WEB拍手お礼シリーズ33
<眠っているシーグルのお話>








☆☆眠り姫の見る夢は?☆☆ (1/3)

 それは、シーグルが結婚するちょっと前のお話。
 その日、騎士団の仕事中に執務室でシーグルが居眠りをした―ーと最初思ったキールは、いやぁシーグル様でもそういう事ってあるんですねぇそういやこのところ忙しかったですしー……なんて気軽に彼の様子を見に行って、その額を触って熱がある事に気付いて驚いた。
「過労だね」
 急いで医者を呼んで、あっさりきっぱりそう言い渡されたシーグルには、強制で休暇を取る事になったの、だが。
「冗談じゃない、そうそう休暇ばかりとってられるか」
 何せシーグルとしては、トラブルに巻き込まれてその結果襲われて暫くの休暇、というコースを何度かやっている為、ここでまた休むと体が弱いというレッテルを張られてしまうというものだった。
 それでも、部下達やフェゼントに休めと強く言われれば、シーグルも結局は押しきられる事になる。
「休養だからね、3日くらいゆっくりすればいいんじゃないかな」
「休むだけなら一日で十分です」
「君自身が思っているより、君の体は疲れているんだけどね」
「3日も休んでいられません」
 首都の館に帰らされて、やってきたかかりつけの医者であるウォルキア・ウッド師とそんなやりとりを何度かやって、シーグルは大きくため息をついた。
 一応シーグルにも疲れているという自覚はある。シーグルは昔から悩み事があるとわざと体を酷使して疲れさせるというクセがあるのだが、最近、結婚関係やら将来の事をいろいろ考えてむしゃくしゃする度剣を振りまくった上、婚約者のところにいく為に休暇を取った反動でデスクワークが山盛りになり、更には嫌味のように会議に呼ばれるという状態に連日帰りが遅くなるという状況だったからだ。
 なにせ一番は寝る時間を削って剣を振っていたのが悪いのだろう。冒険者時代なら倒れる寸前まで体を酷使したら後は暫く本当に倒れていれば良かったのだが、今はそれでも騎士団にいかなくてはならない。体調管理をきっちりやらなくてはならない事は承知していたのだが……。
「うーん、そうなるとね、まぁとっておきの方法があるといえばあるんだけど……」
「それはなんですか?」
「うん、ちょっと知り合いの魔法使いで面白い術を使うのがいてね、基本は暗示系なんだが……」
 つまりウォルキア・ウッド師がいう事には、その魔法使いの術は、どうやっても起きないくらい思い切り深くまで眠らせその分集中して疲労回復が出来る、というモノらしい。
「それなら一日休むだけで十分疲れは取れてスッキリすると思うのだがね」
「では、それでお願いします」
 シーグルとしては、今は満月も近くないし、首都の屋敷で眠っているなら問題も起こる事はないだろうという判断だった。

 かくして、シーグルは『何をしても起きないで眠っている』一日を過ごす事になったのだった。




☆☆眠り姫の見る夢は?☆☆ (2/3)

 ある日過労で倒れたシーグルは、数日の休み分を一日で回復させる為、丸々一日眠ったまま起きないという術を掛けてもらう事になった。
 そんな訳でその日、首都の館のシーグルの部屋では術を受けたシーグルが寝ていたのだが。
「あれ、フェズここにいたのか?」
 ウィアが遊びに来てフェゼントを探せば、彼はシーグルの部屋のベッドのそばで編み物をしていた。
「えぇ、シーグルが眠っている間何かあったら困りますし」
「困るって何が?」
「起きた時に水が欲しいかもしれませんし、何か物音があったら起こしてしまうかもしれませんし……」
「いやフェズ、シーグルって絶対起きないくらいすっごく深く眠ってるんだろ?」
「あ……で、でも、その、彼が寝てる間怪しい者が来たりしないか見張ってないとならないじゃないですか!」
「うーん……まぁ確かに起きないシーグルを放っておくのは危険な気もする」
 言いながらウィアはベッドで寝ているシーグルの顔を覗いた。
「ってかシーグルって寝てるとなんていうか雰囲気変わるよなー。うん、可愛いっていうかさー」
 それには嬉しそうにフェゼントが答える。
「えぇ、すっかり大きくなったシーグルも、眠っている顔は小さい頃とあまり変わらないんですよ。……とても、懐かしくて」
 目を細めて嬉しそうに見つめているフェゼントは、そうしてそっとシーグルの前髪を指で梳く。そんな恋人の様子にウィアも嬉しくなって笑った、のだが。
「あの、フェゼント様、私は今日はどうすれば……」
 やってきた従者の青年にフェゼントが急に思い出したように立ち上がった。
「あぁっ、すみません、えーとえーと、馬の世話は終わった、のですよね」
「はい、アルスオード様の装備の点検も終わりました」
「ではその次は……」
 そこでまた、焦るフェゼントのところにもう一人が姿を現した。
「にーさーん、厨房の掃除終わったから使っていいってー」
「あぁっ、そろそろ昼食を作らないとなりませんね、では、えーと……」
 急にパニックに陥ったフェゼントにウィアが言う。
「フェズ、とりあえずナレドにさ、シーグルの部屋にヘンなのが来ないか見張っててもらって、フェズは食事作ってくりゃいいんじゃね」
「そ、そうですね。ではナレドよろしくお願いします」
「あ、勿論俺はフェズを手伝うぜっ」
「ぼーくーもーっ、にーさん手伝うー」
 バタバたと慌ただしくフェゼント、ウィア、ラークが去っていく中、取り残されたナレドはちょっと呆然する。けれどもはっと思い直し、眠っている主を守るのだという使命に気合を入れた彼は、ベッドのシーグルに向けて礼をして、ついうっかりその寝顔を見てしまった。普段は綺麗で厳しい印象の彼が、無防備というかあどけないというか、どこか幼く見える顔で眠っているのを。
「す、すすすすす、すみません、すみませんっ、失礼しましたっ」
 思わず飛び跳ねるように後ずさって、壁に背をつけて胸を抑える。飛び跳ねそうにドキドキしている胸の鼓動を感じて、顔が赤くなったナレドは、そこで思わず声を上げた。
「無理ですだめです、俺一人でここいるなんて出来ません、ウィアさん〜フェゼント様ぁぁ……」




☆☆眠り姫の見る夢は?☆☆ (3/3)

 ある日過労で倒れたシーグルは、数日の休み分を一日で回復させる為、丸々一日眠ったまま起きないという術を掛けてもらう事になった。
 そうして、昼食を作りにいったフェゼントの代わりに、今、ナレドがシーグルの部屋の見張りをする事になったのだが。
「無理です〜俺一人じゃ荷が重すぎます〜」
 真っ赤な顔で泣き事を言っていたナレドは、だが次の瞬間目の前が暗くなってその場にバタリと倒れた。
「ついでに暫く起きないように軽く薬もつかっときまスかね」
 倒れたナレドの後ろから現れたフユは、やれやれと頭を掻きはしたものの、その後は手慣れた様子で軽く薬を嗅がせて、部屋の隅に壁を背にして従者の青年を座らせておいた。
 そうして準備が出来てから、冒険者支援石を軽く操作する、と、その直後。
「はい、お望み通りついたわよっ」
 現れた人影は2つ。転送役のアリエラと、セイネリア本人だった。
「えーっ、んじゃボス、後はご自由に〜。帰りは呼べば迎え来まスんで〜」
「まったく、人使い荒いわね」
 文句をいいながらも、今度はフユを連れてアリエラはその場から消える。そうして部屋に静けさが戻ると、セイネリアはベッドに向けてゆっくりと歩いていく。
「起きないくらい深く寝る術など危険すぎるだろ。まったく、こいつは自分の立場を分かってないのか」
 だが、言う言葉の割に口元に笑みを浮かべているセイネリアは、シーグルの眠っているベッドに座ると、起きない筈の彼の頬にそっと触れた。
「こういう無防備な寝顔は俺以外に見せるな……いや」
 その手でシーグルの前髪を掻き揚げ、その額にキスを落とす。
「俺に見せるのが一番まずいのか」
 それから軽く喉を震わせて、静かに彼の髪を撫でながらその顔をじっと見つめた。

 ****

 自分の昼食が終わってからナレドと見張りの交代をしに来たウィアは、部屋をそっと覗いて、意外な人物がいた事に少しだけ驚いた。
「なんだよ、本人来たのかよ」
 実は驚いたのが『少しだけ』だったのは、彼らのところにシーグルが今日一日起きないという情報を流したのはウィア当人だったからだったりする。ウィアとしても、シーグルが一日寝っぱなしというのはちょっと危ないんじゃないかと思った訳で、なら専門の人間に見てて貰おうと思ったという訳だった。ただ、セイネリアが首都に来ている事など知らないウィアとしては、てっきりフユが影ながらに見ててくれるくらいだと思っていたので、まさか堂々とセイネリア本人が来て、シーグルの傍についてるなど思いもよらなかったわけだが。
「おい、セイネリアっ、いるなら人払いは協力してやってもいいけどさ、寝てる間にシーグルにヘンな事すんなよっ」
 当然、こちらが見てることなど分かっているだろうと中へ入って声を掛けたウィアに、セイネリアは目を向ける時間さえ勿体ないというようにシーグルを見たまま答えた。
「分かってる、寝てる間に体に負担を掛けるようなマネはしないさ。せいぜい起きた時、唇に違和感があるくらいだろ」
 この男は寝てる間にどれだけシーグルにキスする気なんだろう、とは思いつつ、まぁ最強の騎士の警備報酬なら高くないか、と考えてその部屋を出たのだった。



<おまけ>

カリン「ところでボス。シーグル様が寝ている間、何をしてらしたのですか?」
セイネリア「基本はその顔を見ていただけだな。何もしてない」
カリン「半日以上いらしたと聞いたのですが……」
セイネリア「なに、あいつの顔ならどれだけ見ていても飽きないぞ」
カリン「本当に見ていただけだったのですか?」
セイネリア「まぁ、触るくらいはした」
カリン「触る?」
セイネリア「あちこち触って、顔の反応を見ていたな」
カリン「よろしければ、どのへんを触っていたのか聞いてもよろしいでしょうか」
セイネリア「最初は顔周辺を手で撫でるくらいだったんだが、本当に起きないようだったからな。大人しいあいつが面白くなって体中隅々まで触ってやった」
カリン「……それはもう、触る、という程度の話ではないのでは……」
セイネリア「あれだけ大人しいと、安心して唇で体中の感触をなぞれてな」
カリン「ボス、それは最早触ったではなく、全身にキスしたというのの間違いではないでしょうか」
セイネリア「唇で触れただけだぞ」
カリン「そこまでやっていて『何もしてない』なのですか?」
セイネリア「挿れても舐めてもいないぞ、何もしてないだろ」
カリン「まぁ……ボスの基準でしたらそうなんでしょう」
セイネリア「後はまぁ、横に寝てあいつを抱き寄せたり……キスくらいはしたがな」
カリン「それでも『何もしてない』んですか?」
セイネリア「キスくらいなら何もしてないと同じだろ」
カリン「ボス……」
セイネリア「無抵抗のあいつがいるのにそれしかしてないんだ、俺としては何もしてないと一緒だな」
カリン「……はい、えぇそうですね……確かにボス基準ならそうなのかもしれません」

***

シーグル「確かにあの術の所為で、疲れはかなり取れたんだが……」
起きた直後、セイネリアの匂いがした気がした、とは誰にも言えなかったシーグルだった。



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続編初期……で、確かこの頃はなかなか二人が絡む話書けなかったからお礼文章で書いた、ような気がします。

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