げて嬉しそうにその顔を見る。それから、無言で横に座り込んだヒイロにも広げた布を掛けると、自分から体を擦り寄せて、嬉しそうに小さくまるまったような体勢を取った。

 「うん、やっぱあったかいや。」

 確かに、暖かい。
 ヒイロもデュオに合わせるかの様に体を少しだけ丸めて、ぴったりと寄り添って来るデュオへと重心を傾けた。
 暖かい。隣の存在の体温と自分の体温が熱を伝え合って、体の熱が奪われるのを防いでいる。…別に耐えられない程寒いワケではないが、体が冷えないに越した事はない────頭でつけた理由はそう。
 だけど感情の面では、体温として感じる以外の別の暖かさを感じているのも確かだった。寄り添って、互いの体温で暖め合って…何故だか、こうしているのが酷く心地良い。瞳を閉じて、しばらくの間、今のこの感情に身を任せたいと思う程に。
 だが、そうした柔らかな気分は、デュオの発した何気ない一言で急激に遠ざかる。

 「なぁヒイロ。後どれくらいで着く?」

 本当にデュオに取っては、確認だけの何気ない一言。その言葉に、まどろみかけたヒイロの瞳が厳しい光を取り戻す。
 少しの間を置いて、答えはすぐに返された。

 「後6時間程だ。」
 「ふぅん。そっか。んじゃ俺少し寝てていいか?」 
 「ああ。」

 会話の途切れた数分後、微かな寝息が耳へと聞こえて来る。寄り添うというよりも、寄り掛かる様に体重を預けて来る体に、デュオが寝てしまった事が確認出来た。
 後6時間。
 その時間の内に任務を遂行しなくてはならない。
 寝てしまったデュオが見る事は適わないが、その時のヒイロの表情はいつものポーカーフェイスでは有り得なかった。何処か辛そうに寄せられた眉と、何かの言葉を飲み込んだ後の様にきつく閉じられた唇が、本人の気付かない心の内を映していた。いや、実際は気付いてるのに気付いていないフリをしているといってもいい、心の中に確かにあるこの『迷い』を。
 軽く目を閉じる。
 息を付いて、又目を開ける。
 任務の為だ。何を惑う事があるのだろう。
 そうは思っても、新たな任務を受ける度にこうして生じる感情のざわめきは、いつまでたってもなくならない。それどころか前よりも今の方が、迷いはさらに強く自分に問い掛けて来るのだ。

 本当にいいのか、と。



 感情を断ち切る様に首を振ると、ヒイロは静かな寝息を立てるデュオへと顔を向けた。
 柔らかい表情で眠るデュオ。
 自分は又、この少年を裏切るのだ。

 瞳を閉じ、そっと眠るデュオの耳元に唇を近づける。
 そして囁く。『組織』によって埋め込まれたキーワードを。

 「Delete your mind.」

 眠っているデュオ。その中にいるもう一人のデュオを呼ぶ言葉。

 『変化』はすぐにやって来た。
 瞼を開いたヒイロのすぐ目の前で、いやそれよりも気配が如実に、『変化』を伝えてガラリと別のモノへと切り替わっていく。
 ヒイロの肩に乗せられていたおさげ髪の茶色い頭が、ゆっくりと持ち上げられる。
 そのままヒイロの顔を見つめて、開けられた瞳には先程までの彼にはない、酷薄なきらめきが通り抜けていった。

 「任務は?」

 いつものデュオの声と確かに同じ声であるのに、受ける印象がまるで違う、冷たい声。柔らかさのカケラもない、殺人者の声。もう一人のデュオの声。

 「この船にはもう一人、組織からの工作員が乗り込んでいる。そいつに接触してある情報を受け取る。」

 そう告げたヒイロの言葉に、デュオが眉をピクリと寄せた。

 「それだけか?わざわざこっちが2人掛かりでやる仕事じゃなさそうだぜ。」

 声にはあからさまに不満の響きが含まれている。

 「表向きは今いった通りの内容だ。だが、実際は…やつは同じ情報を軍の方にも売りつけようとしている、だから…」
 「そいつの始末だな。」

 ヒイロの言葉をデュオが先に続けた。それを一瞥してヒイロがさらに補足する。

 「やつは殺す。情報も手に入れる。」
 「了解。」

 青紫の大きな瞳が、冷たい笑みを湛えて歪んだ。



 『組織』はその構成員を孤児を引き取り育て上げる事で補っていた。孤児達を集め、『施設』と呼ばれる場所で訓練をし、一流のエージェントを作り上げる。子供達は『組織』に忠実な部品として生まれ変わる為に『処理』を施され、『施設』へ来るまでの記憶を消されて、さらには感情の抑制をされた人形の様にされてしまう。
 だが、その中でデュオは体質のセイなのか『処理』が効かず、別の『処理』を受ける事となったのだ。

 それが、これ。

 現在の人格を操れないならば、無理にもう一つの『組織』に都合の良い人格を作り上げてそれをデュオの中に埋め込んでしまう。
 もう一つの人格は普段は表に出る事はないが、パートナーであり監視者でもあるヒイロのとある一言によって、スイッチが入れ代わる様に本人の意識を乗っ取るのだ。

 『Delete your mind.』

 それがパスワード。デュオ本人の意識が薄い時にこの言葉を聞くと、もう一つの人格が浮かび上がり、任務に忠実な、『組織』の為のエージェントとして目覚める。
 デュオ本人が知らないところで、彼は自分が逃げた筈の『組織』の為に人を殺す。
 ヒイロは、その『組織』におけるデュオのパートナーであり、なにも知らないオリジナルのデュオ自身の監視者であった。
 それが、今のヒイロの任務。


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 「ばいばい。」

 明るく掛けられた言葉の語尾に、断末魔の呻き声と肉塊の落ちるドサリという嫌な音が重なる。青紫の瞳を楽しげに歪ませて、デュオは足元の『元お仲間』の死体を見下ろしていた。

 「ばかだなぁ、組織裏切って騙し通せると思ってたのかよ。」

 くっくと、喉を鳴らして目を細めるデュオの表情は本当に楽しそうで、声には弾む様な響きさえ聞き取れそうだった。

 「んー、ちゃんと死んでるよな。」

 爪先で死体の頭を軽く蹴り転がし、一応の確認を取ると、やけにのんびりとした口調で「さてどうしようかなー」などと呟いてみる。足元に転がる死体を完全に単なるモノとして扱っているデュオは、辺りを見回しながら、ボールにでもする様に、又死体の頭に足を乗せた。眉間から赤い筋を床へと落す死体の瞳は大きく見開かれ、転がるごろごろとした感触だけを足へと伝えて来る。
 死体の頭を踏みつける少年の姿。凄惨な光景の中、楽し気なデュオの笑みだけが妙にその場にそぐわずに浮いていた。


 時間通り、先程の倉庫で。デュオはヒイロの目の前に姿を現した。
 船内で騒ぎが起こった様子はない。そしてそのどこか楽し気な表情を見れば、彼が成すべき仕事をうまく終えた事は聞くまでもなかった。

 「死体はどう処理した?」

 聞きながら、自分でも意識しない内にヒイロはデュオの顔から目を逸らしていた。

 「ああ、外へ放り投げた。」

 証拠残さないには一番いいだろ、と明るくウィンクまでしてくるデュオに向かって、ヒイロの顔が嫌そうに少し顰められる。
 だが、そのヒイロと対象的に、デュオは顔の笑を益々深くしてヒイロを見つめていた。

 「んで、そっちも終わったのか?」

 デュオが裏切り者の始末をする間に、ヒイロはこの船に乗っている、軍の側の取り引き相手の持つ情報を偽モノと擦りかえる手筈となっていた。デュオがいっているのはそれについてで、ヒイロは「ああ」と一言だけ返事を返すと、またすぐに口を閉ざした。

 「そんじゃぁ、後は向こうへ着くのを待つだけだな。」

 すとんと、その場へデュオは座り込む。その仕草が中途半端に本来のデュオと同じなものだから、なんとなくそれがヒイロの気分を不快にさせた。この『組織』によって作られた人格も、ベースは本人から作ったモノなので、基本部分で本人と同じ行動に出るのも当然と言えば当然であったが、何故だか嫌だと、そう感じる自分がいる。

 「やっぱ、寒いかな。」

 腕を抱えるデュオに、先程2人で被った布を投げてやる。
 それを受け取って、すぐにデュオがヒイロの顔を見返してきた。
 口許に笑みを浮かべて、濁った瞳で挑発する様に見つめて来る。
 その瞳をヒイロが今度は逸らさずに見つめかえしたのを確認してから、唇の端をにぃっと釣り上げてゆっくりと口を開いた。

 「お前も寒いだろ?手っ取り早くあったまろうぜ。」

 両手を広げて囁く様に紡がれた声には、ぞっとするような凄惨さと甘さの相反する響きがある。
 薄暗い倉庫の中、本来ならば明るい色に輝く瞳は、得体の知れない淀んだ色で、ヒイロの瞳を見つめていた。


   □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 「ン…」

 鼻に掛かった声が漏れる。
 突き上げれば、声はもっとあからさまに快楽を含んで、甘い喘ぎに変わる。
 受け入れて、自らも腰を揺らして、ただ快楽を追う姿。しがみついて来た体を支えて、より強くその体を貫けば、高い声と共に彼が快楽の印を放つ。
 その、貪欲に自らの征服者を欲しがる体に、ヒイロも欲望を吐き出した───。

 互いに、熱を持った体を離して。
 自らのモノを引き抜いて、彼を布の上に下ろしてやってから、気付いた事にヒイロは眉を顰めた。
 未だ荒い息を吐き出す、デュオの手を取る。

 「なんだ?」
 「血が…ついている。」

 ワケがわからず顔を顰めるデュオの顔は見ずに、その指を舌で舐めてヒイロはいった。

 「気をつけろ。」

 けれど、そんなヒイロの姿を見て、そして言葉を聞いて、デュオはニヤリと笑みを浮かべる。

 「俺が戻った時に、本物がヘンに思わない為にかい?」

 ゆっくりと、明らかに声に嘲笑を含ませて囁く。
 ───ヒイロは何も答えない。
 ただ、デュオの指を舐める。
 それには喉を慣らした笑みを投げて、デュオは尚もヒイロに囁き掛けた。

 「へぇ、随分と年の言った事で─…。なぁに、大丈夫さ。こいつは全然お前を疑っちゃいねぇ。…まぁ、いつかはバレるだろうケドね。バレてもコイツにはどうしようもないさ、それとも…」

 ヒイロが指を離したのを確認して、そのまま俯いて顔の見えない顔をじっと見つめて。
 デュオは、瞳をすいと細める。

 「もしかしてお前、コイツにバレるのが恐いのか?…───なぁ、ヒイロ?」


   □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 「デュオ、そろそろ着くぞ。起きろ。」

 耳元で掛けられたヒイロのぼそりとした感情のない声に、半分夢うつつながらもデュオは重い瞼を開いた。すぐに横にいるヒイロの顔と目が合って、欠伸をしながらも笑顔で見つめかえす。

 「おはよ、ヒイロ。」

 その顔を余りに真剣な目でヒイロが見るものだから、デュオは多少面食らって視線を辺りへ泳がせた。一通りぐるりと視線を回して、又ヒイロの顔を見る。だがやはり、ヒイロの視線は動かずただじっと自分を見ているだけで、他に何の反応もない。

 「えっとー。なんだって…。」

 そろそろ笑顔を浮かべているままが辛くなって、デュオが少々不機嫌そうに文句を呟く。
 その頬に、ヒイロが手を触れて来る。
 驚いて硬直するデュオの頬を手でなぞり、ぱらぱらと手に落ちて来る顔へ掛かった前髪を掻き上げる。

 「なんだよ、なんだってんだよ。おい…お前ってば。」


 …デュオの声を無視して、ただ、ヒイロはデュオの頬を撫ぜていた。


……continue?



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