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【C A L L】

とりあえずパラレル系のお話です(^^;;
この話は、コピー本で番外編が3冊、そして本編がオフセ2冊上下巻で出ています。
それらを全部まとめて今度再録本を出すので、コピー本の3冊をネットにアップすることにしました。
前に出した本を持っていない方で、この本編を読みたいと思った方、よろしくお願いします♪とCMですね。
ちなみに、一部分、コピー本で出した時にマンガだった部分を小説に書き換えてます。






 ────『組織』では、親をなくした孤児を集め、『施設』に入れて自らの兵隊となるように教育していた。
 その際、つれて来られた子供達はまず『処理』に掛けられて、それまでの感情と記憶をなくされる。
 全て組織の為に─────。




「デュオ──」

 名を呼んで、その頬に手をあてて引き寄せる。
 少しだけ困ったような顔を浮かべて、…けれど彼が拒む事はない。
 こちらの意図を察して、伏せられたデュオの瞳。薄く開かれた唇に自分の唇を合わせて、強く、押し付ける。
 何故、こんなに苛立つ?
 何故、こんなに苦しい?
 分からないけれど、それがどうしようもなく、自分を追い詰める。
 だから、触れて、感じて。
 強く、強く。

 …もしかしたら、自分は不安、なのかもしれない。

 「…ん…う…。」

 苦しげな声が漏れて、拒む筈のなかった彼が、押さえられた腕の中で身じろぎをする。それに気付いて唇を離せば、デュオは途端咳き込み出して、目に涙を溜めてまで、こちらを責めるように見つめて来る。

 「おまえさ…このッ…俺に息させない気かよ。」

 未だに咳が止まらない声は、少しだけ掠れて。
 既に赤みの差した顔で、濡れた瞳で、拗ねたように自分の顔を見上げて来る。
 だからその体を、引き寄せて、抱き締めて。
 触れる肌を感じてから、耳元でそっと謝罪の言葉を言えば、肩を震わせて…でも、熱に浮かされた吐息を吐き出すように、「あぁ」と答える声が返ってきた。
 …その顔を見ている事が、何故か、とても苦しくて。
 彼の体を抱き上げて、ベッドの上に座ったままの自分の上に、彼を背後から抱き締める形で座らせる、そして。
 そのまま、彼の中へと自分の既に形を変えたものを埋めこんで行けば、彼の放つ悲鳴の様な声が聞こえた。
 感じるのは、多分、快感。
 けれどそれが肉体的なものだけなのかは、最近分からなくなっていた。
 こうして、高まっていくのは体だけなのか?
 この行為は肉体的な欲によるモノな筈なのに。
 ならばどうして、全ての感覚を自分で制御できるように訓練された自分が、こうして、彼の中にいると、この強い感覚に振り回されるのだろう。
 もっと、もっと、もっと。
 この存在を感じたいと。この体を征服したいと。それはなんという欲なのだろう?
 そうして───。

 行為が終るといつも思うのだ。
 …何故、自分はこうしているのだろう?
 …何故、自分はコイツを抱くのだろう?


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 傍らから聞こえて来る静かな寝息に心が落ち着く。
 顔を近づけて覗き込んでも、デュオが起きる事はない。
 穏やかな顔、穏やかな息使い。
 瞼の上に落ちた邪魔な前髪をかき上げて、額へと掌を置いて見た。
 それでも、やはり起きる事はない。安心しきった顔で深く眠っているままだ。
 
 デュオと体を合わせるのはコレで3度め。最初の理由は、確かこうして逃げる事の手助けをした礼の代りだと言っていた気がする。別にコイツを逃がすのは計画の内だったから、礼など請求する必要などなかったのに─────俺はどうしてそれを受け入れたのだろう。

 眠るデュオの顔をもう一度じっと眺める。
 柔らかさと明るさの印象を持つこの少年は、未だに自分を一度も疑おうとしない。

 何故コイツはこんなにも自分の前で無防備なのだろう。
 何故コイツは自分を疑わずに信頼し切った姿を晒すのだろう。
 
 俺は、最初からお前を裏切っているのに────。


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 ハデな赤いじゅうたんのしきつめられた部屋の中。男は、自分を呼ぶ時にいつもそうしているように、正面の大きな机の向こうに座っていた。

 「ナンバーx1。」

 聞きなれた神経質な声が耳へと届く。

 「ナンバーs2を知っているかね?」

 振り返り、こちらの顔を見ながら男はそういった。いつも通りの表情のない顔がじっと自分を見ているのが認識される。
 今の言葉はこちらの発言を促している。そう判断して頭の中で検索を掛け、導き出された知識を拾って答えを返した。

 「ナンバーs2、15歳、性別は男。1年前にここへ入り、入った次の日を最初として、現在までに5回の脱走をしようとした…。」
 「その通りだ。」

 男はさも不快そうに眉を顰めて自分の言葉を肯定した。
 それ以上の言葉は言う必要もない様なので、口を閉ざして男が次にいう言葉を待つ。

 「どうやら彼には『処理』があまり効かないらしいのだ。固体差があるとはいえこれは非常に珍しいケースだ。」

 言いながら、椅子を軽く回転させ、自分の顔から目を逸らした。

 「これ程扱いづらいのなら『処分』してしまっても良かったのだが…。そうするには少々もったいない程彼は優秀だったのでね、我々は『処理』の方法を少し変えてみる事にした。」

 椅子から立ち上がり、すぐ後ろにある大きな窓から外を覗きながら、男は淡々と更に言葉を続けた。男がこうして席を立つのは、そろそろ話が本題に入るという時のクセでもあり、それを知っているからこそ、こちらも次の言葉に今まで以上の注意を払う。

 「彼はわざと逃がす。君は協力者として彼と逃げ行動を共にする。その後はこちらからの指示を待ち、指示がある度にそれに従っていればいい。…彼にはすでに別の『処理』がされている、その監視が君の仕事だ。」

 男の話はそこまでだった。今話された内容は全て頭に記録され、聞き返す事はなにもない。となれば後はすぐにでも行動を起こすだけだ。
 退出を促して手を上げる男を見て、手を額へ上げ背を伸ばして敬礼をした。

 「任務…了解。」



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 人工の太陽が地面を赤く染めている。
 訓練の終わった時間の今では、外にいるモノなど誰もいない。ここには数十人の少年達がいたが、『処理』をされている彼らが自分の意志で何かをしようと思う事などなく、だからこんな時間にそこにいる人物が目的の者だという事は一目で分かった。
 気配を消し、近づいて行く。ハッキリしていくその姿は、言われた人物のデータとぴたりと一致した。
 身体中にケガを負い、その傷を水で洗い流しているらしく、蛇口の水を腕に掛けている少年。腰まである長い髪の毛、本当に訓練されているのか分からない華奢な印象を与える体つき。データ通りではあるが、こうして改めて見ると男が言っていた『処分するには優秀』という言葉に疑問が沸いて来そうだった。

 「随分ひどいケガだな。」

 言われた言葉に思いっきり驚いた顔をして、目の前の少年が自分の顔を見返して来る。
 「何だ?」

 少しだけ不快気に眉を顰めて聞き返す。それを見て、すぐに少年は激しく顔を横に振り、嬉しそうに笑顔を浮かべて言葉を返して来た。

 「いやっ・・そのっ。此処へ来て人から話し掛けられるのって初めてだからさー。驚いたっていうか…お前、もしかして新入り?」

 まさに満面の笑顔といった風に見返して来る、その顔には自分を疑っている気配は全くといっていい程ない。

 「いや。だが、今まではずっと別の棟にいて、こちらの棟へ来たのは昨日からだ。」

 もちろんそれは嘘だが、相手は完全に信じ込んで笑顔のまま自分の手を握って話し掛けて来る。

 「そっかー。んじゃさ、何か分かんない事あったら何でも俺に聞いてくれよな。」

 話し掛けられて余程嬉しいのか、握った手を大きく振りながら、その後も自分の事をイロイロ聞いてこようとする。それら全てに予め用意された答えを返し、『仲良く』なる為の会話を続ける事にした。相手を疑わせない為に、コイツに関するデータを全て調べ上げ、予想される質問に関して向こうが好意を持つ様な答えばかりを作っておいたのだ。話している内に、益々コイツが自分に親近感を感じて心を許していくのが手に取る様に分かった。

 「まぁ、お前もあんまり表情ある方じゃないけど、仕方ないよな。他の奴等に比べたら全然マシだし。えっとお前…何て呼べば・・。」

 上目使いで見上げて来る瞳には、何処か期待する様なモノが見える。

 「ナンバーはx1だ。」

 そう答えた言葉に、少年は少しだけがっかりした様な表情を浮かばせたが、すぐに先程までの笑顔を取り戻し、こちらを改めて見直した。

 「俺はs2。だけど…なぁ、絶対秘密にしといてくれるなら、別のを教えてやるぜ?」

 今までとは違った真剣な瞳で、自分を見て視線で尋ねて来る。絶対の秘密、何があっても上には知られてはいけない大事な…だが俺にはコイツが何をいいたいのかは分かっていた。そして、それを聞いた時に答えるべき答えもすでに用意されていた。

 「約束する。」

 返事に嬉しそうな、そして何処か誇らしげな笑みを浮かべ、ソイツは自分の顔をそっと引き寄せた。いかにも子供の内緒話の様に。

 「俺、自分の名前を覚えているんだ。お前だけに俺の名前を教えてやるから、他のヤツがいない時はそっちの名前で呼んでくれ。俺の名はデュオ、デュオ・マクスウェル。」
 「デュオ?」

 名を尋ねかえす。

 「そう。」

 今まで以上に嬉しそうな笑みを浮かべて、デュオはこちらを見ていた。じっと自分の中だけで収めていた秘密を吐き出せて、余程嬉しかったらしい。
 そのデュオへこちらもいうべき言葉を告げる為に口を開いた。

 「俺も…名前を覚えている。」

 え?、と笑顔を一瞬張り付かせて、最初に話し掛けたときよりも瞳を大きく開けてデュオがこちらの顔を見返す。

 「俺の名はヒイロ・ユイ。」

 お喋りと思われるデュオも、その時は何も言わず暫くの間放心した様にじっとこちらの顔を見ていた。
 やがて、その大きく開かれた瞳からは、一粒の涙が零れ落ちた。

 「どうした?」

 掛けた言葉にデュオは最初、何も言わずに抱きついてくると、しばらくして小さな声で呟いた。

 「仲間がいるなんてさ。すげー…嬉しい。」

 声は掠れていて、本当に…嬉しそうだった。

 それ程までに嬉しかったのだろうか?…分からない。
 この答えをコイツが喜ぶ事は予想できたが、この反応は予想以上だった。
 名前にどんな意味があるのか。単なる固体識別の手段の一つではないか。

 …ただ、こうして抱き締められるなんて事は初めてで…嫌ではなかった。

 「よろしくな、ヒイロ。」

 とりあえず第一段階は成功───したらしい。
 だが何故かあまり嬉しいとは感じないのは何故だろう?


 『処理』された者には、本来ならばここへ来るまでの記憶は全て取り払われている筈だった。それがコイツだけ完全に『処理』が出来ないのは、男の言う言葉をそのままとれば固体差であるという事らしい。個人的な資質の違い、体質の問題だろうと。それがその通りなのかは知らないが、確かに記憶だけではなく、こうして話してみるとまるっきり普通の人間と同じ反応を返すのに驚きを禁じ得ない。『処理』は記憶と共に感情にも枷を付け、精神の起伏を抑制する。ここまで『処理』が効かないというなら、上の者達にとっては確かに脅威になりえる事が理解出来た。

 だから彼には別の『処理』をしたと言う。
 それを本人は…デュオは何処までしっているのだろう?
 一体何をしたのだろう。

 ────それは後で嫌でも知る事になったのだが…。


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 「ヒイロ?お前まだ起きてるのか?」

 目を擦りながら、デュオがそう声を掛けて来る。デュオの言う通り、今は本当に真夜中で、こんな時間に起きていれば次の日の行動に支障を来す可能性もある。さらに今現在、自分達は追われる立場で、眠れる時に眠っておくのも重要な事なのだ。
 だが、デュオは知らない。本当は追っ手など来ない事を。

 「分かっている。俺も今眠るところだ。」

 そういって、デュオの眠る布団の横に寝転がり毛布を掛ける。瞳を閉じて眠ろうとすると、横のデュオは既にまた新たな眠りの中へいってしまったらしく、規則正しい寝息が聞こえて来た。
 しばらくは、そうして眠りに陥る事なくただデュオの寝息を聞いていた。こうしているのも逃げてからはいつもの事で、なんとなくこの時間が好きだった。
 何も知らないデュオ。
 幸せな寝顔を浮かべるデュオ。
 知らないままで、眠っていればコイツは幸せでいられるのだろうか?
 知らなければ────。

 「────。」

 頭の中へ信号が送られてきた感覚に目を開けた。隣で眠るデュオが起きないかを確認しながら体を起こしベッドから抜け出す。静かに隣の部屋へと行き、荷物の中のノートパソコンを取り出して電源を入れた。
 パスワード入力して、普段デュオの前では見せる事のない別の設定で画面がたち上げる。そこにはすぐに長い文字列が表示され、ヒイロの主人である男の指示が手順細かく並べられていた。
 一通り呼んで頭に刻みつけた後、「了解」のメッセージを送り返しパソコンの電源も落す。
 それから急いで部屋に戻り、デュオが今の自分の行動を見ていないかを確認する。
 ベッドの上の影は、ここを出ていった時と同じく何処も変わっていなかった。

 ──安心しきった、安らかな寝顔のデュオ。
 ──大丈夫、こいつは気付いていない。

 だが、そう思っても心は何故か重く、近づいて顔を見る度に胸にぴりりとした感覚が走る。
 今の…通信で、与えられた指令。
 今からすぐにでも実行に移さなければならない。

 何も疑わずに眠るデュオの顔。
 穏やかな寝息だけが聞こえる室内。
 無防備な姿。俺を信頼して。

 眠るデュオの耳元に唇を寄せ、指示された言葉を囁く。その後にデュオがどうなるかを知っていながら。

 「Delete your mind.」
 
 途端。
 深く眠っていた筈の瞳が、突然開かれる。いつもは透明な青い瞳が、今は濁った輝きを放って暗闇に映える。既に、そこには今まで眠っていた柔らかな印象の少年の姿はなかった────。


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 光が室内へ差し込み、こんな部屋でも光溢れる今ならば結構見れるものだと感心する、朝。
 テレビが朝のニュースを流している。

 「なぁ、ヒイロ。夕べ近くの工場で事故があったらしいぜ。」

 テレビを見ていたデュオが、そういって話し掛けて来た。

 「ほら、ここへ来る前に見たあのやたらバカでっかかったトコ。すげー死者が出たって。」

 反応のないヒイロに、ムキになってデュオがさらに説明を付けた。
 だがヒイロは、煩げに眉を顰めて一瞬デュオの顔を見ただけで、声に出しては一言だけしか返して来なかった。

 「そうか。」

 俺は何をしているのだろう────。

……continue?



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